サッカー林大地「五輪」で躍動 メキシコ、南アを制したFWの力量と闘争心

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東京五輪サッカー男子日本代表、3戦全勝でのグループリーグ突破――。

特に最終戦で強豪国フランスを4-0で撃破したインパクトは大きったようだ。それを物語るように、試合後には著名人たちが「日本強すぎないか?」とツイートしている。

だが、グループリーグを振り返った時に、ポイントとなったのは優勝候補メキシコとの第2戦、そして全てのチームがナーバスになる初戦だろう。この2試合は、フォワード(FW)の林大地選手がいなければ違う試合になっていた。林選手は五輪前、筆者のインタビューに答えてくれた。また筆者は、林選手が大阪体育大学(大体大)時代に指導を受けた坂本康博氏をよく知る。2人の証言から、グループリーグ突破の原動力となった林選手の活躍ぶりを考えてみたい。(石井紘人 @ targma_fbrj)

縦横無尽にピッチを駆け回る

林選手へのインタビューで印象的だったのは「チームのために走り、難しい体勢でも貪欲に前を向いてゴールを狙いにいく」という言葉だ。実際に出場した南アフリカ戦、メキシコ戦では、ボックスで「競り」(後述)を使ってタメを作ったり、スペースを作っていた。ボールを奪われれば、獰猛なファーストディフェンスとして相手にプレッシャーをかける。縦横無尽にピッチを駆け回り、有言実行のプレーでチームに勢いを与えた。

本人は以前、「DAZN Jリーグ推進委員会 月間表彰企画」で「大阪体育大学(大体大)の最初の頃は右利きの右サイドハーフでした。僕、あまり足速くなかったので、これじゃ(強豪相手に)やっていけないかなって思っていました。その時に坂本(康博)総監督(現:関西国際大学総監督)に『FWをやれ』と言われて、一から大体大独特の『競り』の練習をしました。そこから変わっていった」と転機を語っていた。

では、林選手の見いだした坂本総監督はグループリーグの活躍をどう見たのか。インタビューした。

「競り」使ってボール収めていた

――なぜ林選手を右サイドハーフからFWにコンバートされたのでしょうか。

坂本:練習を見ていた時にゴールに向かう姿勢が強かったからです。大地のサッカー人生はガンバ大阪ユースには上がれず、履正社高校サッカー部に入り、高校から次の道も大体大が第一志望ではなかった。そういった挫折から生まれる負けん気の強さを感じましたし、闘争心ある性格も考えると、FWが向いていると思いました。

――林選手は身長178センチとされていますが、もう少し小さく見えます。そして、当時はスピードがあったわけでもない。そういった選手をFWにコンバートされる指導者は珍しく感じます。

坂本:私は大体大での44年間の指導で、後半の20年以上、夏島隆氏と「競り」という接触技術を選手に教えてきました。大地は、この「競り」の練習に興味を持って、真剣に取り組んでいました。そして、習得もしていった。本来持っているFWとしての性格に加え、「競り」の技術が加われば、ストライカーに変貌すると思いました。

――そんな林選手の、東京五輪グループリーグ初戦となった南アフリカ戦をどのように評価されますか。

坂本:日本代表の二列目の選手を見れば分かるように、大地を中心としているわけではありません。むしろ、大地が彼らに生かされ、かつ生かすかです。「競り」を使って、自分のエリアに来たボールをしっかりと収めていました。かなり頑張って相手と競っているように見えたのではないでしょうか。その動きをしながら、相手ボールになったら、ファーストディフェンダーとしてプレッシャーをかけ続けていました。

――南ア戦での林選手の象徴的なシーンが32分。相手を背負いながらも、左腕を相手の腰、右腕を相手の肩にかけ、クルっと反転し、シュートまで持っていった。相手センターバック(CB)と勝負するプレーで、相手のCBを自由にさせない。あの瞬間の「競り」を解説して頂けますか。

坂本:腕が目についたかもしれませんが、あのシーンで大事なのは足の運びです。足をどの位置に置いて、ターンしているか。背中で相手を背負っている時に、後ろ足のどの位置に置くかがポイントです。

――足を正中線(ヒトや動物の前面または背面の中央を縦にまっすぐ通る線)に入れるということでしょうか。

坂本:相手の動きを止める時に、正中線に足を入れます。その後で、ステップをして、足を回転しやすい位置に持っていきます。この回転する時に、腕が連動していくのです。これが私の理想で、ご指摘された腕は一連の流れの一つです。指導をした学生たちも、正しく理解できていないと、強引に腕の力で何とかしようとする(苦笑)。それはファウルになりやすいプレーです。腕の使い方は、相手の力を利用したり、あとは背中のあたりをちょっと触るとか接触する程度です。

――確かに、動画でシーンを振り返ると、林選手は左足を正中線の位置に置いています。そして、相手を止めて左足でトラップし、右足でステップしながら、腕を連動させてターンしています。

坂本:体幹は強いに越したことはありません。ただ、体幹が強いから接触に強いという解説をよく耳にしますが、「競り」は力ではなく、テクニックというのを日本サッカー界で共有して欲しいですね。

相手DFを右手だけで

――では第2戦、メダル候補のメキシコ戦。林選手の評価はいかでしょうか。

坂本:この試合では、南ア戦のようにシュートは打てませんでしたが、逃げずにボックスで構えることで相手CBを自由にさせていませんでした。また、CBを引き連れることで、スペースも作って、おとりのようにもなっていました。かなり、効いていたと思います。

――メキシコ戦では僕も驚いたプレーがありました。1分47秒、寄せてきた相手DFの左胸を、右手一本で制していました。その証左に、驚いたメキシコ選手は両手であきらかなプッシングをしていました。こちらのシーンを解説頂けますか。

坂本:人間の体には強い所と弱い所があります。この時、大地がおさえた部位がまさにそうなのですが、相手が嫌がる箇所で、「競り」の技術の一つです。ただ、これもテクニックが必要で、手で押したらファウルです。そうではなく、体と一緒に腕を畳みながら接触させるような感覚です。

――林選手の73分の守備はどうでしょうか。お尻と両腕を連動させた体の入れ方だったと思います。

坂本:両手を使って、相手を押さえるというのは理想ではありません。両手で押さえると、腰が下がります。その体勢はプレーの精度を落とします。理想は、半身で入ってコースを押さえて、逆側に回られたら体の位置を変える。その時に相手選手の体のどこを半身で押さえるか。相手選手をどのように感じるのかもポイントです。あのシーンでは、相手選手がいて、ボールを奪おうとしてくるので、最終的に腕が後ろに下がってしまったのだと思います。

――坂本総監督は、林選手にスピードはないと指摘されていましたし、本人も認めていました。しかし、試合を見る限りは決して遅い選手には見えません。これも先ほどから坂本総監督がおっしゃられているステップが関係しているのでしょうか。

坂本:私の指導の基本の一つが、「いかに早く走るか」。たとえば、スタートダッシュの頭の位置ですが、大地の走り方を見ても頭を下げた走り方はしていませんよね。
 あとは、「カカトから入る走り方ではなく、つま先から地面につけなさい」とも指導します。理想として指導しているのは、頭部の位置は別にして、ウサイン・ボルトのスタートダッシュです。ボルトは、つま先を正面に向けてスタートを切っていません。最初の3~5歩は外側に向けて、そこから正面につま先を向けています。そのスタートの練習はかなり取り組ませました。

――それが生きているのかもしれませんね。

どのような形でも良いので得点を

――決勝トーナメント1回戦・ニュージーランド戦では、どのようなプレーを期待されますか。

坂本:ニュージーランドの試合は見ていないのですが、大地にはどのような形でも良いので得点をとって欲しいですね。いまは「貢献している」と評価されていますが、FWの結果は得点です。得点が生まれれば、周りの信頼関係も変わってきますし、比例するようにプレーのレベルも上がるはずです。

――ニュージーランドの平均身長は184センチ。林選手は178センチです。不安はありますか。

坂本:いえ、空中戦もテクニックです。身長で全てが決まるわけではありません。日本サッカー協会は、ヘディング時には片足ジャンプを推奨しています。ですが、片足ジャンプは不安定ではないでしょうか。着地の失敗も多く、大きなけがを負った選手もいます。
 大地にヘディング時に要求してきたことは、ジャンプするタイミング、跳ぶ時の踏み込み足はカカトの外側からつま先の方向へ、着地する時の足の位置は、つま先から横向きまたは後ろ向きで、膝の角度は110度、ジャンプする時は腕を引いてからジャンプすると様々な技術が入っています。「競り」に体格は関係ないことを大地が証明してくれるはずです。


体格で勝る海外の選手たちを、林選手は「競り』の技術で圧倒している。五輪での林選手の活躍は日本サッカー界だけではなく、他競技のヒントにもなるかもしれない。ニュージーランド戦も期待だ。<J-CASTトレンド>

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