借金500万円男、1万円を手にパチンコへ「挑戦したという言い訳が欲しかった」

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―[負け犬の遠吠え]―

ギャンブル狂で無職。なのに、借金総額は500万円以上。
それでも働きたくない。働かずに得たカネで、借金を全部返したい……。

「マニラのカジノで破滅」したnoteが人気を博したTwitter上の有名人「犬」が、夢が終わった後も続いてしまう人生のなかで、力なく吠え続ける当連載は59回目を迎えました。

 今回はひっそりとパチンコで1万円負けたお話です。


◆久しぶりの再会は突然に

「○号車の兄ちゃんじゃねえか」

都内某所のパチンコ屋の前を通りがかった時、懐かしい顔に声をかけられた。名前は知らない。僕は彼の輪番の番号と、過去しか知らない。

「あ、ゴミ拾いの時の」

「最近仕事してんのか?」

「この前まで現場入ってました。今は何もやってないんですけど」

 仕事をやっている、と言うと「紹介してくれ」という会話が始まってしまう。どの道、今この瞬間は働いていないが、僕も元々紹介でしか仕事をしていない身分なので、「上」に断られた時に気まずい。保証できない以上は踏み込まないのが正解だ。最近やっとわかった。

 金がない者が社会構造に白旗を挙げる時は、同じく金がない仲間にすがるか、死ぬ。仕事の話をしたり、思い切り悪いことをしようとしているうちはまだ大丈夫だ。

 世間にとっていじらしく可哀想な弱者は、手を差し伸べても差し伸べなくても死ぬ。そういう状況を見てようやく社会は「助けてあげたい」と言う。そこまで追い込まれた姿を見てようやく赦すのだ。自分と似た大きな生き物が死ぬのは可哀想だから。

「そうか〜、俺にも仕事紹介してくれよ」

 この人は元公務員で、喧嘩のしすぎでクビになり、その後も荒い気性のせいで何度も刑務所に入っている。と言われたことがあるので、そう覚えている。仲良くなればいい人なのは間違いないのだが、いかんせんクセが強い。

「まだ配信の投げ銭してます?」

「当たり前だろ、他にやることがないんだから」

 かつて同じ現場で働いていた時、バスを降りてから毎回もらえる8000円を、彼はライブ配信の投げ銭で使っていた。Youtubeでもなく、インスタライブでもなく、聞いたことも無い配信サイトにハマっているらしい。

◆彼がどうやって生きているのかは知らない

 彼がどうやって生活しているのかはわからない。家はないらしい。リュックに入りきらない荷物をママチャリのカゴに詰め込み、東京都内の炊き出しなどに顔を出している。最近新宿に炊き出しが増えたと言っていたが、「そうなんですね」と適当に相槌を打った。彼らの情報網はインターネット並みに広く、平等だ。

 黙っていれば確実に食べられるのに、思わず友達に喋ってしまう。女子中学生の「誰にも言わないでよ」みたいな口伝の波に乗って、全く知らない人にも知れ渡る。

 生活保護は受けていないらしいが、話せば話すほどに金回りの辻褄が合わない。
 
 が、追及はしない。僕も彼も、生活を極端に追及されることを嫌う人種だ。そういう体裁を求める社会の目に留まらないように生きてきた。

「暑いなあ、じゃあね」

 そう言って重心が下がった自転車を転がす姿を見送った。そういえば連絡先も知らないのに仕事の紹介も何も無いだろう。

「仕事紹介して」

 は、僕たちにとっての

「How are you?」

 みたいなものなのかもしれない。日本人がよく使う「I’m fine. And you?」は海外ではあまり使わないらしい。

◆後悔は金のことばかり

 一昨年の8月、僕はフィリピンで1か月間ホームレスをしていた。2年も経った実感がない。

 去年の8月、僕は職安でホームレスの人たちと仕事をしていた。1年も経った実感がない。

 26歳になり、27歳になり、今年28歳になる。単調な仕事ばかりしていると1日は長いが、人生は短い。

 人生を振り返った時、「あの時勉強していれば……」と何年分も取り戻そうとはせず、まずは昨日、先週、1か月前の失敗を取り戻そうとする。携帯を落としてやむを得ず払った修理代、成り行きで誘われて行った飲み代。

 金に執着がないと言っておきながら、直近の後悔は全て数千円から2万円までの金のことばかりだ。

◆そしてパチンコ屋に入る

 さっき会った人が見えなくなるのを待ち、久しぶりにパチンコ屋に入る。こうしたいとか、ああなりたいとか、そういう願望は一切ない。なんとなく自分の中で必要になったのだ。

「失敗したけど、挑戦はしたから仕方がない」

 という言い訳が。

 去年ほどのモチベーションを持たずにパチンコ屋に入った。「最近ちゃんと働いてるね」と言った全ての人の目につかないよう、周囲を注意深く観察し、見覚えのある顔がない事を確認する。運命は気持ちで変わるから負ける未来ははっきり見えているが、「仕方がない」が欲しいから仕方がない。

 久しぶりに惰性でパチンコを打って負ける人間の店内循環パターンだが、まずは大体端にある海物語の島から順番に練り歩く。

「久しぶりに海」はジジイのやることで、若いうちは知ってるアニメのタイアップや珍しい仕組みの台がないかを確認する。海物語と新台は大抵の場合離れて置かれているので、店内を順番に見た時に少しずつ気持ちを盛り上がらせるために海物語からスタートする。お察しの通り、僕は1番気に入ったおかずを最後の一口にするタイプだ。

 気に入ったおかずがなければ、刺激の強いものを選ぶ。ここ数年は、当たれば少なくとも2万円近く出てくる一発台、特に「天龍」を選ぶことが多い。難易度の高い台ほど「挑戦した感」が増し、失敗した時の言い訳として強固なものになる。

 80%勝てる小さな勝負よりも、80%負ける大きな勝負で負けた方が勇ましい。負ける相手は自分ではなく、コントロール出来ないほど強大な運命だ。

◆失敗したから仕方がない

 財布から1万円を取り出す。思い返せば、今回パチンコを打つ意欲の源泉は「潔く失敗したから満足いかない現状は仕方がない」という言い訳を作るためだ。この衝動は思いがけないタイミングで今も時々やって来る。

 毎日働いても返済で消えていく金、見ないようにしても視界に入って来る生活の限界ライン、そんな環境に対して「金がなくても、なんくるないさ〜」の精神で目を塞いだまま笑っているのにも回数制限があり、たまにこうして理由づけをする。

◆その結果は言わずもがな……

 1万円が機械の中で溶かされていくのを見る数十分の間は何も考えられなくなる。今まさに無駄遣いをしているというのに、頭の中では早く終わらないかな〜という漠然とした言葉だけが泳いでいる。

 勝負の顛末は言わずもがなで、リフレッシュされた賢者モードの状態でこの記事を書いている。

 たまのストレス発散でかかるのが1万円なら安いものだろう。

 次に魔法が切れるのは3か月後くらいかもしれない。

文/犬

―[負け犬の遠吠え]―

【犬】
フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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  • 8/13 15:53
  • 日刊SPA!

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