ウレタンマスクは「無意味」! 科学者が教える「本当に効果的なマスク」

―[コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」]―

 新型コロナの感染拡大が止まらない!一貫して科学者の視点から日本のコロナ対策のおかしさを指摘し続け、東京都の感染者数急増も的確に予想したコロラド博士こと牧田寛氏。『誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか』を上梓した牧田氏に、科学者目線で見た「本当に効果的な感染症防護」について緊急寄稿してもらった。

◆エピデミックの激化する日本

 東京オリンピックと同時に東京ではいよいよエピデミックが加速し、8/27現在で3万5000人を越える人々が自宅療養という名目で医療から排除され、自宅で苦しんでいます。

 筆者は、SNS等で東京における8月末から9月始めの感染率は人口の5〜8%程度であろうと論じてきました。東京新聞が報じたように*、東京都は独自のモニタリングPCR検査を行っておりこの結果、東京都の感染状況がかなり明らかになってきました。

<*東京都のモニタリング検査、コロナ陽性率が2ヶ月で18倍に…感染気付かず出歩く人が急増2021/08/27東京新聞>

 次に東京新聞記事を一部引用します。(都の資料へのリンクを筆者が加えました。)

”都の資料によると、7月第1週の感染者数の割合は0.05%で、検査したおよそ1992人に1人が感染している計算だった。翌週から0.09%、0.15%と割合は上昇し、8月の第3週では0.89%となった。検査したおよそ113人に1人が感染している計算で、7月第1週の約18倍になった”(引用終わり)

 このモニタリング検査結果から、東京では8月第三週時点でおよそ100人に1人の人が潜在的感染力を持っている事になりますが、実際は、唾液PCR検査の臨床感度(検体採取成功率)や検査対象者の抽出法などから、その2.5倍に当たる2.2%=50人に1人がウイルスを人に移す能力を持ちながら出歩いている可能性があるという事になります。

 更に7週間で0.05%から0.89%に増加しているという事は、7週間で18倍ですから、倍加時間は11〜12日(実際にはお盆休み中の人流の低下があるので10日程度)となりますので、9月1日頃には街行く人々の2〜5%がウイルスを人に移す能力を持っている可能性があることになります。これは小中高等学校では一クラスに1〜2人の感染能力を持つ人が居ることになります。そしてこれはこれまで筆者が推測してきた8月末から9月始めに5〜8%とよく合っています。

 以下に計算の根拠を示します。

 東京都モニタリング調査では、唾液検体PCR検査を行っており、これは無症状者への検査に限っていますので、臨床感度は低くなっています。ここでは有症状者も含めた唾液検体PCR検査の臨床感度として見積もられる40%をとります*。

<*唾液検体は、COVID-19発症日と数日間は臨床感度90%程度となる。発症から日が経つと急速にウイルスが唾液からいなくなり10日目以降は採取不能となる。その為、頻回検査や発症直後の検査には簡便さもあってたいへんに有効とされている>

従って、0.89%の感染者が見つかった場合、実際には感度40%の逆数で2.5倍にすれば良く2.2%(50人に1人)となります。倍加時間については既述の通りです。

 東京都の日毎新規感染者数統計は、8/1以降、「急ブレーキがかかった」と言う人が居ますが、これは前回記事「COVIDー19、感染拡大! 日本の統計がすでに破綻している、これだけの理由」 で指摘したように7/30厚労省連絡で検査対象を変えたために過ぎず全くの誤りです。モニタリング調査では7月からの増加率がお盆休みを除き全く衰えていません。

 月末時点で既に満員電車一両(200人)の中に10人近いスプレッダ(感染能力のある人)が存在する可能性があり、通勤通学などの日常生活で感染するリスクが極めて高い状況となっています。

 東京都モニタリング調査からは、9月上旬*から中旬にかけて感染飽和によってピークとなり、第5波収束に向かうと考えられます。一方で既に第5波エピデミックは収束過程とする考えもあって、現在意見は割れています。

 筆者は、9月中旬をピークに第5波収束に向かうと考えていますが、合衆国の保健指標評価研究所(IHME)は、2021/08/25更新の予測で年内は収束しないと予測しています。

 いずれにせよ10月以降には昨年同様に「秋の波」=第6波エピデミックの来襲がほぼ確実視されています。

◆収束に転じなければロックダウンしかないが、国にその意思なし

 本邦は既に百万人あたりの新規感染者数が欧州平均を超える状況で、検査抑制政策による統計の異常を補正すると合衆国を抜いて世界最悪の可能性もあります。このまま感染状況が悪化すると、ロックダウン以外に終息させる術はありません。ロックダウンは違憲という人が居ますが、実際は損失の補償を直接給付すれば合憲とされます。例えば1人20万円の直接給付に要する25兆円は、現在実際に余らせている昨年度予算のコロナ対策費繰越金30兆円でおつりが来ます。

 本邦は、ここで収束に転じなければ、90日ロックダウンが必要ですが、直接給付金や医療・防疫拡充費用で合計60兆円(今年度予算分30兆円)あれば確実に第5波エピデミックを収束できます。これは中国に始まり、合衆国や英国でも大成功しています。最近では、インドが見事に制圧しており、韓国でも遂にロックダウンに踏み切り、見事に感染拡大を止めています。

 しかし現実を見ない菅政権や小池都政にそれを期待することは困難で、待っている間にも感染機会は10日で倍に増え続けます。そして人はお金を稼がないと生活できません。子供達には学習機会を提供せねばなりません。

 ならばどうするか? 可能な限りのテレワークや遠隔授業、時差出勤の励行は必須ですが、それらに加えてマスクのアップグレイドは必須と言えます。

◆より高性能のマスクを付けよう

 COVID-19パンデミックでは感染症防御に非常に効果が大きいものとして次がきわめて強く推奨されます。防疫のイロハのイであり、最優先の社会の責務である検査と隔離を筆頭に優先順に示します。

1) 検査・追跡・隔離

2) 社会的距離の確保

3) 屋内の換気

4) 高性能マスクの着用

5) ワクチン接種

 N95や、KF94のような高性能レスピレータ(高性能マスク)は、90〜95%程度の感染抑制効果があり、二重マスク化した不織布マスクもそれに準ずる80〜90%程度の感染抑制効果があります。

 第一世代COVID-19ワクチンは、感染抑制を開発目的に入れていません。またδ株に対しては、30〜70%程度の感染抑制効果しかありません。但し、重症化回避と死亡回避には80〜90%とたいへんに高い有効性を持っています。打っておけばとにかく死ぬことは避けられます。

 従って個々人の感染抑制には、社会的距離の確保が最も重要であり、換気を組み合わせることで相当程度感染防止できますが、COVID-19は、エアロゾルによって空気感染しますので*、煙草やお線香の煙のように長時間空中浮遊する粒子を遮蔽する為にとくに屋内では、高性能マスクが必須となります。ここが非常に重要なところです。飛沫対策では全く不十分です。

<*新型コロナはエアロゾル感染するか? 確定的な結論はまだないが、予防原則をもとに先見的対策を! 2020/04/25 井田真人 ハーバー・ビジネス・オンライン>

 しかしマスクは7days24hours(常時)着用できません。就寝時は外しますし、ものを食べるときも外します。ものを食べるときのマスクパカパカ(マスク外食)を本邦政府は推奨していますが、非科学的且つ極めて危険な行為で有害無益かつきわめて愚かです。従ってマスクは、社会的距離と換気を補完する位置づけとなります。

 社会的距離は、個々人で注意していても破綻することはままあります。またエアロゾル感染するために人が居なくてもウイルスが空中を漂っている可能性も十分にあります。従ってここは高性能マスクの出番です。

 国内では豊橋技科大の研究結果*、世界的には合衆国疾病予防管理センター(CDC)が公表しているように**、COVID-19感染対策には最低限不織布マスクが必要で、密着性改善のために不織布マスクの上からマスク押さえや布マスクで押さえつける二重マスクが強く推奨されています。

<*データから見るマスクの効果 豊橋技科大学>

<**Your Guide to Masks CDC 2021/08/13>

 そしてN95マスクは医療用資源として一般には使わないように求められています。

 マウスシールド、フェイスシールド、ウレタンマスク(スポンジマスク)は防御能力が皆無と言って良く、使ってはいけません無意味です。布マスクもエアロゾルに対する防御能力が殆ど無いため、使うべきではありません。

 筆者は、二重マスク(不織布マスクの上から布マスク等で押さえる)、KF94、KN95マスクを強く推奨しています。先ずはお手軽マスク強化法をCDCの記事から要約します。

◆残暑はまだまだ続く、KF94で快適・安全マスクライフ

 お手軽マスクアップグレイドには、不織布マスクの上から使い道のなくなった布やウレタンマスクで押さえつける二重マスクが良いです。しかしマスクを着用していると呼吸が暑苦しく、とくに二重マスクは顔に張り付くために汗でマスクが駄目になります。N95やKF94を含む不織布製マスクは絶対に濡らしてはいけない、濡らしたら捨てるほかないので、残暑厳しいこの季節、不織布マスクは使いにくいです。

 筆者は、KF94マスクを強く推奨しています。KF94は、Korean Filter 94の略で、韓国での医療・一般用高性能マスクです。もともと韓流ファンが導入していましたが、とても装着感が良く、快適且つ高性能なので筆者も今年3月から推奨しています。また、昨年春のマスク危機の際、日本医師会へ12万枚が中国より寄贈されたこと*でも知られています。

<*新型コロナウイルス感染症の防疫に資する高機能マスクの譲渡式を挙行2020/04/05日医on-line>

 筆者はいろいろ試してみましたが、装着した状態での軽作業が連続100分程度可能で、30分で息が苦しくなってしまうN95やKN95よりもずっと楽です。

 価格も韓国製のMFDS(食品医薬品安全処)許可品で一枚35円程度とお手軽で、汚損・破損しない限り1日使えます。一方で不織布マスクは、長くても四時間程度で要交換です。

 またKF94は、顔に張り付かないので、口元に空間があり、呼気が涼しく、肌荒れしにくいです。このため、はじめはお化粧が崩れないとして、女性の間で流行っていました。

 但し、KF94と称していてもMFDS許可品でない、KF94類似品が多くあり、これらは1枚20円程度と安いのですが、KN95の生地を流用するなどで呼吸がやや苦しく、また品質保証に難があります。韓国規格であるKF94は、MFDSによって厳しく監督されており、規格逸脱品には回収命令が実際出されていますし、偽物の製造販売には罰金が課されています。

 韓国規格のKF94は下記の特徴があり、逸脱しているものはKF94規格準拠ではありません。

1)韓国製である(Made in Korea)

2)MFDS許可品の表示が必ずある

3)一枚一枚個別包装(個包装)である

 KF94には、これら3つの条件を同時に満たしている必要があります。筆者が使っているKF94の写真を例示します。比較的珍しいブランドで、他にも沢山のKF94があります。実は筆者の使っているKF94は、使っている人が日本には殆どおらず、筆者はハングルが読めないので画像検索を駆使して調べたところMFDSの許可記録を見つけホッとしました。

 KF94は、N95にやや劣りますが、N95などのレスピレーター(呼吸器)と同様に着用者を守るために設計されており、着用後にユーザーシールチェックを行えば一般の実用上は十分な性能を発揮します。

 息苦しさもあまりなく、エアロゾル対策マスクなのに呼気が涼しくかなり快適と言えて、一度使うともう他のマスクに戻れません。

 なお、二重マスクやKF94、KN95であっても100%安全という事ではなく、あくまでウイルスが透過する確率を大きく下げるものです。δ株は、患者からのウイルス放出が在来株の数万倍ともされており、マスクだけでは危険です。マスクは、あくまで社会的距離の確保と換気を補完するものです。

◆類似品でも泣く必要は無い

 さて、間違えてMFDS許可でない類似品を買ってしまった人も多く居ると思います。実は筆者も見事に類似品を買ってしまいました。KF94類似品は、主に中国製ですがKF94の形でKN95の生地を使った中国の規格があるらしく、使い物にならないわけではないです。

 筆者は中国製のKF94類似品も使ってみましたが、ユーザーシールチェック後、密着感は高いです。しかし、やはりKN95の生地を使っているだけあってKF94に比較して息苦しく、軽作業は45分ほどしか出来ませんでした。

 防御能力は悪くないのですが、罰金や回収命令といった実効性のある規制があるわけではないので、その点不安があります。

 筆者は、MFDS許可品のKF94を実使用体験からも強くおすすめします。

◆ヒゲよさらば

 KF94やN95/KN95は、マスクが顔面に密着して着用者を保護します。その為マスクと干渉するヒゲがあっては、ヒゲからエアロゾルが出入りするので折角のマスクが台無しとなります。CDCがブログにてヒゲとマスクの干渉を説明していますので、ヒゲ自慢の方はヒゲをマスクにあわせるか、諦めて剃ってください。これは二重マスクでも言えることです。

 それでは皆さん、マスクをアップグレイドしましょう。

<取材・文/牧田寛>

―[コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」]―

【牧田寛】

まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

2021/8/31 8:53

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