「このままじゃ、婚約解消…?」ようやく結婚まで漕ぎ着けたはずの29歳女が、絶望したワケ

結婚前の、男女の葛藤。

「本当にこの人と結婚していいの?」

大好きなはずなのに、幸せなはずなのに…。そんな想いとは裏腹に、不安は募るばかり。

カレンダーを見ると“結婚予定日”まで残りわずか。そんなタイミングで発覚した、改姓トラブルや妊娠・出産に関するアレコレ…。

2人は無事に危機を乗り越え、幸せな結婚を迎えられる?

◆これまでのあらすじ

桃香は、先日受診したブライダルチェックの結果を、ずっと陽介に言えないでいた。

悩んでいた桃香は、母親の「自分が選んだ人を信じなさい」という言葉に勇気をもらい、陽介にポリープがあったことを伝えたが…?

▶前回:「早く子どもが欲しいなんて言わないで…」29歳女が、婚約者との子を授かることに不安を抱くワケ


「いきなりこんなこと言って、ごめんね…」

やっとの思いで、ブライダルチェックの結果を陽介に伝えることができた桃香。リビングのソファに並んだ2人の間には、長い沈黙が流れている。

― もしも今度の精密検査でもっと悪い結果が出たら、婚約解消とかになるのかな。

そんなことを桃香が考えていると、やっと陽介が口を開いた。

「…気づけなくてごめん。桃香がツラい思いをしてるのに、早く子どもがほしいだなんて。俺、最低だな」

陽介は何度も謝りながら、桃香の肩を抱き寄せる。

「本当にごめん。俺、桃香のこと大好きなのに、傷つけてばっかりで情けないわ」

そう言う陽介の声は、少し震えているような気がした。

「陽介は全然悪くないから、もう謝らないで…」

彼に対する申し訳なさと、優しい言葉への感謝の気持ちが募り、桃香の瞳から涙が溢れだす。

その様子を見て、まるで小さい子をなだめる母親のように、陽介は桃香の背中をポンポンと叩いた。

しばらくして落ち着いてきた桃香は、ずっと気になっていたことを尋ねてみることにした。

事実を知った陽介に、桃香が聞きたかったこととは?

「陽介。もしも私、子どもができにくい体だったら…」

それだけ言うと、桃香は言葉に詰まってしまう。その姿を見た陽介が、驚くべき発言をしたのだ。

「俺、ずっと子どもがほしいって言ってたけどさ。子どもがいるかどうかよりも、桃香と一緒にいることの方が大事だから。この先もずっと、桃香と生きていければそれでいい」

なんと陽介は、桃香の父が母に言ったことと同じようなセリフを口にしたのである。

― 父親に似た人を好きになるって、本当なのかな?

そんなことを思い、桃香の頬は自然と緩んでしまった。

「俺、なんか変なこと言った…?」

すると照れたように頭をかきながら、陽介は桃香の顔を覗き込む。

「ううん、ありがとう。私も陽介とずっと一緒にいたいなって思ったの」

― お母さんの言った通り、勇気を出して打ち明けて良かった。

そして翌日。陽介の言葉に背中を押された桃香は、産婦人科に予約の電話を入れたのだった。



そして迎えた、検査当日。2人一緒に産婦人科へと向かった。

「仕事、休んでくれてありがとう。付き合わせちゃってごめんね」

産婦人科の前まで送ってくれた陽介には、向かいのカフェで待機してもらうことにした。付き添うと言ってくれたが、このご時世で患者以外の病院への立ち入りを制限されているからだ。

「桃香。これだけは覚えておいて。今日の結果がなんであれ、俺は桃香から離れないよ」

「うん、ありがとう。行ってくるね」

受付を済ませて周りを見てみると、大きなお腹をしている同年代の女性が、何人も診察を待っていた。

そんな幸せそうな妊婦の近くに座るのは、少し気が引ける。桃香は仕方なく、一番端の離れた椅子に腰掛けた。

20代前半の頃は、いつか結婚したら自然と子どもが生まれて、幸せな家庭を作るものだと、桃香は漠然と思っていたのだ。

しかし実際は、結婚したいと思える相手に出会うまでも一苦労。

さらに妊娠や出産、不妊治療についての問題に直面し、越えなければならないハードルの多さに愕然とした。

診察を待つ桃香は、緊張と不安で震える両手をギュッと握りしめる。そのとき、ちょうど看護師から声を掛けられた。

「雨宮さん、診察室へどうぞ」

― 少し怖いな…。けど、どんな結果が出ても、陽介となら乗り越えられる。

勇気を振り絞って、桃香は診察室へと足を踏み入れた。

問診と検査の流れを説明されたのち、女医から検査台へ座るように促される。何事もないことを祈りながら、桃香は覚悟を決めて検査台に腰掛けた。

その後、検査は10分ほどで終わり、カーテンの向こうにいる女医が声を掛けてくる。

「雨宮さん、もう着替えていいですよ。結果は、隣の部屋でお伝えします」

別室に移動した桃香が、医師から告げられた結果とは?

座り心地の悪いパイプ椅子に座って待っていると、女医が笑顔で入ってきた。

「検査の結果、経過観察で大丈夫です。念のため病理検査はするけど、良性の可能性が高いので、そんなに心配することはないです」

どうやらポリープだと思われたものは、経過観察でも問題ないほどの大きさだったそうだ。

これからも定期的に検査する必要があるものの、その言葉に桃香はホッとし、小さく笑みを浮かべた。

「良かった…。ありがとうございました」

会計を済ませると、桃香は急いでカフェへと向かった。すると席に着くや否や、陽介が前のめりでこう尋ねてきたのだ。

「検査お疲れさま。それで…。結果はどうだったの?」

「そこまでひどくないから、経過観察ってことになったよ。心配かけてごめんね」

桃香から診断結果を聞いた陽介は、全身の力が抜けたように、椅子の背もたれに体を預けた。

「はあー。良かった」

「心配してくれて、ありがとうね。って、これ…!」

ふとテーブルに視線を落とすと、陽介のスマホ画面が目に入ったのだ。その内容に桃香は驚き、思わず声をあげてしまった。

「実は俺も、ブライダルチェック受けてみようかなって思って調べてたんだ」

「えっ、陽介が!?」

「だってさ、不妊の原因って女性だけの問題じゃないらしいし」

どうやら桃香を待っている間に、不妊について色々と調べてくれていたらしい。

「ネットを見てて思ったけど、幸せな家庭って、子どもの有無は関係ないよな」

「陽介、あんなに子どもほしがってたのに…。そんなこと言うようになるなんてビックリしたよ」

「うーん。まあ子どもは授かりものなんだし、いない間は2人の時間を楽しむのもいいなって」

陽介から飛び出したまさかの言葉に、桃香は力強くうなずいたのだった。


そのとき、陽介のスマホにどこかから電話が掛かってきた。

「あれ、電話だ。…ちょっと急ぎの用事かもしれないし、出てくるから待ってて」

それだけ言うと、慌てたように店の外へ出て行ってしまった。

― なんだか慌てていたけど、どうしたんだろう?大丈夫かな。

しばらくして、電話を切った陽介が帰ってきた。しかし、なぜだか魂が抜けたような顔をしている。

「ちょっと陽介、大丈夫?なんだか顔色悪いよ」

その言葉に「ああ…」と適当な返事をした陽介は、フラフラと椅子に腰掛ける。

「桃香、驚かないで聞いてほしいんだけど…」

そして陽介から聞かされた電話の内容に、桃香はただただ驚くことしかできなかった…。


▶前回:「早く子どもが欲しいなんて言わないで…」29歳女が、婚約者との子を授かることに不安を抱くワケ

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突然、陽介に掛かってきた電話。その内容とは…?

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