商業ビルを爆買いする中国人「東京のビルは上海のマンション1室より安い」

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北海道での中国資本の土地買収が話題になっているが、実は首都・東京でも水面下で同じトレンドが起きていた。ターゲットは商業ビル。何が起きているのか、当事者に緊急取材した!!

◆オンライン内見で即決!投資家が語った購入理由

 出口の見えないコロナ禍の暗雲が、都心の不動産市場をものみ込んでいる。オフィス仲介大手・三鬼商事によると、7月の都心5区のオフィスビルの平均空室率は6.28%に達した。2年前の同月は1.71%だったが、感染拡大後は右肩上がりで推移し続けている。

「最大の要因は、コロナ禍でのリモートワークの普及。この波は収束後も続くと見られ、ビルオーナーにとっては頭の痛い話です」

 そう解説するのは、不動産ジャーナリストの榊淳司氏だ。今後、空室率の上昇はオフィスビルにとどまらず、商業ビル全体のトレンドになると榊氏は指摘する。

「飲食店が多数入居しているような雑居ビルは今後ますます苦しくなる。飲食店は、協力金でギリギリ生きながらえているところも多いですが、問題はコロナ後。一度離れた客は戻らないし、リモート化で会社員が減れば都心の飲食店は大打撃です。これまで以上の撤退ラッシュが予想されます」

 実際、銀座や秋葉原、歌舞伎町、新橋などではテナントがすべて撤退した空きビルの存在も目立つ。

◆蒲田、大森、中野エリアの商業ビルが人気

 こうしたなか、空室率の高さにあえぐ日本の商業ビルに触手を伸ばす人々がいる。中華圏の投資家と日本の不動産をマッチングするプラットフォーム「神居秒算」の代表・趙潔氏は言う。

「コロナの感染拡大で、中国人や企業の不動産購入はいったん落ち着いていたのですが、2月あたりから、また動きが活発になってきている。商業物件は買い手市場になってきていることと、コロナ後に人出や外国人観光客が戻ると見込まれていることが背景にあります。

 不動産投資ファンドの場合、銀座や赤坂を中心とした都心6区の好立地ビルに関心が高く、価格については重視されていない。一方、個人投資家の間では1億~2億円ほどで買え、表面利回りで5~6%ほどを見込める蒲田、大森、中野のような商住一体型のエリアの商業ビルが人気です」

 実際に「神居秒算」を見てみると売り出し中の一棟商業ビルがわんさか。最高額はアパホテル御徒町駅北(現在は閉館)の居抜き物件で約20億円。ほかにも港区や中央区、台東区など都内有数の繁華街の商業ビルがいくつも出てくる。

◆「上海のマンションの一室を売れば、東京でビルが1棟買える」

 六本木にある不動産会社の営業担当者も、中国人向け営業の好調ぶりをこう明かす。

「ここ数か月は、月に10件ほどの問い合わせが中国から入っています。会社経営者などの富裕層の個人がメインで、特に人気が高いのは新宿エリアの5億~10億円の駅チカの商業ビル。コロナの収束を見越して外国人観光客が再び歌舞伎町周辺にやってくることを期待してのことでしょう。1億3000万円の物件をオンライン内見だけで、問い合わせから3日で契約した中国人もいました」

 しかし、日本人投資家が敬遠する都心の商業ビルを、なぜ中国人が買い漁るのか。実際に、港区内に10億円の商業ビルを購入した、上海在住の会社経営者の男性に話を聞くことができた。

「まず、安定した利回りが見込めます。私が購入した物件は表面利回り5%ほどですが、中国の主要都市だと良くても2%程度で、ここ数年はさらに下落傾向にある。中国の物件は転売目的なら値上がりも見込めますが、バブル崩壊の心配もありますからね。

 また、欧米各国は非在住者の不動産購入を制限していますが、日本はそうした規制もない。現地に行かずとも行政書士に任せれば登記できることも、利点のひとつでした」

 加えて、日本の商業ビルの割安感もある。板橋区に1億円の雑居ビルを購入した別の中国人投資家は「上海のマンションの一室を売れば、東京でビルが1棟買える」と語った。巷間言われる“安い日本”を地で行く話だろう。

◆キャッシュで即決!スピード感が違う

 一方、ブランドを求めて購入する中国人も少なくない。都内の中国系不動産会社の代表は言う。

「利回りが低くても銀座、新宿、六本木など世界的に名の知られた場所にある物件を手に入れたいという需要も根強い。購入者が個人の場合は見えのため、法人の場合は信用や宣伝が目的です。5億円程度ならキャッシュで購入する個人投資家も多いですよ」

 収益度外視で日本の不動産を購入する中国人について、前出の趙氏はこう付け加える。

「個人投資家の場合、滞在資格の獲得のために物件を購入するというケースも多い。1億~2億円の物件を購入して安定したキャッシュフローがあれば、経営管理ビザを取得し維持できるのです」

 榊氏も、日本人とは異なる中国人の商業ビル購入の動機についてこう指摘する。

「中国の富裕層は資産運用というより資産保全のために海外不動産に分散投資をしています。近年は米国やカナダ、オーストラリアとの外交関係が悪化するなか、消去法で日本の不動産に注目が集まっているという側面があります。中国人富裕層を顧客に持つエージェントによると、数十億円の購入資金が、ケイマン諸島やスイスなどのタックスヘイブンから送金されてくるケースも多いそうです」

◆手っ取り早く売れるのであれば誰でも…

 一方、物件のオーナーたちは、中国マネーによる不動産爆買いを好意的に見ているという。

「むしろ『ぜひ中国人に売りたい』というオーナーの方が多いように思います。というのも、中国人投資家は数億円レベルの物件をキャッシュで、しかもオンライン内見だけで即決する人が多いですからね。スピード感が違います」(趙氏)

 榊氏も、中国人への売却を希望する物件オーナーから相談を受けたことがあるという。

「都内某エリアの風俗ビルを7億円で売りたいというオーナーがいたのですが、風俗店が入居しているビルは購入の際、融資が下りない。そこで、キャッシュで買ってくれる中国人を探してくれないかと。

 このほか、都心に何棟もビルを持っている法人の代表からも同様の相談を受けたことがあります。銀座の一部の商業ビルは、飲食店の撤退ですでに賃料収入が半額以下に陥っているそうですが、そうした物件のオーナーは、手っ取り早く売れるのであれば相手が誰であっても気にしない。歌舞伎町は、戦後の混乱期に台湾人が土地を買い漁って今の姿になった。

 そう考えると、コロナが収束する頃には、銀座がチャイナタウンになっているかもしれません」

 コロナ後の東京の街の風景は一変するかもしれない。

◆ネオチャイナタウンが都内でも増えていく!?

「最近、毎週のように日本にいる中国人から『ビル買わないか』っていうメッセージが来る。いい物件があれば買いたい」

 こう話すのは上海在住の50代の中国人女性だ。十数年前に新宿・歌舞伎町で本番エステなど数店舗を展開し、ひと財産築いて帰国した“女性実業家”だ。

「私にとって歌舞伎町は第二の故郷だから、機会があればまたビジネスをしたい。ビルを買って1階は中華料理店、2階は美容室、3階から上は中国クラブやエステ……総合娯楽ビルが造れたら面白いわね。昔、本番エステで逮捕されたことがあるから、あくまで健全なビルよ、エロはなし!」

 過去に違法風俗で荒稼ぎし、帰国した中国人のなかには、ビルオーナーとして日本に再上陸したい人がほかにもいるとか。

「池袋や錦糸町でビルを探してる昔のエステ仲間はいますよ」

 都内各地に西川口のようなネオチャイナタウンが増えていくかもしれない!?

取材・文/奥窪優木 広瀬大介 アズマカン


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