前島亜美、ファンとの楽しい関係性 “立場”が逆転に?

俳優・声優の前島亜美が、『ネバー・ザ・シナー -魅かれ合う狂気-』に出演する。

人気ミュージカル『スリル・ミー』の題材であり、実在した「ローブとレオポルド事件」をベースに描く同作。恋人関係にあるローブとレオポルドが引き起こした殺人事件を裁く法廷での激しい論争が見どころとなっている。

アイドルグループを卒業後、舞台出演や声優業などマルチに活躍する前島が今作で演じるのは、ローブの恋人・ジェルメインをはじめ、新聞記者、ハルバート医師の3役。

『踊る大捜査線』シリーズや『教場』の大ヒットでも知られる脚本家・映画監督の君塚良一による舞台初演出作でもある本作の魅力と、出演にかける意気込みを前島に聞いた。

3役の挑戦に「楽しみ」

──実際に起きた「ローブとレオポルド事件」を描く『ネバー・ザ・シナー』。作品の印象はいかがでしたか?

『スリル・ミー』は知っていたのですが、この事件が実際に起きたことだというのは知らなかったんです。台本がすごく面白くて、一気に読みました。その後に資料集をいただいて、実際の事件の詳しい情報や、ローブやレオポルドの人柄を知りました。台本では描かれていない、その後の2人の生涯まで載っていたことで、物語の見方が変わりましたし、これから始まる稽古を通して、もっと理解を深めていきたいなと感じました。

──舞台は複数の役をひとりでやることも多いですよね。今回も3役を兼任されます。

オファーをいただいた時点では、役柄については詳しく聞いていなかったので、台本を開いてから「あ、3役やるんだ」と知ったんですよね(笑)。今回は役の幅も広いので、稽古を通していろんな視点を発見していかなければいけないなと思います。

──役の切り替えが大変そうです。

難しいですね。以前出た舞台で、いろんな役を演じ分けながらずーっと舞台上にいるような作品があったのですが、最初の頃は着替えとか出ハケに必死で「切り替えどころじゃない!」というようなこともありました(笑)。今回は出演人数が少ない分、より濃密にテンポ良く作っていけるんだろうな、と今からとても楽しみです。

──今作は、『教場』などを手掛けた脚本家・映画監督の君塚良一さんによる初の舞台演出となります。

すごく楽しみで、今回ご一緒させていただけるのがとても光栄です。初めてお会いしたのは衣装フィッティングの時だったのですが、ごあいさつした時に「台本読んでどうだった?」と声を掛けてくださったんです。君塚さんには、特にジェルメインに力を入れてほしいとおっしゃっていただいたので、これから色付けしていきたいなと思います。

 

コロナ禍で感じた苦しさを糧に

──現段階では、演じるうえでどんなことを心掛けたいと思っていますか。

ジェルメインは、好きな男性であるローブに対して振り向いてほしくてアタックする明るさ、めげない強さも持っているけれど、ローブとの間に壁も感じているのかなと思っているんです。その切なさやもどかしさのような気持ちを大切にしながらやっていきたいなと思っています。

──役柄の感情を持ち帰ってしまうようなことはないですか?レオポルド役の林翔太さんに嫉妬してしまったり。

どうでしょう(笑)。今回は山岸拓生さん以外、初めて共演する方々なんです。山岸さんは本当に優しい方なので、少なくとも山岸さんに関してはどんな役をやっていても「山岸さん」なんです(笑)。他の皆さんに関しては、本読みや稽古を通して様々な印象を抱いていくのかなと思いますが、役とは違った皆さんの魅力も知っていきたいですね。

 

──山岸さんと再会して、なにかお話はされましたか?

数年お会いしていなかったのですが、ビジュアル撮影の時に話す機会がありました。山岸さんはPR用の意気込みコメントで「俳優をやっていて良かった瞬間」について語ることになっていたんですが、メイク室でずっと「どうしよう、“あみた”どうしよう」って相談いただいていたんです(笑)。私は撮影が早く終わってしまったので、山岸さんが結局なんて答えたのかわからないのですが、解禁が楽しみです(笑)。

──コロナ禍は舞台俳優にとっても辛い状況だと思いますが、役者業について考えることはありましたか?

私も携わる作品が延期になってしまったり、稽古中だったものが中止になってしまったりしたことがありました。そんな時には「この気持ちをどこにぶつけたらいいのか」とすごく考えてしまいましたね。お客さまに観ていただくために稽古を重ねているのに、それが届かないのはすごく苦しい。

私自身も観劇が好きなので、久しぶりに舞台を観に行けたときには、ひとりの観客として、とても感動しました。照明が入ったときの高揚感や、役者さんが目の前でお芝居をしてくれることのありがたさを感じたので、俳優にとっても大変な期間ではありますが、演劇ファン、舞台ファンの方々にとっても歯がゆい期間。この作品をお届け出来るならば、全力で臨みたいなと思います。

ファンとの関係性は… “立場”が逆転に?

──コロナ禍では、マスクをしながらの舞台稽古が大変だという話もよく聞きます。

1か月間、目元だけを見てお芝居をしていて、急にマスクを外すと印象が変わったりするんですよね。私も「そういう顔だったの?」って言われたりします(苦笑)。共演者の方々とはずっと時間を共にして作品を作っているので、クオリティに影響は出ていないと思うんですが、不思議な感覚ではあります。

──コロナ禍を経て改めて感じた、舞台の魅力とはなんでしょう。

拍手ってすごいことだな、と改めて思うんです。常に感謝を持っていたつもりではありますが、自粛明けに初めて有観客で行ったカーテンコールで、拍手の重さをすごく感じ、やっぱり生で空気を共有するのは特別なことなんだなと思いました。

──ファンの方と触れ合う機会も少なくなってしまいますよね。

私は自分のファンクラブでバースデーイベントをするなど、皆様とお話する機会を多く作っていたタイプだったので、こういった世の中になってしまって、直接会えないのがとても寂しいと思っていたのですが。SNSで言葉のやりとりが出来るようになって、なにか書いたら反応を届けてくださる方がいる心強さはすごいし、離れていても繋がっているんだなと思えるのですが、それでもやっぱり会えるのが一番ですよね。この状況が良くなってきたら今まで通りバースデーイベントもやりたいです。バスツアーとかもやっていたんです。みんなでほうとう作りをしたり、参加者の方に料理してもらったり(笑)。

──するんじゃなく、してもらうんですね(笑)。

はい(笑)。次にやりたいねって話していたのは、運動会。私は応援席で、参加者の方に走ってもらうっていうむちゃくちゃなイベント。

──普通、逆ですよね(笑)。

(笑)。そんな楽しいイベントをリアルで出来る日がくればいいなと思っています。

──最後に改めて、今作の魅力をアピールしていただけますでしょうか。

今回の作品では、客席が傍聴席になるので、すごくリアルですよね。裁判を扱う作品の面白さは、人の心が揺れていくことだと思うんです。私自身も裁判を題材にした作品が大好きで。自分が事件に立ち会っていたらどう感じるか、自分ならどう裁くか、考えていただきながら観ると楽しんじゃないかな。日常とはまったく別の世界に没頭したい方にぜひ来ていただきたいですし、作品を観て、自分はどうだろうなと考えるきっかけになればいいなと思います。

取材・文・撮影:山田健史

【舞台情報】

舞台『ネバー・ザ・シナー -魅かれ合う狂気-』

<東京公演>

9月2日(木)~12日(日) ※6日(月)は休演

東京・品川プリンスホテル クラブeX

<大阪公演>

9月18日(土)、19日(日)

大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

公式サイト:https://www.nts-stage.jp/

8月5日(木)よりぴあ最速先行スタート!

https://w.pia.jp/t/neverthesinner/

2021/8/2 10:00

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