「メダルの真の価値は心の中に」東京五輪の銀メダリスト、自国で重病に苦しむ乳児のためメダルを競売に(ポーランド)

東京オリンピック・陸上女子やり投げ競技でポーランドのマリア・アンドレイチク選手(Maria Andrejczyk、25)が見事銀メダルを獲得した。その数日後の8月11日、マリア選手は自国で心臓疾患の「総肺静脈還流異常症(TAPVC)」に苦しむ生後8か月のミロシェク・マリサ君(Miloszek Malysa)の治療費のために自分の銀メダルを競売にかけることをFacebookで公表した。

ミロシェク君は米国スタンフォード大学医療センターで緊急に手術を受けなければならず、約150万ズウォティ(約4200万円)の渡航費と治療費が必要だった。『New York Post』によると、その半分はミロシェク君の家族が募金活動ですでに調達しており、マリア選手は残りの半分を補うために自分のメダルを役立てようと思ったようだ。

実はマリア選手、自身も2018年に骨のがんである骨肉腫に苦しんでいた過去があった。マリア選手は手術を受けたもののその後の化学療法は行わず、翌2019年には東京オリンピックに向けてトレーニングを再開していたという。そんな必死の思いで手に入れた銀メダルをミロシェク君のために役立てようと思った彼女は、地元テレビ局にこのように語った。

「メダルの真の価値は常に心の中にあります。メダルは単に物体でしかありませんが他の人にとっては大きな価値を生むのです。この銀メダルはクローゼットで埃をかぶってしまう代わりに誰かの命を救うことができると思いました。だから病気で苦しむ子を救うためにオークションに出品することにしたんです。」

そんなマリア選手の思いが通じたのか、彼女の銀メダルは地元の大手コンビニエンスストアチェーン「ジャプカ(ŻABKA)」が、12万5000ドル(約1370万円)で落札した。これによりミロシェク君はアメリカで手術を受けることが可能となり、喜び勇んだマリア選手は「オークションの落札者が決定しました!」と同社のFacebookをタグ付けした。

ところが同社はのちに銀メダルに込められたマリア選手の思いを知ることとなり、落札金額はそのまま支払うものの銀メダルはマリア選手に返還することにしたそうだ。同社のFacebookには「我々は美しく非常に高貴な行為に感動させられました。東京オリンピックで獲得した銀メダルはマリア選手の手元にそのまま残してもらうことにしました」と綴られていた。

またマリア選手のInstagramには「あなたの心は真の金メダリストだ」「史上最高のやり投げ選手だ」と称賛の声が集まっており、多くの人に感動を与えたようだ。

画像は『Maria M. Andrejczyk 2021年8月16日付Instagram「Medal, który wystawiłam w tamtym tygodniu na rzecz Miłoszka wylicytowała」、2021年7月13日付Instagram「To już ostatnia prosta do Tokio」』『New York Post 2021年8月18日付「Polish Olympian sold silver medal to raise money for infant’s surgery」(Siepomaga)』のスクリーンショット

(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)

2021/8/21 6:00

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