モテなかったはずの親友が25歳で寿退社して…。彼女の結婚式でかけられた、キツすぎる一言

結婚前の、男女の葛藤。

「本当にこの人と結婚していいの?」

大好きなはずなのに、幸せなはずなのに…。そんな想いとは裏腹に、不安は募るばかり。

カレンダーを見ると“結婚予定日”まで残りわずか。そんなタイミングで発覚した、改姓トラブルや妊娠・出産に関するアレコレ…。

2人は無事に危機を乗り越え、幸せな結婚を迎えられる?

◆これまでのあらすじ

陽介が海外事業部へ異動になったことで、外国に転勤する可能性が出てきた。

歯科衛生士を辞めたとしても、仕事を続けたい桃香は「フリーランスでできることを始めたい」と言い出して…?

▶前回:「マズい、婚約者が出世した…」将来安泰なはずの29歳女が、不満を漏らした理由


「そもそも、桃香はどうしてそこまで働きたがるの?」

休日にもかかわらず自宅で仕事をしていた陽介は、キーボードを打つ手を止めて桃香をジッと見つめる。

彼女がかたくなに仕事を続けたがることを、不思議に思っていたのだ。

昨今の新型コロナウイルスの影響で、桃香が勤めている歯科医院は1日の患者数を制限している。だから彼女の給料が下がっているのは、陽介も知っていた。

「だって結婚して子どもができたら、お金がもっと必要になると思うから…」

なんだか歯切れの悪い様子の桃香に、陽介は眉をひそめる。

将来を心配する気持ちもわかるが、陽介の年収は同年代の中でも高い方だ。

2人には貯金だってあるし、投資に回しているぶんも合わせれば資産額はそれなりにある。

「お金はありすぎて困るものじゃないけど、ちょっと心配しすぎじゃない?他に何か理由があるの?」

そう尋ねると、しばらく考え込んでいた桃香がゆっくりと口を開いた。

「…私、結婚しても仕事を辞めたり、キャリアを積むことを諦めたくないの」

桃香が「絶対に仕事を続けたい」と思うようになったキッカケ。

それは結菜の結婚式へ出席したときに、彼女に言われた一言からだった。

桃香の考え方に影響を及ぼした、結菜の一言とは

それは4年前の、6月のこと。

真っ白なウエディングドレスに身を包み、顔をクシャっとさせて幸せそうに笑っている結菜。親友のそんな表情を見た桃香もまた、幸せな気持ちになったことを覚えている。

「結菜、本当に結婚おめでとう。すっごく綺麗だよ!」

そう言って高砂に座っていた彼女に近づく。すると結菜が、満面の笑みでこう言ったのだ。

「ありがとう!桃香も早く“本当の幸せ”を見つけられるといいね」

結菜とは、小学生のときからの付き合いだ。学生時代は真面目でおとなしく、恋愛には奥手だった。

それなのに社内恋愛の末、25歳で寿退社。早々に結婚を決めてしまったのだ。

― 結菜は今、自分が結婚して幸せだから、そう思うのかもしれないけど…。本当の幸せって、結婚しないと得られないの?


その場では笑って過ごした桃香だったが、帰宅してからもモヤモヤしすぎてすぐに眠ることができなかった。

― 今の私が思っていた“幸せ”は、幸せじゃないのかな?

桃香は当時、新米の歯科衛生士だった。スキルアップのため、いくつもの認定資格取得の勉強をしていたのだ。

学生時代には、眠い目をこすりながら国家資格の勉強。努力の末に就けた職業にやりがいを感じていたし、人々の健康を支えていることにも誇りを持っていた。

そんな自分を親友に否定されたようで、桃香はどうしようもなく悲しかったのである。

― 幸せだと思うことは、人それぞれ違う。私は私なんだから。

桃香はこれまで仕事を生きがいにして、それが“本当の幸せ”だと自分に言い聞かせてきた。

だから、もし自分が専業主婦になってしまったら、今まで思ってきた“本当の幸せ”を否定するようで許せなかったのだ。

「私、国家資格を持っていることで、生きることには困らないと思ってたのに…」

しかし陽介から、異国の地で専業主婦になる可能性を告げられた。資格が使えず働いてもいない自分など、価値がないと思ってしまったのだ。

「だから、どこにいても仕事をしていけるように、家でできる副業を始めたいの。…協力してもらえないかな」

そんな桃香に向かって、陽介は…

「うーん。それならさ、WEBライターなんてどうかな」

「えっ、ライター?…私にもできるのかなあ」

どうやら調べてみると、未経験から始めても何とかなるらしい。クラウドソーシングサービスなどで案件を探せば、仕事も見つかりそうだ。

「俺も昔、ブログを書いていた経験があるしさ。文章を書くのだったら桃香の力になれると思う」

「ありがとう…!すごく心強いよ」

「じゃあまずは、仕事の効率を上げるためにノートパソコン買わないとね。桃香のライターデビューのお祝いとして、俺がプレゼントするよ」

その言葉に桃香は驚き、慌てて断ろうとする。

「えっ!?それは申し訳ないから、自分で買うよ」

「いいんだよ。これから夫婦になるってことで財布は一緒にしたでしょ。これは投資だと思って俺が買うよ」

2人は同棲を始めてから、彼の提案で財布を一緒にしたのだ。陽介が家賃や光熱費・食費を負担し、桃香の収入は将来のために全額貯金するようにしている。

でもさすがに、パソコンまで買ってもらうのは気が引けたのだ。


「桃香がやりたいって言うなら、俺はなんでも応援するし、手伝うからさ。家事は苦手だけど、俺にできることなら頼ってよ」

こうして最初は乗り気でなかった陽介も、桃香の兼業を応援してくれることになった。

― 仕事もプライベートも理解してくれて、力になってくれるなんてありがたいな。

桃香は改めて「結婚相手が陽介でよかった」と実感したのだ。

まだ海外赴任が決まったわけではないが、桃香は思い切ってクラウドソーシングサービスに登録した。

異国の地でいきなり始めて悩むより、少しでも早く慣れておきたいと思ったのである。

このご時世で副業を解禁する企業が多くなり、桃香が勤めている歯科医院も例外ではなかった。だから副業自体は、すんなり始めることができたのだ。

…しかし。このあと思いもよらぬところで2人の仲に危機が訪れるなんて、全く予想もしていなかった。


▶前回:「マズい、婚約者が出世した…」将来安泰なはずの29歳女が、不満を漏らした理由

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桃香の兼業が原因で、陽介とトラブルに…。いったい何が?

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