行方不明の息子を捜して24年 50万キロ以上をバイクで旅しついに見つけ出した父親(中国)

1997年9月21日、中国・山東省リャオチェンの村に住むグオ・ガンタンさん(郭剛堂、Guo Gangtang)の息子で当時2歳半だったグオ・シンゼンちゃん(郭心珍、Guo Xinzhen)は、自宅近くで遊んでいたところを見知らぬ女に誘拐された。

警察の捜査のほか500人以上のボランティアが近くのバス停や駅を捜し、ガンタンさん自身も道行く人々にチラシを配り情報を求めたが、手がかりを得ることはできずにいた。ガンタンさんは息子を誘拐されたショックで1か月間に体重が80キロから60キロに激減し、髪の毛も真っ白になってしまったという。

打つ手がなくなったガンタンさんは、過去のインタビューで「私が捜しに行けば、息子を見つけられる一筋の希望があるかもしれないと思ったのです。誘拐犯はどうせ息子を返してくれません。私が家にいても息子が戻ってくるチャンスはないのです。だから、私は息子の捜索を始めたのです」と息子を捜し出す旅に出る決意をした理由について語っている。

そして1997年の終わりから、シンゼンちゃんの写真が入った旗を立てたバイクで全国を走り回り、この24年間でチベット自治区と新疆ウイグル自治区を除くすべての省・地域を訪れた。その距離は50万キロを超え、10台ものバイクを乗りつぶしたという。

彼は息子を捜す一方で、中国の行方不明者組織の主力メンバーとなりウェブサイトを立ち上げ、100人以上の行方不明の子供たちと家族の再会を手助けしてきた。

このガンタンさんの実体験をもとにしたストーリーは『失孤(ロスト・アンド・ラブ)』のタイトルで映画化され、2015年に公開された。

映画の中では、交通事故にあったことや強盗に遭遇したこと、宿代がなくて橋の下で寝たことなどガンタンさんが旅のなかで経験した多くの出来事が盛り込まれており、最後は主人公が行方不明の息子を見つけることができないまま終わっていた。

中国が長年抱える「子供の人身売買」という社会問題を浮き彫りにしたこの映画で、香港の俳優アンディ・ラウは、無償で主人公を演じたという。

旅の途中で一度は自殺を考えたこともあったガンタンさんだったが、バイクの旗の息子が「パパ、ぼくは雨の中もそばにいるよ」と語りかけているようで考えを改め、捜索を続けたそうだ。

そして映画公開から6年が経った今年6月、ついにガンタンさんの夢が叶い親子は再会を果たした。

ガンタンさんは中国・河南省で誘拐された息子を見つけたことを明らかにしており、地元警察の協力を得てDNA鑑定を行い、息子の身元確認に成功したという。

また7月13日には、中国公安部がガンタンさんの息子を誘拐した罪に問われていた2人が逮捕されたことを発表した。

当局によると、人身売買の目的でシンゼンちゃんを連れ去ったのはタンという女で、当時パートナーだった男フーと共にバスで隣の河南省に向かい、そこでシンゼンちゃんを売ったという。

警察は山西省の刑務所に別の犯罪で収監中だったフー(56歳)を容疑者として特定した。そして先月にはタン(45歳)が逮捕された。

『失孤』の主演俳優アンディ・ラウは、家族が再会できたことに「幸せなニュースを聞いてとても感激し、ガンタンさんの粘り強さに感銘を受けています。警察当局の長年の努力にも敬意を表します」とメッセージを送った。

同映画の監督であるペン・サンユアン氏によると、息子のシンゼンさんはガンタンさんの故郷からそう遠くない場所で暮らしているという。また「私の知る限りでは、シンゼンさんは大学で教育を受けています。彼を育てた家族は経済的にも恵まれています」とも明かした。

ネット上では今回の親子の再会を祝福すると同時に「この映画と主人公の大きな影響力のおかげで事件解決につながった」とのコメントもあり、映画の続編を求める声も多くあがっている。

画像は『央视网 2021年7月13日付「24年终团圆!《失孤》原型郭刚堂与被拐儿子相认 一家人相拥而泣」』のスクリーンショット

(TechinsightJapan編集部 上川華子)

2021/7/22 6:00

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます