妻との間に、子を授かったはずなのに…。息子の顔をまじまじと見た男が、違和感を拭えなかった理由

「愛ではなく、金目当てで結婚するのは女性だけだ」という考えは、もうひと昔前のものなのかもしれない。

男にだって“玉の輿願望”があると、私たちはなぜ気づかなかったのだろう。

これは逆・玉の輿で成り上がりたいと願い、夫婦になった男と女の物語。

あなたの周りにも、逆玉狙いの男がいるのかも…?そこのお嬢さんも、どうぞお気をつけて。

▶前回:恵比寿の億ションがあるのに、ちっとも自宅へ帰ってこない妻。それでも男が離婚を選ばないワケ

ヘッジファンドへの転職が確定している弘也(28)


「弘也くん、うちにおいでよ。これから一緒にやっていこう」

それは昨日のこと。大手監査法人に勤めている僕は、ずっと憧れていた方から内定をもらった。

― これでようやく、夢に一歩近づけるな。

おそらくこの転職で、父親の年収は超えることができるだろう。

そんな僕には将来、叶えたい目標がある。そのために学生のうちから公認会計士の資格をとり、長いこと努力してきた。

一方のプライベートでも、家柄のいい妻と結婚。1歳になる子どもと広尾のマンションで暮らし、充実した日々を過ごしている。

すべてが順調で「なにもかも手に入れてきた自分」にうっとりすることも多い。しかし最近は“あること”に違和感を覚えているのだ。

それは、僕の“愛おしい我が子”に関することなのだが…。

もちろん血液型もパッチリした二重の目も、僕と一緒。それなのに、どうも違和感が拭えないのだ。

弘也が「おかしい」と思っていたこと。それは…?

息子の顔が、僕には似ていない。そう感じ始めたのは、偶然スーパーで会った同期から、こっそり言われた一言がキッカケだった。

「うわあ!子ども、可愛いな。…でも弘也に似てなくね?」

― 言われてみると、うちの子はどことなく“あか抜けて”いるように見えるんだよな。

言葉ではうまく説明できないが、洗練された、華やかな雰囲気があるのだ。

しかし、僕も息子も二重まぶただ。それに血液型も一緒。考えるまでもなく自分の子だと思っていたのに、同期の「似てない」の一言が、やけに引っかかったのである。

なんだか不安になって、帰宅するなり妻にもその話題を振ってみた。

「…あら、私に似たのね♡」

妻は、特段気に留めることもなくそう言った。しかし彼女も、あか抜けているほうではないのだ。

まだまともに言葉も話せない、1歳の息子。だけど紛れもなく、僕と妻の子だと思う。

― 他人からの言葉で考え込むなんて、少し疲れているのかもしれないな。

そう思った僕は、心に芽生えた小さな不安から目をそむけたのだ。



そんな妻の由美子とは、出会って3年になる。知り合ったキッカケは、中学時代の親友である、ヒカルからの紹介だった。

「こちら俺の彼女。由美子だよ」

なんと当時は、僕の親友と付き合っていたのだ。

第一印象は「美人ではない子」という、最低なもの。服装やメイクもなんだか地味だった。しかし、真面目でいかにも賢そうな雰囲気には好感を持っていたのだ。

おまけに、由美子は同業者だった。

「あら、弘也くんも会計士なのね。私もよ」

さらには、実家が大きめの会計事務所を営んでいることも判明。…彼女を狙わない理由はなかった。

ヒカルが仕事の電話で席を外している隙に、仕事の話で盛り上がり、距離を縮めていったのだ。


「ちょっと~!なんか2人、イイ雰囲気じゃない?」

戻ってくるや否や、ヒカルがふざけてそう言うくらいに。…そして僕は心に決めた。なんとしてでも、由美子を奪おうと。

するとその後、なぜか彼女のほうから食事に誘われてしまったのだ。

罪悪感はもちろんあったが、すぐにOKと返事した。大きな会計事務所の娘が嫁になるかもしれない…。そのチャンスを絶対に逃したくなかったから。

結果として、その夜には由美子と結ばれた。

申し訳なく思った僕は、ヒカルにも一応連絡を入れた。すると、彼からはこう返ってきたのだ。

「由美子に振られたよ…。まあ遊んでいた俺にも一応、非があるしな」

こうして結果的には親友とギクシャクすることなく、由美子と付き合うことができた。そんな彼女を逃すまいと交際してすぐに結婚し、子どもも産まれたのである。

これで何不自由なく、幸せな人生を送れる。…はずだったのに。

「息子の顔が、僕に似てないって言われてさ」

この話題を切り出して以降、妻はいつの間にかiPhoneのロックナンバーを変更していた。由美子が入浴している隙にスマホを覗こうとすると、ロックの解除ができなくなっていたのだ。

― やっぱり、何か後ろめたいことでもあるのかよ!?

スマホを覗き見るほかに、妻の隠し事を探る方法はあるのだろうか。

息子のためにも、この問題を早急に解決しなければならないと思っている。

由美子が、夫に隠していたこととは…?

由美子「遊び人の元カレに疲れて結婚したけど、夫の本心を知ってしまい…」


ヒカルといるといつもドキドキして、まるでジェットコースターに乗っているみたいだった。

「好きだよ」と愛の言葉を囁かれたかと思えば、翌日には浮気が発覚して修羅場になるなんてことは、頻繁にあったから。

― こんなんで30歳までに結婚できるのかな。

元カレとの将来について悩んでいたタイミングで、弘也と出会った。彼はなんだか知的な雰囲気で、見るからに誠実そうな男。

言葉を変えると、色気のない彼の外見は“恋愛経験の無さ”を物語っているようにも見えた。

だから弘也は、落ち着きたかったあの頃の私にとって、ものすごく魅力的に思えたのだ。

― ヒカルのことは好きだけど、弘也と付き合おう。

初めて会った日の夜には、心の中でそう決めていた。そして翌週、弘也を自宅に誘ったのだ。

「うちでコーヒーでも飲んでいかない?」

恋愛経験が少なそうな弘也をこうして落とし、ヒカルには別れを告げた。すると、なんともあっさりとした答えが返ってきたのだ。

「…そっか。まあ、遊んでた俺も悪かったから」

思えば、ヒカルの実家は老舗企業の創業家だった。それに外見もかなりいい。私と別れても代わりはいくらでもいるから、未練なく別れてくれたんだろう。

一方の弘也は“私を安心させてくれる存在”へと、すぐになってくれた。

『週末、この郊外のフレンチを予約したよ~!』

ただ「ディナーを予約した」というメッセージをもらっただけで感激してしまった私は、いかにヒカルとの付き合いで消耗していたのかを実感した。

そんな弘也は、付き合ってすぐにプロポーズもしてくれた。短い交際期間だったが、こうして2人は夫婦になったのだ。


― それなのに、どこか物足りない。

そう感じたのは、結婚してすぐのことだった。温かくて優しくて、いい夫なのに、どことなく薄っぺらいのだ。

そんなときに、弘也のノートパソコンが開きっぱなしになっているのを見つけてしまった。そっと近づくと、画面上にはこんなメッセージのやり取りが残されていたのだ。

『弘也さんはさ、どうしてそんなに早く結婚したの?』
『家柄のいい奥さんが欲しかったんだ。俺の実家は普通だったし。短期決戦がキモだね』

― えっ。すんなり話が進んだのは、私の家柄が良かったからなのね。

自分自身ではなく、家柄の良さを好きだと言われる絶望感は、経験した人にしかわからないだろう。

「彼の温かさに愛情を感じていたのは、自分だけだった」と知ったときのむなしさは、今でも思い返すと胸が苦しくなる。

― 絶対、弘也に仕返しをしてやろう。

この瞬間、私は決意したのだ。

それからの行動は早かった。まずは、元カレのヒカルに連絡を取ったのである。

『ちょっと相談したいことがあるんだけど…。近々、会えない?』

こうして再会した日に私から誘い、ヒカルと男女の関係に発展させた。…弘也へ仕返しするために。

そう。私が考えた仕返しは、かなり残酷なものだ。

ヒカルとこっそり会っているうちに生理が遅れ、検査薬を使うと妊娠が発覚した。

「嬉しいよ、俺たちも親か。お祝いだね」

弘也はそう言って、お酒を飲みながら泣いて喜んでくれた。…思っていたより早く、仕返しに成功したのだ。

幸いにも、弘也とヒカルは同じ血液型だ。バレないだろうとも思うが、もしバレたとしても離婚すればいいだけのこと。

ねえ、弘也。だって家柄がいい相手なんて、もっと他にいるでしょう?

Fin.


▶前回:恵比寿の億ションがあるのに、ちっとも自宅へ帰ってこない妻。それでも男が離婚を選ばないワケ

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