東大生が考える「電車の中での残念な時間の使い方/効率的な時間の使い方」

―[貧困東大生・布施川天馬]―

 現役東大生の布施川天馬と申します。学生生活の傍ら、ライターとして受験に関する情報発信などをしています。

◆考えごとが捗る場所はどこか?

 皆さんは「馬上・枕上・厠上」という言葉をご存じでしょうか。これは中世中国で活躍した政治家であり、詩人でもあった欧陽脩(オウヨウシュウ)が語った「文章を考える際に適している場所3選」です。これらをまとめて「三上」(さんじょう)といいます。

 馬上というのは馬に乗っているとき、枕上というのは寝るとき、そして厠上というのはトイレにいるときをそれぞれ指します。現代では日常的に馬に乗る人はほとんどいないため、馬上は「車上」と言い換えてもいいかもしれません。

 そういわれてみれば、僕自身、何かアイデアを閃いたり、考えごとが捗ったりするのは、この3つの場所にいるときが多いです。

 ちなみに発明家のドクター中松さんは「音を遮断するため」として自宅のトイレに1億円をかけているそうなので、中松氏もトイレが一番考えことが捗ると思っておられるのかもしれません。

◆暗記を電車内でやるのは非効率

 さて、そんな「三上」ですが、僕が唯一注意しなくてはいけないと考えているのが「車上」です。

 朝と夜のラッシュ時間に電車へ乗り込むと、車内で英単語帳を開いている社会人の方が多く目につきます。ですが、これは大変非効率な勉強をしているかもしれないのです。

「どうして電車内で英単語帳を開くことが非効率なんだ!」と思われる方も多いでしょう。しかし、十分に集中することができない環境で、集中を要するタスクを行っているため、とても効率的とはいえません。

 勘違いしがちですが、暗記作業こそ実は集中力と思考力を要する大変知的な作業なのです。

 今回は「電車内での残念な時間の使い方と効率的な時間の使い方」についてお伝えします。

◆「記憶を定着させる」のは簡単ではない

 特に通勤電車内での英単語暗記は、まったく効率的ではありません。

 暗記というタスクは、まるで「考える」という作業と無縁のように感じます。覚えることと考えることは別物だと思われがちです。

 たしかに覚えるだけなら、考える要素は必要ないかもしれません。ですが、何かを記憶する際、その知識を定着させるためには考えるべきことが山積みになっています。

◆東大生はどう英単語を覚えている?

 たとえば、”agriculture”という単語を覚えるとします。これは日本語で「農業」という意味がある単語です。日本語では「農業」と2文字ですが、英語になると11文字と、大変長く感じられます。

 この単語を”a-g-r-i-c-u-l-t-u-r-e”と11文字のアルファベットの羅列だととらえると、簡単に覚えることはできません。ですが、僕はそのようには記憶せず、2つのパーツに分けて考えるようにしています。

 実は“agriculture”という単語は”agri”という部分と”culture”という部分に分けることが可能です。

◆“agriculture”の効率的な覚え方

 前半部分の”agri”というのは、単語ではありません。ある単語にくっついて「農業の」といったような意味を追加する「接辞」になります。

 後半の”culture”に関しては、そのまま「カルチャー」です。ここでいうカルチャーは、いわゆるサブカルのようなものから風俗や伝統といったものを含む「文化」という意味があります。

 これらが組み合わさった結果、”agriculture”「農業」という形で意味が表れているのです。接辞とそれ以外とで分けることで、一気に暗記がラクになるのです。

◆接辞を覚えて、アタリをつける

 これは”agriculture”に限った話ではありません。よく出てくる接辞としては”pro”(”propose”や”produce”など)だったり、”com”(”compose”や”accompany”など)が挙げられます。

 いま例に出した単語も、一見すると、アルファベットが5つも6つも並んでいます。

 ですが、僕を含めて英単語の暗記をする東大生はそのようには見ません。それぞれの接辞だけ覚えていれば、「あぁ、こいつは”pro”のグループなのね。”pro”はだいたい『前に進む』みたいな意味になりがちだから、たぶんこいつはこんな意味だろう」というように、ひとまとめにしたうえで、意味もアタリをつけながら覚えることができます。

◆暗記には高い集中力が必要になる

 暗記の効率は、暗記する対象をどれだけよく知っているかで変化します。英単語は全然覚えていないのに、流行の歌は歌詞を見ずに歌えるとか、源頼朝すら知らないのに、朝ドラ俳優全員の顔と名前が一致しているという人は、そこまで珍しくないでしょう。

 英単語も同じです。初出の単語に対して、どれだけ自分の手持ちの知識との関係性を見出すことができるかで、その単語を覚えられるかの9割が決まってくるのです。

 この関係性を見出すという作業は、目の前の単語の分析と、記憶内の検索を一気に行わなくてはならず、頭を使う作業になります。

 つまり、非常に集中力が必要なため、集中しにくいような環境での暗記作業は向いていないのです。

◆どうしても電車内で英単語を記憶したいときは…

 しかし、「どうしても英語の勉強をする時間がない!」「電車内で読むしかない!」という方もいらっしゃるでしょう。そのような方は、制限時間を設けて取り組むようにしてください。

 たとえば、山手線でいえば、「いま渋谷を出発したから、品川駅でドアが開くまでは勉強しよう」というようにして、制限を設けるのです。

 このとき、自分で品川駅までと決めたなら、絶対にそのルールを破ってはいけません。品川についたら、潔く単語帳を閉じて、もう触れないことです。この制約と焦りが集中力につながります。

◆移動時間ならではの工夫が必要

 集中するために時間制限を設けるという方法は、昔からよく使われる手法です。

「陰山メソッド」で知られる小学校教育の大家である陰山英男先生も「勉強とは集中の練習である」として、時間制限を設けての勉強を奨励されています。

 皆さん、電車のなかではスマホでゲームをしたり、ネットニュースを読んだり、SNSを開いたり、仮眠をとったり、思い思いの時間の過ごし方をしているかと思います。

 移動に使われる時間はごくわずかですが、移動の多い方にとってはどう過ごすかがはかなり大切になります。

 移動の多い方にとってはどう過ごすかはかなり大切なので、今回の暗記メソッドが皆さんの車内時間の有効活用に何かお手伝いできたなら幸いです。

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】

1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa)

2021/9/5 15:54

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます