身を犠牲にするほど“エモい”。「推し」としてのホストに貢ぐぴえん系女子たち

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幾らのお金を渡せるか、どれだけ自分を犠牲にできるか——。ぴえん世代の「推し」文化、そしてホストの搾取の構造を15歳から歌舞伎町に通い続ける現役女子大生ライターが解き明かす!

◆「繫がれる推し」に貢ぐ文化

「宝くじで当たった100万円に価値はない。60分1万円で、100人のオジサンを相手してボロボロになったお金を、“推し”に使うから意味があるの」

 私が取材したあるぴえん系女性は、体を売り続け、憔悴しきった顔でこう叫んだ――。歌舞伎町で自らを切り売りする女性のなかには、身を犠牲にするからこそ、推しに対する“尊さ”もまた強まるという価値観を持つ者もいる。

 推し(おし)、小学館デジタル大辞典によれば「他の人にすすめること。また俗に、人にすすめたいほど気に入っている人や物のこと」という言葉だ。一般的に認知されたのは、国民的アイドルグループ「AKB48」のブームであろう。

 大人数のメンバーのなかから一人を“推す”。CDの売り上げ枚数で競う“選挙制”を導入。SNSには自分の推しに対する愛情の表現として、数百万円を使ったであろうCDの入った山積みの段ボール箱や、グッズの「祭壇」を投稿するなど、従来のアイドルを応援する行為に“誇示消費”を植え付けたといえる。

◆「どれだけお金を貢げるか」がアイデンティティに

 推しを応援するという行為は布教的意味合いもあるが、どれだけお金を貢げるかにアイデンティを置く者もいる事実。

 推しの対象はアイドルからアニメに広がり、YouTuberからライブ配信者、現在はSNSの普及によりフォロワー数百から数千程度のただの“素人”にまで到達している。

 ある意味で、誰もが誰かの“推し”になれる時代。そのほぼ一般人に近い推しを応援するために、名前を覚えてもらうために、大金を費やす人も少なくはない。

 ぴえん系の“病み”を愛する女性のなかには、前回触れた児童ポルノ違反で捕まった者に対して、イケメンという理由だけで金銭を渡す人もいる。

「お金なくて困ってま~す。誰か貢いでください~!」

 無邪気な文面と、自撮り写真に、キャッシュレス決済のQRコードをSNSに投稿。すぐに女性たちは送金するのだ。そんな即座に“繋がれる推し”にお金を送るのが、ぴえん世代の新たな価値観なのだろう。

◆繋がれる推しの最高峰はホストクラブ

 お金を使って応援する接客業の筆頭であるホストクラブは、今、空前のバブル期を迎えている。10年前は月に1000万円を売ったら街では話題沸騰だったが、今は1000万円を売ってスタートライン。

 その立役者はやはりSNSだ。例えばInstagramで偶然見つけたイケメンが、たまたまホストだったから指名した。そんなホスト文化を知らない顧客が歌舞伎町に足を運ぶ機会が大幅に増えている。

 現在、ホストクラブは歌舞伎町に約260店舗、約5000人ほどのホストが存在するとされている。そんな歌舞伎町の店舗で年間売り上げ&指名本数8年連続ナンバーワンである有名ホストの越前リョーマが、今年2月に出版した書籍のタイトルは『成功したいなら誰かの「推し」になれ』(光文社)である。

 従来のホストは色恋営業や本気営業による恋愛関係での売り上げが主流だったが、今、最もホスト業界で成功しやすいと言われる営業法は「アイドル営業」。つまり、「恋される」より「推される」ほうがよしとされているのだ。

 アイドルとホストの差異は「店に行けば必ず会える」ことと、「必ずLINEができる」ところにあるだろう。非日常がいつでも日常に転換されるような仕組みが存在し、いつしか推しが偶像ではなく日常との地続きであるように感じられ、推しが商品でなくなったあとでも自分だけは一緒にいられるような気がしてくる。そうした錯覚を、ホストは言葉巧みに与えてくる。「未来の関係性」に対する期待感を金銭に換える、“繋がれる推し”の立場を使った搾取といえるだろう。

◆誇示消費をしたくなる“仕掛け”

 さらに、ホストクラブには誇示消費をしたくなる仕掛けがたくさん存在している。例えば、毎日一番売り上げたホストがカラオケを一番金を使った女性の横で歌える「ラストソング」。ホストクラブの男女たちはカラオケの曲を歌いたいがために、数十万をかけて日々争うこともある。

 さらには「飾りボトル」というものがあり、数十万~数百万円するこのお酒は、一度オーダーすれば毎回自分が来店するたびにテーブルに並べられる。すると、客からも他のホストからも、「アイツは大金を使っている」というのが一目瞭然となる。まさに“映え”であり、誇示消費だろう。飾りボトルはそうした推し消費に溺れる女性たちのステータスであり、ホスト女のコ両名の権威の象徴なのだ。

 もちろん、女性客たちは自分の“推し活”をSNSに投稿する。ホストにシャンパンを卸した、いくら使ったという写真をネットに上げ、たくさんの“イイネ”をもらう。それだけ「推し」に貢いでいるというアピールになるとともに、特にホストクラブではそれだけの大金を稼げる=若くてかわいいという見立てが起きやすく、一種の自己顕示欲も満たされる。

◆大金を支払ってまで満たされたい理由

 なぜ、大金を支払ってまで満たされたいのか。歌舞伎町が顕著ではあるが、推すために“夜の仕事”をしている女のコたちが存在する。推しがいたから夜の商売をしたのか、それとも体を売った慰めに推しに走ったのか――、事情はそれぞれ。

 ただ、ぴえん世代のなかには何かを投げ売ったり犠牲にしてまで推すことが「エモい」とされ、その界隈では「偉い」とまでされる文化が確かにある。冒頭の“宝くじ”の女性がそうだ。

 この繋がれる推し文化のある種最上位に位置し、承認欲求から誇示消費、エゴすべてを吸い取るのがホストクラブという存在なのだろう。

 もちろん、ホスト側もただお金を得るだけではなく自身の心と体を“消費”しているのだが――。次週は男性性の切り売りについて触れる。

◆「ぴえん世代」新語辞典

・越前リョーマ
歌舞伎町のホストクラブ「Dewl」で8年連続売り上げ、指名本数(月あたりのお客様の来店人数)1位の座を守り抜き「ホストの神」と称される。’15年には歌舞伎町のホスト「神7」に選出されるなど、非大手グループ所属にもかかわらず圧倒的な知名度を誇る実力派。合言葉は「愛に恋よ」。今年2月に『成功したいなら誰かの「推し」になれ』(光文社)を出版した。

・繫がれる推し
アイドルや二次元など推しははるか遠くの存在であったが、SNSの普及により、いわゆる“ネット有名人”的な直接繋がれるタイプが増えた。顔が整っている、面白い、そんな人たちに対して金銭を送り、果てには自身の体を捧げる女性たちがいる。ただ、あまりにも簡単に繋がれる推しは、SNSで「アイツすぐヤレるよ(笑)」と晒されるのが常である。

写真/tsubasa_works12

―[「ぴえん世代」の社会学]―

【佐々木チワワ】
現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki

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