自傷行為すらもファッション感覚?現役女子大生ライターが追う「ぴえん系女子」の生態

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15歳から新宿・歌舞伎町に通い続け、ティーンの生態を追う現役女子大生ライターの佐々木チワワ。彼女が路上で見かけたのは、自傷行為をファッション感覚でする若者たちだった―。いま、増えつつある“病みカルチャー”の真相に迫る!

◆JKの流行語「ぴえん」が病みカルチャーに変貌した理由

 緊急事態宣言中でも活気にわく新宿・歌舞伎町を私が歩いていると、「ぴえん系女子」を数多く見かける。路上で人目を気にせず自撮りや配信を行うもの、酔いつぶれて路上で寝るもの、ホストにすがりついて泣くもの、中年男と明らかにパパ活を行うもの……、彼女たちは退廃的でありながら、生きる上での強さも感じさせる。私は思う、「ぴえんしてるね~」と――。

 そもそも“ぴえん”とは何か? 発祥は諸説あるが、泣き声の「ぴえーん」を省略した悲しみを表現した擬態語が始まりだった。

 ’18年末から使われはじめ、「バイトしんどい。ぴえん」と悲しいとき、「彼氏が優しかった。ぴえん」と嬉しいときなど、心情を表す汎用性の高い表現として広まり、「JC・JK流行語大賞2019(コトバ部門)」で1位を獲得して一般認知された。ぴえんは誕生から約3年たち、文字の役割を超えていく。

「死にたい。ぴえん……」「眠剤、大量に飲んじゃった。ぴえん……」など、メンタルヘルスに病を抱えるいわゆる“メンヘラ系女子”が自身のSNSで精神的に落ち込んでいるときの“病み投稿”の語尾にぴえんを多用。次第に自傷行為などを「ぴえんしちゃった……」と“行動様式”を表す言葉へと変容しはじめる。筆者の使い方もまさにそうだ。

◆病みファッションとして普及する“ぴえん”

 また、ぴえんはファッション用語としても浸透していく。近年、メンヘラ系女性に流行のファッションスタイルとして、「量産型・地雷系」がトレンドになりつつあるが、文字通り、量産型は没個性の似たようなスタイルで、地雷系は付き合っては危険そうなスタイルというもの。

 基本的には精神的な“病み”を感じる泣き顔系メイクに、白・黒・ピンクを基調にした洋服に、ハイブランドのアイテムにあえてマイメロやシナモンのキャラクターアイテムを身に着けている。

 ティーン向けのファッション誌『LARME』の’20年秋号では、9ページにわたる「量産&地雷in新宿歌舞伎町」特集。モデルたちが「歌舞伎町のランドセル」と呼ばれるMCMのリュックを背負っているのだが、その決めポーズがまさに“ぴえん”そのもの。ホストクラブの看板を見つめながら、ピンクのエナジードリンクにストローを挿して飲むカットなどを掲載していたのだ。

 若者たちからは「ぴえんすぎるよ!」と話題に。これらのファションカルチャーを一括して“ぴえん系女子”と呼ぶことも増えてきている。

◆歌舞伎町に救いを求める本物のぴえん系女子

 多様な意味を持つ、ぴえん。日本語の変遷の歴史に鑑みてもこうして複数のことばがひとつのことばに収束する傾向は存在する。

「文化」として成立するとその界隈の文脈の中での言語体系(隠語)が生まれる。歌舞伎町という街の、来るもの拒まずな文化とSNSの普及も相まって、隠語を含めたぴえん系女子カルチャーの認知・拡散がされ、都内に限らず広く普及したと考えられる。

 これは、裏を返せばその文脈に沿っていなくてもその社会的文脈を真似することが容易になるということであり、ぴえん文化に憧れただけの「擬態ぴえん系女子」が歌舞伎町外から流入する可能性が高まった。彼女たちは擬態して救われている側面もあるのだ。

 渋谷がかつてガングロギャルがブームになり、地方から“救い”を求めてやってくる若い女性たちがいた。同様の流れがいま、ぴえん系女子として歌舞伎町に来ていると私は感じている。

◆リストカットすらファッションや“SNS映え”のひとつに?

 ぴえんをコスプレ的なファッションで消費するものもいれば、より深い闇にのみ込まれていくものもいる。歌舞伎町の持つ“闇”と、ぴえん系女子の持つ“病み”が融合した結果、過激化するものも多いのもまた事実だ。

 一部のぴえん系女子のなかでは、メンヘラと呼ばれる人々の要素であるOD、リストカット、大量の煙草や酒といった嗜好品の消費、性的消費をファッションの一部として行うものもいる。これによって「ぴえんカルチャー」がカリカチュアライズされ、誇張したイラストや過激な歌舞伎町女子の事例が、彼女たちにとって“日常化”していく。

 信じられないかもしれないが、彼女たちにとってリストカットすら、ファッションや“SNS映え”のひとつになっているのだ。

◆神格化される「ホスト殺人未遂事件」

 その最たる例として、実際に歌舞伎町で起きたホスト殺人未遂事件が、現在でも一部のぴえん系女子から熱い支持を得ていることをご存じだろうか。’19年の5月25日、当時21歳の高岡由佳が交際していた男性ホストの腹部を刺し、重傷を負わせ逮捕された事件だ。

 この様子はなぜか撮影されており、マンションのエントランスで血まみれで倒れる男性の横で、高岡被告がスマートフォンを耳に当てながら煙草を吸っている画像がSNSで拡散された。

 その後、供述で「好きで好きでしかたなかった」と発言したことから、一部のぴえん系女子たちからは歌舞伎町のメンヘラの最上級として、「私も好きな人を殺したい!」と称賛されたのだ。彼女に憧れたぴえん系女子たちが、プリクラの落書き機能を使い再現することが流行したほど。

 この事件は海外の病みカルチャーを愛する女性たちにも伝わり、現在もInstagramなどのSNSには国内外問わず彼女のファンアートが投稿され、「ヤンデレ」の象徴として神格化されている。

 このようにファッションとしてカジュアルに死や血といったものが消費していくのも、ぴえん世代の社会観なのだろうか……。多様な意味合いを持つぴえん、そして危険な歌舞伎町の若者文化。次週は、そうしたリスカやODが蔓延するぴえん世代のなかで、大きな問題になっている“自殺カルチャー”について紹介していく。

◆「ぴえん世代」新語辞典

・ぴえん系女子
量産・地雷型と言われるファッションとメイクを身にまとい、「ぴえん」「~しか勝たん!」といった言葉を日常的に使う。そんな自分が好きだし、SNSにすぐ投稿する。二次元やアイドル、ホストなど何らかの「推し活」をしている女子が多く、「推し活をして病む自分」までがマイファッション。「ぴえんだね~!」の意味は「B型だね~!」くらいのディスと褒め。

・好きで好きでしかたなかった
’19年に起きたホスト殺人未遂事件の加害者が逮捕時に発言した言葉。一部のぴえん系女子の間で「私も好きな人を殺したい」と話題に。事件時に撮影された、倒れた男性とその横で血まみれで煙草を吸い電話をする加害者の様子を模したプリクラのポーズが流行。刺されたホストはその後「痛みに負けルナ」と源氏名を変えてホストを続投し、賛否両論が巻き起こった。

【女子大生ライター・コラムニスト・佐々木チワワ】
現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki

写真/tsubasa_works12

―[「ぴえん世代」の社会学]―


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