ダイの大冒険「フレイザードこそ有能なリーダー」だと東大生が考える理由
―[貧困東大生・布施川天馬]―
現役東大生の布施川天馬と申します。学生生活の傍ら、ライターとして受験に関する情報発信などをしています。
◆名作『ダイの大冒険』に再ブームが到来
皆さんは『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』という作品を知っていますか? 『ドラゴンクエスト』は知っているけど、『ダイの大冒険』は知らないという人もいるかもしれません。
『ダイの大冒険』は1989年からおよそ約7年間にわたって『週刊少年ジャンプ』にて連載された、人気RPGシリーズ『ドラゴンクエスト』の公式スピンオフ作品です。
僕は小学生のとき、父の影響でハマりました。ですが、すでに連載が終了していたこのマンガを知っている同級生などもちろん一人もおらず、先生と『ダイの大冒険』談議に花を咲かせていたことを今でも覚えています。
2020年10月から新たなアニメシリーズがスタートしたほか、新装彩録版の発売や関連ゲームのリリースなど連載開始から30年以上経過した現在、再び盛り上がりを見せています。
◆『ダイの大冒険』印象的だったキャラクターは?
このマンガで一番活躍するキャラクターといえば、やはり主人公の勇者・ダイ、もしくはその相棒の魔法使い・ポップでしょう。
ダイもポップも最初は未熟ながらも物語の過程で段々と成長していき、魔王軍との戦いにおいても大活躍します。彼ら二人がいなければ、人類は魔王との闘いに終止符を打つことはできなかったでしょう。
一方で、魔王軍においては誰が一番活躍したでしょうか。これはいくらか意見が分かれるところだと思います。
しかし、僕はどう考えても「フレイザードこそ魔王軍で一番有能」だと考えています。それは彼がまったく手段を選ばない冷酷な将軍だからです。
◆なぜフレイザードが有能なのか?
フレイザードは、魔王軍を6つの軍団に分けたうちの1つである「氷炎魔団」を任されているボスキャラクターの一人。
体の半身が炎で、もう半身が氷でできている特殊な生命体で、その残虐極まりない性格から「氷炎将軍フレイザード」として恐れられています。
魔王軍の6軍団の長には、ほかにも百獣を従える誇り高い武人「獣王クロコダイン」や、竜の軍団という圧倒的な戦力を保持している「竜魔将バラン」など、さまざまなキャラクターがいます。
一方で、氷炎魔団にはロクに意志疎通もとれなさそうな火や氷や岩でできているモンスター(劇中では「岩石生命体」や「エネルギー生命体」と説明されます)しかいません。率いている軍団の戦力で見ても、将軍の人徳で見ても、もっと秀でている団長はいます。
◆明確な目標達成思考を持つフレイザード
では、なぜ魔王軍の中でフレイザードが一番有能だといえるのか。それは彼の「目的を達成するためなら手段を選ばない」という目標達成思考にこそあります。
たとえば、フレイザードがパプニカ王国の王女・レオナを氷漬けにしたシーンになど、それが見て取れます。
ダイ一行とフレイザードとが会敵したのは、レオナを始めとするパプニカ王国の残党が隠れ潜んでいたバルジ島という孤島においてでした。
フレイザードはこの島をダイ一行との決戦場として改造しており、自分以外の力を封じ、相対的に魔物の力をパワーアップさせる仕掛けを施していたのです。
しかし、そもそもこの島はただの孤島で、人類にとって重要拠点ではありませんでした。
◆自身が有利に戦える状況に持ち込む
つまり、ダイたちはスルーすればよく、わざわざ自分たちが不利になるフィールドでフレイザードと戦わないという選択ができたのです(それが「少年マンガ的にナシ」という意見は別として)。劇中でも、上記の仕掛けが作動した時点で仲間たちからは「一旦逃げよう」という提案がなされていました。
ですが、フレイザードはダイたちを逃がすまいと、ここでとんでもない行動に出ました。王女レオナを氷漬けにしたのです。
氷に包まれるレオナの命はもって3日ほど。結果として、勇者ダイたちは自らが不利な状況下でフレイザードと対決することを余儀なくされました。
彼の目標達成思考はほかのシーンにも見られます。
◆目標達成のために優先順位を明確にする
ダイとの戦闘の中で徐々に押されてしまい、フレイザードは追い詰められてしまいます。すると、彼は自身の栄華の象徴であった「暴魔のメダル」を邪魔になるからとかなぐり捨て、なりふり構わず攻撃し始めたのです。
このメダルはもともと魔王軍に6つの軍団が創設された記念に大魔王から与えられたものであり、自らの忠誠心と栄光の証として彼が最も大事にしてきたものでした。
ですが、彼はあくまで「勇者ダイを始末する」という目標を達成するために、あらゆるものを捨ててまで戦ったのです。
過去の栄光と、目の前の達成すべき目標、そして、その先にある新たなる栄光とを天秤にかけた結果、目標を達成するために「過去を捨てる」という選択を冷静にしてのけたのでした。
◆「魔王軍軍団長の鑑」といえる性格と言動
フレイザードは『ダイの大冒険』の中でも屈指の強敵として描かれます。それは、この「目標を達成するためならどんな手でも使う」という性質があってのことなのでしょう。
ほかの軍団長は「自らの武人としての誇り」や「魔王軍内の政治的な立場」など、時には魔王軍全体の目標を達成するためには不必要なものをときに重視して動いていました。
ですが、ダイと出会って以降のフレイザードは最大の標的となる「勇者ダイを排除する」というただ一点にのみ重きを置いて活動します。
その姿はまさに魔王軍軍団長の鑑です。彼こそが、まさに模範的な魔王軍のリーダーといえます。
◆優れた悪役には悪役なりの見習うべき点がある
ダイとその仲間たちのポテンシャルを見誤ったことと、上司である魔王ハドラーが無能だったこと、そして部下もあまり有能ではないという不利な要素がなければ、本当にダイ一行にも勝っていたかもしれません。
物語を見ている際には、どうしても主人公側に肩入れしてしまいがちかと思います。
ですが、優れた悪役には悪役なりの見習うべきところがあります。
「正義の反対は別の正義」といわれますが、悪役もまた各々が信じる流儀や信念に従って仕事をしているからです。
◆「超有能部長」になるであろうフレイザード
たとえば、もし彼ら魔王軍が現代社会に会社員としてあれば、フレイザードはワンマンでもバリバリ結果を出してくる超有能部長となっていたと思います。
そのやり口は違法スレスレなものもありながらも、誰よりも会社に貢献するために働き、実績を出す存在になっているのではないでしょうか。
フレイザードは確かにクズです。それは間違いありません。
とはいえ、たとえそれがどんなクズであっても、見習うべきポイントや尊敬するべきポイントはたくさんあると思います。
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa)