綾野剛「残酷な作業だった」12年の連載を書籍化した理由と思い<「牙を抜かれた男達が化粧をする時代」インタビュー>

【モデルプレス=2021/08/30】8月30日に書籍「牙を抜かれた男達が化粧をする時代」をリリースする俳優の綾野剛(39)がモデルプレスのインタビューに応じた。月刊誌「+act.」(プラスアクト)で約12年にも及ぶ連載を書籍化した同書。「残酷な作業だった」というが、その思いとは?さらに、SNSでの表現についても語ってくれた。

◆綾野剛の書籍「牙を抜かれた男達が化粧をする時代」

綾野による「写真+文」で、毎回独自の世界観を掲示してきた月刊誌「+act.」における人気隔月連載「牙を抜かれた男達が化粧をする時代」。今回、綾野が撮り綴り続けてきた約12年にも及ぶ軌跡が単行本化された。

「その時の心情やコンディションが如実に表れている」と自身も評する連載内容を今敢えて自ら振り返り、過去の自分と向き合う「証言(解読)」として新たに収録。心象風景を露わにしたアートブックのような1冊の中には、初めて見せる綾野の真髄がほとばしっている。

表紙は気鋭の現代アーティスト・画家である佐野凜由輔氏が担い、この本のために描き下ろした綾野の肖像ZOOM「GO AYANO face」が本著を彩る。

◆綾野剛「牙を抜かれた男達が化粧をする時代」書籍化は「残酷な作業」

― 連載開始当初の12年前、連載を始めることに対してどのような心境でしたか?

綾野:船田編集長から連載を始めてみないかというお話をいただきました。初めての連載ですし、求めてくださったことに対して全力でお応えしたいという思いでした。

― 写真とともに、言葉自体のフォントの見せ方にも綾野さんの思いが込められているのでしょうか?

綾野:ニュアンスだけを伝えて、あとは船田さんとデザイナーさんにお任せしました。一人の景色というのは限界があります。そこからクリエーションしていくという意味では共作です。例えば大きい文字だと読みづらく、距離をとって読まないとその文字が入ってきません。近視するだけでなく、見つめてほしいというニュアンスなどを込めています。自分の中で熱を帯びたときこそ、一歩引いて世の中をみるということを、その文字の大きさに込めていたんだと思います。

― 今回、書籍として作品になるにあたり、綾野さんの気持ちはどのようなものでしたか?

綾野:残酷な作業でした。今回のお話は船田さんが編集長を勇退されるということで、連載は続けていきますか?と聞かれたところから始まりました。自分は船田さんにこの連載を始めるきっかけを、手を掴んでいただいた方なので、船田さんが辞められるタイミングで自分も幕を下ろすのが健全だろうと。辞めますと伝えたら、本にしませんかというお話をいただきました。この連載は船田さんと「+act.」と作ってきたもの。恩返しと言ったらおこがましいですが、敬意の形となるのではと思いました。

作業は残酷ですし、当然羞恥心もあります。「証言」の部分はどちらかと言えば解読に近い。「+act.」の読者の方々も同じ時間を共有しながら一緒に辿ってきたため、読者の方に対しても掘り起こす作業をさせてしまい、残酷だなという思いもありました。

だからこそ、どう形にするかは賢明に考えました。それができなければ、船田さんや読者のみなさま、僕自身も本という形にする必要がなくなるので、全力で向き合うところから始めました。本の潜在能力や魅力をどこまで引き出せるのか、どれほどの問題を抱えているものなのか、それぞれの繊細や乱暴なアイデアを全て受け止めてくれたのが船田さんやワニブックスさんです。お心遣いとクリエーションに対する姿勢には頭が下がる思いです。

― タイトル『牙を抜かれた男達が化粧をする時代』という言葉に込められた思いもお聞かせください。

綾野:当時の自分を揶揄しているといいますか、いつの間にか牙を抜かれて世を渡るだけの顔色という化粧を強いられているといいますか。その精神を忘れないようにしたんだと思います。どの時代にも存在したであろう象徴をタイトルにし、牙を獲り戻した男たちになるにはどうすべきか、ということは静かにあったのでしょう。当時の僕では抱えきれない問題を、自分の置かれている立場を明確にし、自分では背負いきれないタイトルが丁度いいのだろうと感じていたのだと思います。

◆綾野剛、12年の連載を振り返り…

― 今回改めて12年前の自分が書いたもの、撮ったものを見て、どう思いましたか?

綾野:12年前の僕からしたら余計なお世話ですよね。今の僕が今の感情で足すわけですから。「証言」でも書かれている通り、作品、役、スタッフ、キャスト、人を介して自分という人間が成長していますので、それに尽きます。そのときの自分に今の自分が言えることはなに1つありません。ですから「解読」や「証言」はどこまでもフィクションなのです。正直、手のつけようがなかったですね。

― そういった思いがあり、「証言」を新たに収録したと。

綾野:「証言」をつけたのは、1つの理由として本の厚みです。なにかマグマのように溢れているものを制御しない、又は、包み込むための厚みだと思っていただけたらと。それが最低限過去に対する筋といいますか。過去の自分ではなく、過去の自分に関わってくれた誰かのために、その厚みを生み出したかったのです。その当時の自分と向き合ってくれた数多くの人たちのことを想像しながら自然と厚くなっていきました。

― 「証言」で“だろう”という書き方をされていますが、綾野さんとしては自然というか、むしろそこにもこだわりがあるのかなと。

綾野:わかったように書けないんです。客観的に書いています。なぜなら、その当時の主観はそれぞれの1枚に入っているので、客観的に解説することによって、読んでくださる方々への寄り添いになると考えました。その当時の僕の文章をとても大切にしてくれている人もいるかもしれない。その人を現在の答えで壊したくない。

― 特に印象に残っている回はありますか?

綾野:基本的には今しか見てないといいますか。未来を見据えていない。その当時は今が常に極限だったのだろうと。そして夢を語っていないなと。

― インプットされたものをアウトプットするときに、大切にされていることはありますか?

綾野:現場でインプットとアウトプットを繰り返しています。基本的にインプットもアウトプットも現場でしかないから、こういう生き方しかできないのだろうと、性に合っているのだろうと感じます。ただ、表現する場所が増えたように思います。その代表格がSNSだと思うのですが、アウトプットと消費は紙一重です。SNSも1つのクリエーションとして向き合っています。僕は役者ですから、作品でアウトプットすべきだと思っています。役者として興味を持ってくださる方々からすると1番邪魔なものなので。だから作品となり得る方法を日々考えています。白黒にしている理由もそのひとつ。少なからず自分が撮った写真でクオリティが高いものをどう作品化し届けるかということを考えています。自分に届くお手紙があった時代に生きていますから、それが今はダイレクトメッセージで繋がっていると僕は全く思っていない。やっぱりお手紙が嬉しいですから、そこは変わらないですね。全ては作品を楽しみにしてくださっている方々のためと、作品のためなので、どんな表現の場所ですらクリエーションを諦めないという心構えです。

◆綾野剛にとって俳優とは?

― 綾野さんにとって俳優という職業とは?

綾野:生業であり、労働であり、自分の人生そのものです。

― この本を読み始めたとき、刺さるような言葉が多いなと思いました。この連載を始めた2009年ごろは、俳優という仕事に対して不安とかがあったのでしょうか?

綾野:いつだって不安定だと思います。だから今を誤魔化さない。唯一見れるのが今だから、そこに思いを馳せたい思いはありました。

― そんな中、綾野さんが主演を務めたドラマ「コウノドリ」の回は、優しさを感じたというか、今までの回とは違う印象を受けました。

綾野:自分にとってドラマの世界で育てていただいたチームですから。「空飛ぶ広報室」をはじめ、「コウノドリ」のチームはいつも奮い立たせてくださいました。土井(裕泰)監督含め、役者にしていただいた大切な存在です。現場に対するラブレターですね。

― すごく大きな作品だったことが伝わります。

綾野:自分にとって転機だったと思います。そして最大の転機はここからです。今こそ未来に向けて準備をしていきます。

― たくさんのお話ありがとうございました。

(modelpress編集部)

◆綾野剛(あやのごう)プロフィール

生年月日:1982年1月26日
出身地:岐阜県
身長:180cm
血液型:A型

2003年に「仮面ライダー555」で俳優デビュー。2011年放送の「Mother」(日本テレビ系)で注目を集め、2012年NHK朝の連続テレビ小説「カーネーション」で認知度を上げた。近年の出演作は、映画『パンク侍、斬られて候』(2018年)、『楽園』(2019年)、『影裏』(2020年)、『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』(2020年)、『ヤクザと家族 The Family』(2021年)、ドラマ「MIU404」(2020年、TBS系)、「恋はDeepに」(2021年、日本テレビ系)など。

◆綾野剛『牙を抜かれた男達が化粧をする時代』

2021年8月30日発売

佐野凜由輔・作 ZOOM「GO AYANO face」アートピースページ収録

【ハードカバー・愛蔵版/限定生産】
A5判・ハードカバー上製本・全372ページ

【電子書籍版(注意:佐野凜由輔・作のアートピースページ無し)】
全296ページ

【衣装クレジット】
ジャケット…アン ドゥムルメステール
パンツ…アン ドゥムルメステール

【スタッフクレジット】
スタイリスト:申谷弘美
ヘアメイク:石邑麻由

【Not Sponsored 記事】

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  • モデルプレス

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