焼きそばの「価値観が変わる」名店、全国ベスト5/小野瀬雅生

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 クレイジーケンバンドのリードギタリスト・小野瀬雅生氏。10年以上1日も欠かさず更新してきたブログの内容は音楽やバンド活動よりも食に関わることが圧倒的に多い。なかでも偏愛とも言える氏の “焼きそば愛” の集大成、『焼きそばの果てしなき旅』では全国50以上もの焼きそばの名店が紹介されている。

 どの焼きそばも甲乙付けがたいそれぞれの魅力に溢れているが、焼きそば初心者のために「焼きそばに対する価値観が変わってしまう“ウマウマウー”な一皿」を5つ、ピックアップしてもらった。

◆5位 小樽・龍鳳「ブラックサバス焼きそば」

 漆黒の安息日をご一緒に。普通盛で麺2玉(1玉だとハーフサイズ)のヴォリュームも凄いが、そのネーミングと餡の黒さの迫力は圧倒的だ。でも味わいの方はドゥームだったりヴォイドだったりはせずに正統派。熱々で黒々とした餡は濃厚な中国のたまり醤油「老抽王」の旨味の深さと山椒のピリッとした刺激が絶妙なアンサンブルを奏でていて、それが焼き付けられた麺にたっぷり絡んで箸が止まらなくなる。

 タケノコとキクラゲの細切りの食感もたまらなく嬉しい。冷めるのなんて待ってはいられない。一口食べたらブラックサバス焼きそばの熱きグルーヴのトリコになること必至。他にもピンクフロイド焼きそばやキン・ザ・ザ麺など秀逸なネーミングの焼きそばヴァリエーション多数。ウマウマウー。

◆4位 大阪・長谷川「焼そば」

 何と云っても味付けがされていないのが特徴。ソースは各自で卓上の容器からかける後がけスタイル。麺は白っぽくストレートな太麺。具は薄切り牛肉と淡路島産タマネギ乱切り。この構成だけでも普段の焼きそばに対する思い込みを根底から覆されるような気になる。

 ソースはサラッとしたウスターソース。お店の方からは「4回し」を推奨される。ソースに火を通さないのでソース自体のスパイシーな味わいや香りがヴィヴィッドに味わえる。味も食感も秀逸な太麺とはこれ以上はないと思えるほどの相性の良さ。一口食べたらもうどうにも止まらない。戦後間もない頃に流行ったオールドスタイルを1990年代に復活させた焼きそばなれど、その味わいに古くささは微塵もなく、むしろ斬新ですらある。ウマウマウー。

◆3位 神戸・天一軒「ヤキソバ」

 このお店に来るとほぼ必ずヤキメシと焼鳥モモカタイ(骨付き鶏・ほぐしてもらう)をオーダーしてしまうが、ヤキソバも素晴らしいのを知っている。見知らぬ酔客に「ここはヤキソバを食べなきゃダメだよ」と諭されたこともある。逸品と云うのはその店そのものの味がするもので、ここのヤキソバは正にこのお店そのものを食べているような気になる。

 塩味ながら濃厚な旨味を纏った平打ち麺を一口食べれば宇宙の彼方にまで自分の感覚がすっ飛んで行って余所の星で「コレハウマイ」と叫ぶことになる。途中で卓上のウスターソースをかけて味変するとあらビックリ、洋食の味わいに急接近してモダンな気分になること請け合い。他の料理もどれもウマイのであれこれ頼んで食べ過ぎるもよし、ストイックに一品だけ食べて店を後にするもよし。営業時間が短いのでご注意を。ウマウマウー。

◆2位 横浜・第一亭「ヤキソバ」

 奇しくも3位と同じく港町でカタカナ表記のヤキソバ。ワタシが若い頃からずっと通っているお店。こちらの餃子はマイスタンダード。ドラマ『孤独のグルメ』に登場以降は裏メニューのパタン(ニンニク和えそば)が表以上に有名になりパタン目当ての客の行列が出来ることもあった。そんなお店で最近知ったのがヤキソバの素晴らしさ。

 このヤキソバもこのお店そのものの味がする。白く断面が四角い太麺に深い旨味が纏わり付いて、麺の1本2本がそれぞれに愛しくなる。塩味でも醤油味でもなく、ホルモンは入っていないけれどホルモン炒めの味がする。このお店の他の料理の美点がヤキソバに収束していると云っても過言ではない。まさに第一亭そのものの味。どの料理も5分以内に手早く作って出されるのも素晴らしい。パタンよりもヤキソバを。ウマウマウー。

◆第1位 富士宮・鉄板焼ちゃん富士宮駅前店「焼そば丼」

 焼きそばをおかずにご飯を食べる文化は日本のあちこちにあって、自分の中に存在しないその風習に触れる度に衝撃を受けるのだけれど、その究極とも呼べる丼仕立てに出会った。定食とは明らかに様相が変わる丼。もちもちを通り越してくきゅっと噛み応えのある麺にソースが絶妙に絡んだ富士宮焼きそば(想像よりもずっと薄味である)の快楽を更にご飯が支える。

 焼きそばとご飯、まさかのタッグ結成で思いもよらなかった大技が繰り広げられるのかと思いきや、穏やかにお互いを尊重して協調講和路線であることに驚く。普通に美味しい。違和感をあまり感じない。刻み海苔が焼きそばとご飯に有無を云わさず握手をさせる。白ゴマもナイスサポート。ウマウマウー。焼きそばの親和性に驚くと共に、日本の食の奥深さと欲深さは果てしない。それはそのまま焼きそばの果てしなき旅に繋がる。美味しかったです! 御馳走様でした!

小野瀬雅生(おのせ・まさお)
1962 年神奈川県生まれ。「クレイジーケンバンド (CKB)」のリードギタリスト、バンド「小野瀬雅生ショウ」のリーダー、歌も担当。通称は “のっさん”。緩急自在なギタープレイは“ハマのギター大魔神”の異名をとる。アコースティックユニット「小野瀬雅生と須藤祐」やソロ名義でもライヴ活動を行うほか、数多くのアーティストと共演、楽曲提供をしている。横浜DeNAベイスターズの熱烈ファンであり、高級・B 級問わぬ食べ歩き家としても知られる。ブログやnote、YouTubeなどでさまざまな分野の文章や動画を配信してお り、横浜市商店街総連合会の食イベント『ガチ!シリーズ』に例年参加など多岐にわたる活動を精力的に行っている。

―[焼きそばの果てしなき旅]―


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