タピオカブーム火付け役の今。「フルーツティー」戦線が激化中

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◆若者たちの「タピオカ」ブームは賞味期限切れ

 夏の暑い時期には、どうしても冷たい飲み物を口にしたくなるもの。スカッと爽快感を味わえる炭酸飲料や、ひんやりと冷たいスムージードリンクなど色々な選択肢があるだろう。

 そんななか、ブームの最盛期を迎えていた頃に比べ、下火になっていると言われるのが「タピオカミルクティー」だ。一時は何時間も並ぶほどの行列ができ、インスタ映えを求めて中高生が殺到する光景が見られた。しかし現在ではコロナ禍も相まって、タピオカミルクティー専門店の多くが撤退や業態転換を余儀なくされている状況だ。まさに“賞味期限切れ”。

 一方で、“ポスト・タピオカ”と呼ばれる新たなドリンクに注目が集まっているという。今回はタピオカブームの火付け役と知られ、今年で日本上陸8周年の「春水堂(チュンスイタン)」を運営するオアシスティーラウンジ 代表取締役の木川瑞季さんに、タピオカブームの変遷や次に来るトレンドについて話を聞いた。

◆台湾ブーム到来に合わせ、“台湾スイーツのパイオニア”として訴求

 1983年に台湾で創業した春水堂。現地に根付くお茶文化を若年層にも広めるべく、伝統的な中国茶をベースにしたさまざまなアレンジティーを開発し、国民的人気を誇るお店として知られるようになった。

 日本に進出を果たしたのは2013年。春水堂としては海外初の店舗を代官山にオープンしたわけだが、当時はまだ台湾ブームが訪れる前だったという。

「今でこそ、担仔麺(タンツーメン)や魯肉飯(ルーローファン)、豆花(トウファ)といった台湾グルメ・スイーツが人気を博していますが、春水堂が日本上陸した頃の台湾のイメージは『旅行土産で重宝するパイナップルケーキ』や『屋台で出されるB級グルメ』のようなものでした」

 だが春水堂の日本上陸を皮切りに、次々と台湾スイーツのお店が東京の表参道にでき始める。パイナップルケーキ専門店の「サニーヒルズ」やかき氷専門店の「アイスモンスター」(※2020年9月 日本撤退)など、台湾スイーツブームが到来したのだ。

 木川さんは「春水堂を『台湾スイーツの先駆的存在』として、世の中へ打ち出したことで知名度を高めていった」とし、次のように語る。

「もちろんタピオカミルクティーは当時からの主力商品でしたが、台湾スイーツの台頭やLCC(格安航空会社)の台湾便が増加し、台湾への渡航者が増えたことで、“おしゃれな台湾”が社会的に知られるようになったんです。こうした世の中の動きを抑えつつ、春水堂ではタピオカミルクティー以外にも、いち早く豆花や牛肉麺(ニューロウメン)などの台湾グルメも食べられるお店として地位を確立させてきました」

◆コロナ禍で「タピ活」終了、タピオカ店の明暗分かれる

 そして、「ゴンチャ(Gong cha)」や「ジアレイ(THE ALLEY)」、「ココトカ(CoCo都可)」に代表される台湾発のタピオカブランドが続々と日本に進出したことで、空前のタピオカブームを巻き起こすことになる。

 メディアもブームの過熱ぶりを取り上げ、「タピる」「タピ活」という言葉が流行ったことで、社会現象にまで発展した。

 しかし、大手飲食チェーン店やコンビニがタピオカドリンクを扱うようになると、競争は激化。生き残るのが厳しくなり、中途半端なお店は淘汰されていく状況になった。

 さらにコロナ禍が追い討ちをかけ、ティースタンド型の専門店も閉店が相次いだ。

 タピオカ屋から撤退する事業者も多いなか、何が明暗を分けた理由になっているのか。

「タピオカミルクティーが流行った最大のポイントとしては、飲み歩きできることでした。美味しくてインスタ映えするタピオカドリンクを求めて、話題のお店へ足を運び、おしゃれに写真を撮る。そして、飲みながら街を歩くのが『タピ活』の醍醐味であり、ブームの象徴だったんです。

 それが、コロナ禍で外出自粛やマスク着用が推奨されたことで、タピオカドリンク片手に街を練り歩くことができなくなった。過熱しすぎたブームはいつか陰りが来ると思っていましたが、コロナ禍で一気に早まったと感じています」

◆タピオカブームのおかげで、アレンジティーの認知度が高まった

 他方、春水堂は当初からイートイン、テイクアウト両方対応できる店舗を運営してきたことや、幅広い客層向けに品質にこだわった商品を展開してきたのが、今でも愛され続けている所以だという。

「店舗の空間はポップでかわらしいものではなく、万人受けするようなシックな内装にし、幅広いお客様が利用できるお店づくりを心がけていました。また、お茶屋としての自負を持ち、多種多様な茶葉を使用したアレンジティーを数多く提供してきたのも、春水堂の強みになっています。

 日本人はお茶が好きで、日頃からお茶を飲む習慣があるため、アレンジティーはその受け皿になると当初から考えていました。タピオカブームのおかげでアレンジティーの認知度が高まり、お茶の飲み方も多様化しつつある。まだまだお茶市場は伸びていく可能性を秘めていると感じています」

 若者の熱狂的なタピオカブームが沸き起こったのも、飲み物としての完成度の高さはもとより、お茶の魅力を引き出したアレンジティーだったことが大きいという。

◆大手企業も参入する「フルーツティー」が次なるトレンド

 タピオカブームがひと段落し、お茶市場の裾野が広がっているなか、タピオカミルクティーの次に注目が集まっているのが「フルーツティー」だそうだ。

「今年はミスタードーナツやローソン、大手飲料メーカーなど多くの企業がフルーツティーの商品を出しています。まさにフルーツティー戦線が繰り広げられている状況で、今後さらに競争が加熱する見込みです。

 春水堂も国産の旬な生フルーツを使用したフルーツティーを展開していて、第一弾は『果肉茶メロン』を、第二弾は『果肉茶スイカ』を発売することで、フルーツティーの魅力や可能性を広げていきたいと思っています」

 Instagramでハッシュタグ「#フルーツティー」を検索してみると、約11.5万件の投稿が見受けられる。一方で「#タピオカミルクティー」が約48万件、「#タピオカ」が約246万件なので、まだブームとは言えないまでも、関心が高まりつつあることは確かだ。

 なぜフルーツティーに熱い視線が注がれているのかといえば、「お茶はシーズンに関係なく飲まれるもので、一過性の流行で終わらないから」だと木川さんは言う。

「レモネードやバナナジュース、フルーツビネガーなども人気が高まっていますが、やはりお茶との一番の違いは『オールシーズン対応できて、普段から飲むものかどうか』だと考えています。お茶は水と同様に日常的に飲むものである一方、先に挙げたドリンクは、よほど好きな人は別ですが、まだシーズンを通して飲むものにはなっていないのではと思います。それゆえ、お茶が老若男女問わずに親しまれていて、日本の四季に合わせた商品を提案できるのも、フルーツティーに代表されるアレンジティーの発展性が見出せている理由になっています」

◆お茶をベースにしたビールやカクテルも…お茶市場のさらなる発展を目指す

 “ポスト・タピオカ”の存在として、今後のフルーツティーの行方が気になるところだ。最後に木川さんへお茶市場の将来性や抱負について伺った。

「アフターコロナを見据えて『お茶カフェ』というインフラを作っていきたいと考えています。お茶って、コーヒーの発展と同じ系譜をたどると思うんですよ。コーヒーは缶コーヒーから始まり、その後は喫茶店でコーヒーを飲む文化が形成され、今ではおしゃれな『スターバックス』で日常を過ごすのが定着している。

 お茶に関しても、お金を払ってペットボトルのお茶を買うようになり、今ではカフェのような空間で多様なお茶が飲まれるようになってきています。さらに成熟していけば、おしゃれな場所でアレンジティーを飲むのが当たり前になる時代がやってくるでしょう。だからこそ、春水堂はお茶カフェ文化の担い手になるべく、誰もが憧れるブランドへと成長させていきたいですね」

 コロナ禍の状況を鑑みながら「アルコール×お茶」という商品も訴求し、アレンジティーの多様性も伝えていきたいという。

「ティービールやティーカクテルは渋谷マークシティ店限定ですが、アルコールと茶葉のブレンドから成る新感覚の味わいは、もっと広めていきたいと思いますね。台湾フードとの相性はもちろん、単品でも美味しく飲める。これからもお客様のニーズに合わせて、アレンジティーのバリエーションを充実させ、お茶市場を活性化させていきたいです」

<取材・文・撮影/古田島大介>

【古田島大介】
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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