映画『子供はわかってあげない』 個性的だけど愛おしいキャラたちに囲まれたホンワカ系青春ドラマ

拡大画像を見る

人気漫画家・田島列島の長編デビュー作を、『南極料理人』の沖田修一監督が実写映画化した『子供はわかってあげない』(8月20日公開)。水泳部員の女子高生が意外な成り行きで体験した日々を描いた青春ストーリー。ちょっとヘンだが魅力的なキャラが織り成す人間ドラマのあらすじと見どころをご紹介しよう!

『子供はわかってあげない』あらすじ(ネタバレなし)

🄫2020 「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

高校2年生で水泳部員の美波(上白石萌歌)は、水泳の成績は優秀なものの、「タルンドル朔田」の異名を持つほどのマイペース人間。そして、緊張がピークに達すると泳ぎながらでも笑ってしまう不思議な習性の持ち主。母の由起(斉藤由貴)は再婚したため、今の父親の清(古舘寛治)とは血のつながりはないものの、アニヲタの清とは実の父娘のように気が合い、特にテレビアニメアニメ『魔法左官少女バッファローKOTEKO』には一緒にハマっている。幼い弟も含めた、平凡だが幸せな4人家族だった。
ある日の練習後、美波は校舎の屋上でKOTEKOの絵を描いている男子生徒を発見する。同学年の書道部員・昭平(細田佳央太)だった。美波に負けないぐらいマニアックなKOTEKOファンの昭平と即座に意気投合した彼女は、レア映像を見せてもらうため昭平の家に遊びに行く。しかし、そこで美波は、幼い頃に由起と離婚して以来会ったことがない実の父から数年前に突然送られてきたものと同じお札を発見する。昭平によれば、書道家である彼の父が新興宗教「光の匣」の教祖の依頼を受けて代筆しているものだという。「探偵を雇って父親を捜したい」と言う美波に、昭平は兄の明大(千葉雄大)が探偵をやっていると告げる。
性転換手術をしたため親から勘当されている明大は、美波の依頼を引き受ける。だが調査の結果、何と美波の実の父・友充(豊川悦司)は「光の匣」の教祖を務めた後、海辺の町で整体師をしていることが分かった。ちょうど水泳部の夏合宿で数日間家を空けることになっていた美波は、思い切って友充に会いに行くが…。

🄫2020 「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

おばあちゃんの次はJK?「あるある」の描写の上手さと「受け容れる」ことの大事さ

🄫2020 「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

沖田の作品としては『おらおらでひとりいぐも』(2020)に続くものだが、実はコロナ禍の影響で公開順が入れ替わってしまい、本来なら本作の方が4ヶ月ほど前に公開される予定だった。その『おらおらでひとりいぐも』では、夫に先立たれた老女の生活と心情がリアルかつユーモラス、そしてファンタジックに描かれていたが、今回は「十代あるある」の描写が実に丁寧な青春ものになっている。全編にわたって美波の会話シーンでは長回しがたびたび使われているが、特に注目したいのが、昭平との最初の出会いの後、二人が屋上から1階まで『KOTEKO』の話で盛り上がりながら下りて来る様子を約2分間のワンカットで描いた部分。本当にただの『KOTEKO』話だけなのだが、これで二人の心が一気に接近していったのが感じられるし、結局また3階まで戻らなければならないのに昭平が「ま、いいか」という感じで一緒に下りてきたのは「時間と体力を無駄遣いしがち」という「青春時代の恋愛あるある」を象徴的に描いたものだ。さらに、後半の重要なシーンにもリンクする作りになっていて、この作品が丁寧に計算された構成であることも分かる。『おらおらで』と同様、アニメを大胆に活用し意表を突いた演出も行なわれているが、これも奇をてらったわけではなく、映画の重要なパートとしてきちんと機能している。
基本的には青春ものと言えるが、親子の絆など様々な要素を巧みに融合させていて、若者だけでなく親の世代など幅広い層の共感を得られる映画に仕上がっている。例えば、長年会っていなかったのに会った途端に(微妙にズレた)父親風を吹かせたり、娘に似ていると言われた途端に機嫌がよくなる友充の「娘を持った父親」バカぶりは、笑わせながらも(特に同じ境遇の父親など)親の世代なら「分かる!」と思ってしまうところだ。美波にとっては非常に劇的な出来事の連続なはずなのだが、まるで夏休みの絵日記のように淡々と、そしてほのぼのとした雰囲気でいっぱいだ。
そのおかげで観終わった時の清々しさは格別だが、それは美波をはじめ登場人物のほとんどが、ちょっと変なところがある個性派揃いだが、みんな人間味あふれる愛すべきキャラとして描かれているからだろう。しかも、登場人物たち同士がお互いを受け容れ、そんな彼らを映画の作り手たちも受け容れることで、観ている我々も彼らを受け容れてしまう。これこそが、この映画を観て感じる心地よさのようなものの最大の要因かも知れない。

🄫2020 「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

キャスティングの妙が映画の好感度をさらにアップ

🄫2020 「子供はわかってあげない」製作委員会 🄫田島列島/講談社

このような人間ドラマの充実は、もちろん適材適所に配役された出演者たちの好演の賜物だ。
上白石の美波からして、独特のキャラを違和感なく演じてまさに適役。ちなみに、本作の撮影の頃、彼女は大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の前畑秀子役など水泳選手役が続いていて、役作りのためにアスリート体型に肉体改造していた。
一見頼りなさげだが骨があり、「習字の先生」もきちんとこなすしっかり者の昭平役の細田、モデルから戦隊ヒーローを経てブレイクしたという「最近のイケメン俳優の出世コース」をたどりながらも持ち前の演技力で場をさらう快演を披露した明大役の千葉もよい。清の人の良さをサラリと体現する古舘など、脇役に至るまで充実している。
そして何より、胡散臭さと人間味が同居した友充役の豊川と、天然スレスレの大らかさで美波を見守る由起役の斉藤の個性の活かし方はお見事。ちなみに、斉藤は第1回のファイナリスト、上白石は第7回のグランプリと、東宝シンデレラ出身者同士で母娘に扮している。

ヒロインの恋と成長、親子の絆…。さまざまなドラマを詰め込みながらも、笑えて適度にジーンと来る。甘酸っぱくて清々しい、まさに「大切な夏の思い出」と呼びたくなる好編だ。

関連リンク

  • 8/9 21:01
  • 映画board

スポンサーリンク

記事の無断転載を禁じます