海外の新車販売が好調、日産が3年ぶりに黒字転換も「楽観視」できず...... 不安材料少なくなく

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日産自動車の今期(2022年3月期)の連結最終(当期)損益が、これまでの600億円の赤字予想から一転、600億円の黒字になる見通しになった。

米国や中国で新車販売が好調に推移している。前期実績は4486億円の赤字だったから、大幅な上方修正だ。黒字に転換すれば3年ぶり。ただ、半導体不足やコロナ禍による部品供給不安、原材料価格の高騰など不安材料も多く、先行き楽観はできない状況が続く。

内村社長に自信「構造改革が着実に進んでいる」

日産は2021年7月28日、2021年4~6月期決算を発表し、その席上、通期予想も修正した。まず、21年4~6月期決算は、売上高が前年同期比71.0%増の2兆82億円、営業利益は756億円の黒字(前年同期は1539億円の赤字)、純損益は前年の2855億円の赤字から1145億円の黒字に、それぞれ転換した。

通期見通しは、売上高が従来予想の9兆1000億円から9兆7500億円(前期比24.0%増)に、営業損益も従来予想のゼロ(収支トントン)から1500億円の黒字(前期は1506億円の赤字)に、それぞれ上方修正した。

内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は、決算発表会見で「構造改革が着実に進んでいる」と述べ、業績の回復に自信をみせた。

好調を支えるのは海外での新車販売の回復だ。4~6月の新車販売は世界で前年同期比63%増の104万8000台を記録。中国で同71%増の35万2000台、北米も同70%増の37万8000台(うち米国のみは68%増の29万8000台)となった。

採算性も改善している。米国では値引き販売のためメーカーが販売奨励金(インセンティブ)を負担するが、調査会社によると、6月の1台当たりの奨励金は3028ドル(約33万円)と前年より1800ドル以上圧縮されるなど、改善に向かいつつある。

通期の営業損益を上方修正した要因を詳しく見ると、従来見通しと比べ、原材料価格の高騰が350億円押し下げるものの、1台当たりの価格上昇などが1050億円、円安が800億円、それぞれ利益を押し上げるとみている。通期の販売台数の目標は440万台で据え置いており、収益改善が利益アップの主因といえる。

営業黒字は事前の市場予想が1000億円前後との見方が多かったことから、見通しの上方修正は「ミニサプライズ」となり、29日の東京株式市場での株価は一時、前日比56円30銭(9%)高の650円まで上昇。

ただ、2月の年初来高値664円には届かなかった。その後は、決算発表前の500円台からはやや高いものの、市場全体の不安定な動きにも押され、600円台で推移している。

半導体不足にコロナ禍での工場停止、原材料の値上がり......

市場の反応が微妙なのは、日産の先行きを、もう一つ強気にみられないからだろう。まず、販売面では「お膝元」の日本の国内市場で勢いがないことが不安材料だ。

4~6月の販売実績は前年同期比7%増の9万台にとどまった。欧州の9万1000台と同レベルだが、伸び率は欧州(同69%増)の後塵を拝した。アシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)は、

「半導体不足で軽自動車が供給不足となったが、ノートなど登録車の販売が好調で、全体を相殺した」

との見方を示したが、不安は尽きない。

その半導体の供給不足をどうか――。日産は当初の生産計画に対して4~9月に50万台を減産するとしており、国内工場の稼働を一時停止した。年度後半に半分を取り返すとして、従来どおり、半導体不足に伴う減産は年間25万台との見通しを据え置いたものの、6月単月の中国販売は16%減とした。市場全体(12%減)よりも減少幅が大きくなったのも、半導体不足による減産が響いたものだ。

半導体に加え、東南アジアの部品産業で新型コロナウイルスの感染拡大を受け、操業に影響が出ていると伝えられる。グプタCOOは決算発表後、ロイターの取材に対して、半導体不足については、悪影響は緩和されるとの見通しを示したものの、別の部品調達の制約については、「誰もこの先のことはわからない」と語っている。

さらに、原材料の価格上昇もある。なかでも高騰が目立つのが、車載電池に使うレアメタル(希少金属)で、リチウムは指標となる中国での価格が1年で2倍以上になった。コバルトも8割高くなっている。コスト増が想定の範囲内に収まるかは不透明だ。

日産は世界で2020年5月から21年末までに合計で12車種の新型車投入という計画を進めている。機会ロス(販売の機会を逃すこと)がないよう新車を順調に生産できるかが業績を左右するだけに、半導体や原材料の調達がカギを握っている。(ジャーナリスト 済田経夫)

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