【勝負の分かれ目 エルムS】松田騎手が武器を引き出し、スワーヴアラミスが重賞2勝目
8年ぶりに函館で行われるエルムステークスのゲートが開いた。
トップウイナーが仕掛けてハナに立ち、ヴェンジェンスがつづく。内を進む1番人気のアメリカンシードは逃げる可能性もあると見られていたが、スタンド前でクリストフ・ルメールが手綱を引き、3番手の内におさまり、1、2コーナーを回って行く。
松田大作が乗る4番人気のスワーヴアラミスは、アメリカンシードをマークするように4、5番手を進んでいる。
「ブリンカーを初めてつけたのですが、それがレース中に利いていた感じはありました」
松田はそう振り返ったが、道中もずっと手が動いていた。
先頭から最後尾までは12馬身ほどか。
トップウイナーが先頭のまま3コーナーに入って行く。
アメリカンシードは2馬身ほど後ろの内。
スワーヴアラミスは、さらに1馬身半ほど後ろにいて、松田のアクションが大きくなっている。外からソリストサンダーに被せられそうになったが、松田は引かず、激しく追いつづけて4コーナーを回り、直線へ。
「ああいう形になると思っていました。どこかで外に出さなければならないのですが、3コーナーで出すことができました」と松田。
勝負どころで引かなかったスワーヴアラミスの前は綺麗に開いていた。
松田は豪快に手綱をしごき、右ステッキを入れながらスワーヴアラミスを叱咤する。外からオメガレインボーが併せてきたが、オメガが伸びると、スワーヴはそれ以上の脚を使って抜かせない。
スワーヴが勝ち、オメガが2着だった前走のマリーンステークスと同じような形になった。こうなっては分が悪いとわかっていたのだろう、オメガの横山和生は右ステッキを入れながら手綱の操作でスワーヴから馬体を離そうとする。
内のスワーヴと外のオメガの激しい叩き合いが決着。前走と同じく、競り合いを制したのはスワーヴだった。
スワーヴアラミスにとって、これが藤岡康太が騎乗した昨年のマーチステークス以来の重賞2勝目となった。
「ズブい馬なので、追いつづけないといけないのですが、人間の指示に最後まで応えてくれる。いいところは、バテないしぶとさです。ほかの馬が止まっても止まらない。そういう強みを生かせたと思います。もっと一緒に成長していけたら嬉しいです」
そう話した松田は、これが5戦連続でのスワーヴとのレースだった。
よく知るパートナーのよさを全力で引き出した、迷いのない好騎乗であった。
(文:島田明宏)