コロナ禍の夏休み、「面倒な行事を回避できた」と喜ぶ人たちも

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 窓の外に広がる青空を見て、「今年の“夏休み”はどこにも行けなかった」とつぶやく。以前は定期的に参加していた飲み会や、子どもの部活の試合も潰れた。昨年に引き続き、コロナ禍の夏休みがこれほどつまらないものかと痛感したというのは、筆者だけではないはずだ。

 その一方で、“面倒なイベント”を回避できたということで、密かに喜んでいる人もいるらしい。

◆コロナ禍で実家の面倒な恒例行事をまぬがれた

「毎年お盆は東北にある夫の実家に帰省してお墓参り。その後は、ご近所さんにお土産を持って挨拶回り、夜も親族宅をハシゴして、その翌日は本家に一族が集まって大宴会。女性は給仕に後片付けに忙殺される……なんて、今どき珍しいようなお盆を過ごしていました」

 東京都内の団体職員・向田恵理さん(仮名・40代)の夫(50代)は東北の農村出身。盆だけでなく、正月や春休みなど、長期休暇のたびに親族関連の行事に呼び出されていた。その都度、夫が運転する自家用車に飛び乗り、子どもと3人で東北道をすっ飛ばすのだ。

 夫は東京に一軒家を建てたものの、地元や実家に対する愛が深く、仕事で疲れた体にムチを打つようにハンドルを握っているものだから、向田さんも「NO」と言いづらい状況が長く続いてきたのだった。

◆夫の横で密かにガッツポーズ

 ところが、コロナ禍以降はこれらの行事はほぼ中止に。親族の中には地元の名士もいるため、親族で集まっていることが人様に知れ渡るとまずい、ということだったらしいが、向田さんは、残念そうにする夫の横で、「密かにガッツポーズを作ってしまった」と笑う。

「お義母さんは孫だけでも寄越して、なんて言ってましたけど、デルタ株が流行り出して子どもだって危ないという話をすると、理解してくれました。

 親族には私と同じように、イベントのたびに隣県から呼び出されるお嫁さんがいて、本当に良かったねってLINEしました(笑)。全くやらないのは寂しいかも知れませんけど、毎年は厳しいです」(向田さん)

 都会に住んでいるとあまり気が付きにくいのだが、田舎に行けば、今でも「夏休みの同窓会」が当たり前に行われている。向田さんのように、お盆は「実家や本家に帰る」という意識が強く残っており、自然と旧友たちが地元に集まるという。

◆毎年の同窓会は「さすがにツラかった」

 一見すると楽しそうな同窓会も、お盆の帰省にくっついた毎年恒例の「義務」になってしまうと、参加する喜びなどは消えてなくなる。九州出身で横浜市在住の西岡和也さん(仮名・30代)がいう。

「毎年20人くらい、中学の同級生で集まるんです。男も女も、みんなお盆で帰ってきますので。でも、さすがに最近は参加者も減ってきて、私なんかは律儀に参加していたんですが、毎年はさすがにツラかったので」(西岡さん、以下同)

 昨年の夏、同窓会の開催には皆が反対していたが「市内在住者だけならいいだろう」というナゾ解釈のもとで断行されたという。そして、今年はさすがにないかと思いきや「盛大に開催」とのハガキを受け取ったのは、今年6月頃の話だ。

「同窓会の幹事が、いよいよ市議選に出るらしいんです(笑)。だから、その決起集会も兼ねて、今年は是非とも開催したいとか。これにはブーイングがあちこちから出て、今年は初めて不開催に。もちろん、お盆の帰省もなく、久々に自宅でゆっくり過ごしました。同窓会が嫌だというわけではないですが、あまりに頻度が多いと……。政治的な話をされてもたまらないですし」

◆海外旅行に行けない同僚が驚きの行動に

 コロナのおかげでなくなったのは帰省や同窓会だけではない。夏休みといえば、毎年のように「海外旅行」に行っては、小麦色に日焼けした肌で会社に行き、同僚へお土産を配るのが恒例、という人たちもいた。肝心の旅行にいけない現在はどうなのか。

 独身で海外旅行好きの同僚が多いという都内の広告制作会社勤務・佐々木佳織さん(仮名・30代)の証言だ。

「毎年夏はハワイやヨーロッパに行く同僚が多く、夏休み明けにはお菓子とか服とか、大量のお土産を買って帰る人ばかりでした。私は行っても国内の温泉だし、お土産にお金も使いたくないので、もらうばかりで気まずい思いをしていました」(佐々木さん、以下同)

 去年の春以降、旅行好きだった同僚たちが旅行に行けなくなったのはいうまでもないが、それでも彼女たちは「諦めなかった」という。

◆デスクの上には“お取り寄せグルメ”が

「現在は会社に週2度しか出社しないのですが、ちょうど夏休みが明ける頃に行ってみると、デスクの上に“お取り寄せグルメ”がいくつか置かれていました。海外のお菓子や、国内の珍しい食べ物とか。旅行に行けないぶんってことなんでしょうけど、お土産も絶対に忘れないっていう意識がすごい」

 以前は「たんなる見栄の張り合い」だと思っていた佐々木さんだが、ある意味、執念のようなものを感じたという。

 おこぼれがもらえるうちは黙って頂戴するのが得策だろうが、コロナ禍で失った「夏休み」を少しでも取り戻そうとする執念が、来年こそは成就することを願うばかりだ。

<取材・文/森原ドンタコス>


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  • 日刊SPA!

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