【アジア最前線:タイ #13】後味の悪い幕切れを迎えた“西野タイ”

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隔離期間中に契約解除、後味の悪い解任劇


 7月29日、タイサッカー協会はタイ代表を率いてきた西野朗監督の解任を発表した。2019年7月に同国代表史上初となるアジア出身の外国人指揮官として、A代表とUー23代表の兼任監督に就任。約2年間にわたって続いた「西野タイ」は、コロナ禍の中で幕を閉じることとなった。

 任期としては約2年間続いたが、その半分以上の時間はコロナ禍によってまともな活動を行うことができなかった。パンデミックが始まった昨年は、9月までA代表の活動を行うことができず。10月にようやく国内組を招集しての国内合宿が行われたが、2022 FIFAワールドカップ カタール・アジア2次予選や東南アジア選手権(AFFスズキカップ)などの大会はすべて延期となってしまった。

 ワールドカップ・アジア2次予選のラスト3試合は、今年6月にUAEで集中開催された。しかし、タイ代表は直前の国内合宿でクラスターが発生し、予定どおりの調整を行うことができいまま決戦に臨むこととなってしまった。日本の出入国にも厳しい制限が設けられている状況であったため、Jリーグ組のDFティーラトンは代表を辞退。チャナティップやティーラシンらの主力もケガで招集することができなかった。

 コンディション面もメンバーもベストには程遠い状態で臨んだUAEでの3試合は、1分け2敗という不本意な戦績で2次予選敗退が決定。2大会連続での最終予選進出に期待がかかっていたタイサッカー界の落胆は大きかった。監督就任直後にスタートしたワールドカップ・アジア2次予選では、ホームで格上のUAEを下すなど当初は現地で高い支持を集めていたが、2次予選敗退によって批判的な声が高まり、西野監督の進退問題に発展した。

 真相は定かではないが、タイサッカー協会はUAEから直接日本に帰国した西野監督と連絡が取れない状況にあることを現地メディアを通じて発信していた。一方で西野監督は日本から毎日のように連絡を取り合っていると発言するなど、不可解な状況に。そんななか、西野監督は7月20日にタイに再入国。14日間の隔離期間中に解任が発表されるという後味の悪い結末となってしまった。

パンデミックによって幕を閉じた「西野タイ」


 新型コロナウイルスのパンデミックは世界中の国々に影響を与えている。しかし、代表合宿でのクラスター発生やコロナ禍の影響による主力選手の代表辞退などがあったタイは、とりわけ大きな影響を受けた国の一つと言えるかもしれない。

 現在、東南アジアでは新型コロナウイルスの急激な感染拡大が続いている。タイも例外ではなく、新規感染者が連日1万人を上回っている状況だ。昨季に急きょ年をまたいでのシーズンに変更されるという大幅な変革があったタイリーグは、2021ー22シーズンとして行われる今季も開幕日が延期に。当初は7月31日に開幕の予定となっていたが、感染者の急増で8月13日に延期されることが決定。さらに、感染拡大が止まる気配がないことから、9月3日に再延期されることが発表されている。

 国内リーグの開幕延期によってタイ代表の活動にも影響が出ることは確実だ。日程が過密になるため国際Aマッチデーにもリーグ戦を消化していくため、年末に開催される東南アジア選手権以外の代表活動は行われない見込み。もともとは「AFFスズキカップ2020」として昨年に開催予定だった東南アジア選手権も延期に次ぐ延期となっており、同地域のパンデミックの現状を考えれば今年12月の開催も不確実な状況だ。

 仮に西野監督が続投となっていたとしても、今年もまともな代表活動は行うことができなかったに違いない。東南アジア選手権が予定どおり開催されたとしても大会直前の招集で臨むことになり、契約期間であった来年1月までに指揮官への正当な評価を下せる状況にはなかったと言える。「西野タイ」の挑戦は、コロナ禍によって終焉を迎えてしまったと言っても過言ではないだろう。

文=本多辰成
  • 8/5 17:50
  • サッカーキング

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