アンチ・コロナワクチン派の暴走に頭を悩ます人が急増中

◆暴走するアンチワクチン派

 ワクチン不足が報じられてはいるものの、なんとか一般接種に向けて扉が開かれ始めた新型コロナへのワクチン接種。

 だが、因果関係はともかくワクチン接種直後の死亡事例も報告されており「本当に大丈夫なのか?」という声も後を絶たない。不安に思う気持ちは理解できるのだが、この不安な気持ちが医療関係者にいらぬ負担を強いている。

 東海地方在住のある薬剤師は「店でワクチンは安全かを聞かれて仕事に支障が出ている」と語る。

「コロナワクチンは安全なのか? 副作用はないのか? と聞かれても、コロナワクチンに限らずインフルエンザなど全ての、どのワクチンでも副作用はあり得ます。コロナで死ぬ確率とコロナワクチンの副作用で死ぬ確率のどっちが低いの?という話ですから、それでどう考えるかは皆さんの自由です。

 最近は減りましたけど、店舗で棚卸ししている最中に話しかけられて、どこの誰が言ったかわからないような話を延々とされても困るんです。『それは誰が言ってるんですか?』って聞くと、ムキになって反論されたり……。

 私、研究職でもないし、製薬会社の社員でもないです。ドラッグストア勤務の薬剤師なんです。そんなに持論をブツけたいなら行政の窓口にでも言ってくれりゃいいのに……。応対に時間をとられて仕事に支障が出るので勘弁してほしいです」

「薬剤師=薬に詳しい」のは確かだろう。しかし、接種会場でもなければ病院でもない場所で薬剤師を捕まえて自説を延々と話すのは、迷惑この上ない行為である。

◆保護者会で険悪な空気に

 今はワクチンを打ちたい人ができるだけ早く打つことが対策として効果的なのは間違いないところだ。だが、全員が打つべきか、打ちたくない人は打たないべきかは、はっきり言って今の段階で検討・議論は自由にすればいいし、打ちたい人が全員打ち終わったときに結論が出ればいいことなのだが、今「打ちたい人が打つ」ことを邪魔するのは迷惑な話であろう。

 アンチワクチン派の一部から過激な「布教」によって小学生の子供を持つ親同士の保護者会が険悪になってきたと話すのは、北陸地方在住の主婦だ。

「アンチワクチン派の母親が家庭で子供にワクチンが危ないと日々言うので、子供たちの間でワクチンが危ないという話が広まってしまい困惑しています。そのコから学校で『ワクチンを打つと死ぬ』とか『海外では本当は何人も死んでいる』と言われ、子供から『ワクチンって危ないの?』と聞かれて、専門知識もありませんし説明するのが大変でほとほと困っています」

 その母親の一家はいわゆるナチュラル系で、これまでもいろいろと“問題”を起こしてきた“前科”があるという。

「これまでも学校給食に使う食材を巡って学校側と揉めたり、何かと主張の激しい方でした。そんな彼女が今年の保護者会にノーマスクでやって来て大揉めに揉めたんです。

 彼女はマスクも危ないという謎理論を持っていて、保護者会が始まるなり『コロナはインフルエンザと一緒でデトックス効果がある。一度かかってしまえば免疫もつくし、風邪と一緒なのだからかかってしまえば強くなる』とか『ワクチン接種するくらいなら、コロナになって免疫を付けたほうがいい』と言い始めて、進行できなくなってしまったんです。

 校長とPTA会長が間に入って、マスクをしたくないのはわかったけど他の方はマスクをしたいのだから、ノーマスクなら父母会に出ないでほしいと伝えたら『私にはマスクをしない権利があります!』って。マスクして感染予防したい私たちの人権はないんでしょうか……。おそらくワクチン接種のお知らせが届くころには保護者会でもっと大騒ぎするでしょうね……」

 自己主張もほどほどにしてほしいものである。主婦の憂鬱はしばらく止まりそうになさそうだ。

◆コロナもアロマで殺菌!?

 ワクチンを巡ってはナチュラル系の暴走は目を引くものがある。北関東在住の女性、A子さんはアンチワクチンを主張するママ友から、マルチの勧誘を受けて絶縁宣言したという。

「その方は数年前に横浜から移住してきたんです。気さくな方で子供たちの面倒見もよく、すぐに地元のコミュニティに溶け込んだんです。ただ、ちょっと激しいなって思うところもあって、子供会でBBQをやった際に『化学調味料が入っているから市販のタレはヤメてほしい』とか、『こんなに自然があるのに、農薬を使って野菜を育てている農家があって残念』といったことを口にすることもありました。それが去年、コロナが流行し始めてからかなりおかしくなってきたんです」

 去年の2月、マスクや消毒液が全国的に不足した頃、アンチワクチンママがこんなことを言い始めたのだという。

「ママ友のグループラインに『消毒液が不足していますが、消毒液の代わりになるアロマオイルがあります』と投稿してきたんです。さすがにみんなちょっと……って感じで無視していたんですが、保育園の送り迎えで会う際に小瓶に入れたアロマオイルを配り始めたんですよ。

 数日経って会ったら『どうだった?』と聞かれたんですが、使ってもないし殺菌できてるかなんて、そんなのわかんないじゃないですか。だから、イイ香りでしたね〜くらいに返したら、『Facebookやってる? このアロマのこと書いてるから友達申請していい?』って」

◆あたかも医療に精通しているように装って……

 彼女は嫌な予感がしたが、渋々申請を受け入れたという。

「ママ友のFacebookを見たら、そのアロマの効能をすごく書いてて、『アメリカの大学で研究されていて、癌にも効く』とか『自然由来の殺菌作用でコロナウィルスも空間除菌できる効果が期待できる』とか書いているんです。

 それで、ことあるごとに『私は元医療従事者なので〜』とか書いてて、あれ? 病院で受け付け事務してたって聞いたことはありましたけど、もちろん医師でもないですし、看護師でもなんでもないんですよ。医療従事者には違いないと思いますけど、この書き方はちょっと言い過ぎですよね。それで、コレはちょっとヤバいなぁ……って思って、適当にやり過ごしたんです」

 だが、A子さんはその後も執拗にアロマを勧められ、辟易していたという。そんなある日、事件は起きたのであった。

◆リモートワークの副業でアロマ販売

 緊急事態宣言が出され、全国的にリモートワークが推奨された昨年春。GW中の出来事を主婦は振り返る。

「GWも緊急事態宣言だったので特に出かけず、近所の公園で子供を遊ばせていたら、彼女とその子供たちも来ていたんです。緊急事態宣言で仕事が在宅メインになったという話をしたら、『家にいる時間を活用しない?』って言われたんです。

 話を聞くとそのアロマの代理店になって友達に紹介していくと報酬がもらえると。え〜それってマルチじゃん!って言ったら、急に慌て始めて『これはよく問題になるマルチじゃなくて……。でも、アロマオイル自体はすごく自然由来でイイものだから』ってワケのわからないことを言われて、いや、もう、ちょっと……ってなりましたね。

 それからも何度か『オンラインのセミナー出ない?』とか、『ワークショップをやるから一緒にアロマを作らない?』って誘われて、もうホント、ウンザリ。あんまりしつこかったから、『考えややってることは否定しないけど私は興味がありません。そういうお誘いはもうしないでほしい』ってLINEしたら、誘ってこなくなりました」

◆ワクチン接種が始まると更に加速

 だが、A子さんから絶縁されたものの彼女は怯むことなく、ママ友のグループLINEでアロマの効能を謳い続けたという。

「ワクチン接種が始まったら、ワクチンの危険性をグループLINEで言い始めて、みんなウンザリしちゃってました。本当なら保育園のことで情報共有するためのグループLINEが彼女の独り舞台ですよ。臨床試験が終わってないから危険だとか、子供の集団接種に反対する署名をお願いしますとか……。

 いちいち『私は医療従事者だった経験があるので〜』とか『私が横浜の病院にいた時、ワクチンというものがどういうものかを見てきた経験からすると〜』とか言うんですが、みんな『病院の受付でしょ?』って影でツッコミ入れてます(苦笑)」

 もちろん、ワクチンの危険性だけでなくアロマの売り込みも忘れない。

「あるとき、『ワクチンは危険ですが、どうしても打たなければならない方もいると思います。コロナワクチンは他のワクチンと比べて副反応が強く出ます。もし頭痛や発熱などがあった際は副反応を和らげるアロマをお渡ししますよ!』みたいなことを投稿して、みんな『副反応出たら、アンタのとこじゃなくて医者行くわよね〜』って(笑)」

 彼女のお陰か、A子さんのママ友たちは皆「ワクチン接種派」になったという。

◆親のワクチン接種を勝手にキャンセル

 親はワクチンを接種しようとしていたが息子によってキャンセルされた話もある。大阪のある会社員の男性は昼休み中に同僚からトンデモない話を聞かされた。

「先日、自慢げに語られたんですが、会社の同僚(40代後半)が『親がワクチン接種なんか申し込んでたから電話してキャンセルしといたわ』って言ってきたんですよ」

 せっかく予約が殺到しているなかで取れた予約をこともあろうか勝手にキャンセルしたというのだ。そこで会社員の男性は「そんなんもったいないやろ」と返したところ……

「『俺は親族に一切ワクチンなんてものを打たせる気はないし、全力で阻止する。子供たち? 当然打たせない。あんな死ぬかもしれない危ないもの、70を過ぎた親父に打たせるわけにはいかない。お前ももう少し家族のことを考えろ』って言われちゃいました。これはもう議論の余地はないと思い、会話を終わらせようとしました……」

 だが、徹底したアンチワクチン派の同僚は彼を説得しようと話が止まらない。

「『お前知ってるかぁ? 菅首相もワクチンを打ったとニュースになってたろ? あれ、嘘だから。ここだけの話、もし首相がワクチン打って死んだらマズいから、実は生理食塩水を打ってたんだぜ』って、もう陰謀論以外の何者でもない話を説明してきました。昼休みの1時間フルにその話で潰されて、はぁ」

 その同僚はもちろん、社内では「ヤバイ人」として扱われているという。

◆コロナがヤバい人たちをあぶり出した

 人は危険にさらされると本性を出す。いたって動物的にはシンプルな話で、その危険なことがコロナであったにすぎない。やべー奴がコロナであぶり出されただけなのだ。

 コロナワクチンについて冷静に考えるというのは大事であるし、それでどう思うか、打つか打たないかは個人の自由だが、それを他人に強要するのは「全く違う問題」なのだということを忘れてはならない。

 打たない自由があるならば、打つ自由もあって然るべきではなかろうか。もちろん、有害性や副作用について声高に主張する自由もある。だが、いずれにせよ、押しつけで解決することはないのである。

取材・文/SPA!編集部

2021/7/14 15:53

この記事のみんなのコメント

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  • とか書いてたら、反ワクチン団体のリーダーが逮捕のニュースがタイムリーにwww絶対数が減って、濃い人達だけ残ったって感じなの?

  • 随分古い記事が上がって来たなと日付け見て驚いたw当時と比べてどうなったんだろうね。

  • 持病持ちほど、ワクチン接種を推奨すると聞いた事もあるけどねぇ (ニュースでも流れてるし…) まあ ノーマスクやアンチワクチン派はコロナに感染しても 医療行為を受ける権利なくない?

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