モテる彼氏に不安を抱く女。いてもたってもいられず、女はある“禁断の行為”に出てしまい…?
ようやく付き合えた彼から、別れを切り出されてしまった女たち。
「私は別れたくないのに、どうして…?」
彼氏に夢中になる女のなかには、自らの行動で関係を壊してしまう“恋愛クラッシャー”が存在する。
では彼女たちの何が原因で、この恋はクラッシュしてしまったのだろうか?
▶前回:「私に夢中じゃなかったの…?」交際3ヶ月でフラれた女の、致命的なミス
今回の悩める女子:上原清香(33歳・キャスティング会社勤務)
「裏アカ持ってる子、結構多いと思いますよ?私だって、ほら」
「えー、そうなの?そもそも裏アカって、どういうときに使うのよ」
久々に出社した、オフィスでのこと。
隣のデスクに座る4つ下の後輩が見せてくれたのは、旅先の景色がプロフィール写真に使われたアカウントのトップページだった。
本名とは違う登録名をつけて、非公開設定にしているという。確かにこれなら誰のアカウントか特定できない。
― いや。でも裏アカウントなんて、芸能人じゃないんだから必要ないでしょ。
私もアカウントは持っているけれど、投稿するのは2~3ヶ月に一度くらい。
というのも仕事柄、インスタグラマーの投稿をチェックすることが多い。だから仕事の時間以外は、極力SNSから離れたいのだ。
「裏アカって、便利なんですよ。彼氏のインスタをこっそり見るときとか!女関係をチェックするんです」
「女関係のチェック!?そんなことしてるの…」
「だって会ってない時間に彼が何してるか、わかんないじゃないですか~」
そんなことを嬉しそうに話す彼女の表情に、一瞬だけ執念じみたものを垣間見たような気がする。
…このときはまだ“裏アカ”なんて、自分には関係のないことだと思っていたのだ。
後輩の“裏アカ徘徊”に触発された清香は…?
クラッシュしてしまった行動は1or2どっち?
Action1「裏アカを作って、彼の行動を監視するようになった」
私の彼氏・江口宏太は仕事のクライアントだった。
今の広告代理店で働く前にモデルをしていたという彼は、業界ではちょっとした有名人でもある。そんな彼と付き合い始めて、もうすぐ半年。
「江口さんって、イケメンで顔が広いし、フットワークが軽いから付き合ってて心配にならない?」
こんなふうに、社内外の人間から聞かれたこともある。彼はコミュニケーション能力が異様に長けているのだ。
温和で人懐っこい性格。かと思いきや、仕事となるとハッキリ意見を言う。そのギャップのせいか、彼のファンは多かった。
「この間、裏アカから宏太さんのストーリーズ見たんですけど。ゴルフしてる投稿に、女性がチラッと写ってたような…。清香さん知ってました?」
実は宏太のインスタを、フォローしていなかった私。きっかけは、後輩からの密告だった。
― ゴルフって、取引先の人たちと行くんじゃなかったっけ。
不安になった私は、すぐさま彼にLINEを送った。
清香:ゴルフどうだった?暑かったし接待大変だったんじゃない?
宏太:本当、ヤバかったよ!みんな熱中しちゃって。父親世代の人ばっかりだから、体調とか心配になっちゃってさ。
「うわ、噓つかれた…」
そうして頭に血がのぼった私は“清”の字をとって、kiyomiという名の裏アカを作ってしまったのだ。
「裏アカの良さは、彼のストーリーズを見ても足跡が気にならないことです。あとは、彼がタグ付けされた写真の主の投稿や、ストーリーズをこっそり見てもバレないことですね」
後輩の助言は、悪魔の囁きだ。ここから先に進んではいけないと思うのに、指先が止まらない。
― ああ、これか…。
たどり着いたのは、黒髪清楚系美人のInstagramだった。
そこにはドライバーを豪快にスイングする彼と、ひざ上20cmのミニスカートでゴルフを楽しむ女性たちの姿がストーリーズに投稿されていたのだ。
投稿主の女性は、宏太に気があるのかもしれない。
ゴルフの写真のほかにも、過去の飲み会での様子が何枚も投稿されている。
「#いつものメンバー」というハッシュタグが付けられているのを見たときは、胃がギューッと締め付けられて気分が悪くなった。
私が知らなかっただけで、こんなふうにこの女性と何度も会っていたのだろうか。百歩譲ってみんなで会うのはいいとしても、嘘をついて会うのならそれはマナー違反だ。
― やっぱSNSって好きじゃない。裏アカなんて作らなきゃ、余計なことを知らずに済んだかもしれないのに。
Action2「疑わしいことがあっても聞かないようにした」
しかし自分の気持ちとは裏腹に、宏太と例の女性のInstagramをチェックするのが習慣になっていった。一度、足を踏み入れたら最後なのだ。
ストーリーズの投稿は何度も繰り返して見るし、誰にフォローされて、誰をフォローしたのかのチェックも怠らない。
ゴルフの彼女の投稿を見るときは、いつかまた宏太が登場するのではないかとハラハラする。
― はあ、よかった…。最近は会ってないみたい。
だけどこの場合、仮に何か見つけたとしても正面からは問いただせないだろう。
「清香、最近ずっとスマホ見てるよね。何見てるの?」
こんなふうにデート中、宏太から指摘されることも増えた。でも彼のインスタを盗み見ているだなんて、口が裂けても言えない。
口を開けばボロが出てしまいそうだし、責めてしまうかもしれない。それで彼の気持ちが離れてしまうのなら、このまま何も知らないフリをしておくのがいい。
するといつしか、彼に素直な気持ちを伝えたり甘えたりといった、以前は自然とできていたことができなくなってしまったのだ。
知らなくていいことまで知ることができてしまうSNSは、使い方次第で恋愛の障害になりうる。…もう裏アカは削除しようと決めた、数日後。
「ごめん、清香。別れよう」
なぜか宏太から、別れを切り出されてしまったのだ。
「えっ、どうして?もしかして、あのゴルフの人と…」
「ゴルフ?ああ、いや。それは違うんだけど。…ていうか清香さ」
― やっぱり例の彼女と何かあったんだ…。
思わず涙がこみ上げ、私はその場でうつむいてしまった。
男が別れを決意した、本当の理由とは
江口宏太(30歳・広告代理店勤務)の答え
ある企画の打ち合わせで知り合った清香。彼女は、本当に素敵な人だと思う。
仕事にやりがいを持っていて、恋愛が一番じゃないところがいい。さっぱりしていて、一緒にいて窮屈さを感じないのだ。
前に付き合っていた彼女の束縛がひどかったから、次に付き合うなら自分のことを必要以上に詮索しない人がいいと思っていた。だから、清香はまさに理想の女性だったのだ。
ところが、付き合い始めて半年ほど経った頃から、彼女の様子が変わったような気がする。
ずっとスマホを見ていたり、どこか上の空だったり。2人でいる時間に甘えてきてくれることもなくなった。
こんなふうに清香との関係に悩んでいた頃。Instagramをぼんやり見ていた僕は、あることに気づいた。
― そういえば、このアカウントの人って結構ストーリーズ見てくれてるよな。もしかして、僕の知り合い?
“kiyomi”というアカウント名だから、恐らく女性だろう。投稿は1枚もなくフォロワーもいないから、まだアカウントを作ったばかりなのかもしれない。
― kiyomiと清香、か…。まさかね。
だが清香の様子がおかしくなったのは、kiyomiが出現するようになってからのような気もするのだ。もちろん、確信はないが。
だからこれまで通り、普通に彼女と会っていた。しかし清香の態度は、よそよそしくなっていく一方だ。視線には、僕に対する不信感が混じっていることさえある。
2人でいても楽しさを感じるどころか「何が清香の機嫌を損ねたのだろう」と、首をかしげることが増えた。
「清香、最近ずっとスマホ見てるよね。何見てるの?」
「ああ、ごめん。ちょっと仕事関係の…」
ハッキリしない受け答えの裏に、何か言いたいことがあるような気がしてならない。
そんな調子で3ヶ月が過ぎた頃。僕の気持ちはすっかり冷めてしまい、別れを切り出したのだった。
すると、清香の口から「あのゴルフの人と…」という言葉が出てきて驚いた。
彼女は学生時代のサークル仲間で、今でもよく顔を合わせるメンバーの1人。そんな付き合いだから、清香が彼女を知っているわけがない。
あの疑惑が、再び脳裏をよぎった。
― やっぱりkiyomiは清香なのか?
だけど「別のアカウントで僕のインスタを見てなかった?」と聞きかけてやめた。清香が余計な心配をしないように、接待だと言って彼女たちとゴルフに行った後ろめたさがある。
それにしても、これなら口に出さないだけで逐一行動を把握しようとしていた元カノたちと、何も変わらないじゃないか。
…いや、逆に気になることがあるなら聞いてくれた方がよかった。
陰でこっそり動向を探って、1人で思い詰めていた彼女を気の毒に思いながらも、本音を言うとそんな清香が怖くて、この話を掘り下げる気になれない。
詮索されるのは好きではないが、不安や心配事があるなら、こじれる前に打ち明けて欲しかった。
これって、僕のわがままなのだろうか…。
Action1「裏アカを作って、彼の行動を監視するようになった」
答えは△ ⇒彼女の態度が変わって怪しいと思ったが、確証は得られなかったため。
Action2「疑わしいことがあっても聞かないようにした」
答えは〇 ⇒彼女の疑いを含んだ視線に違和感を抱き、関係がこじれてしまった。
▶前回:「私に夢中じゃなかったの…?」交際3ヶ月でフラれた女の、致命的なミス
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公私ともに支える彼女になれていたはずなのに、フラれたのはなぜ…?