約8000頭の野良犬を世話する中国の僧侶「見捨てることはできない」と27年

中国の上海に暮らす僧侶、智祥さん(Zhi Xiang、53)は1994年、1台の車が野良猫を撥ねるのを目の当たりにした。

その猫は2本の足を失い瀕死の状態で、智さんはこの事故をきっかけに道路で死んだ猫を見つけては埋葬し、息がある猫は獣医のもとに連れて行った。

そんな智さんは2006年、仏教寺院「報恩古寺」のトップとして働くようになり、弟子たちに寺を任せると街に出て動物たちの保護にあたるようになった。智さんは「活動を続けるうちに、街やシェルターには猫よりも圧倒的に犬が多いことに気付いてね。それに上海の奉賢区のシェルターの犬たちのほとんどは安楽死か餓死していたんだ」と語り、このように続けた。

「なんとかして犬たちを救いたいという思いが強くなって、一日のほとんどを犬の保護に費やすようになった。朝早く車に犬用のケージを積んで、捨てられた犬たちを保護するんだよ。」

こうして寺には犬や猫だけでなく、鶏やカモ、ガチョウ、クジャクなどの動物が暮らすようになり、2017年からは人々からの寄付を受け入れて経費に充てた。そして2019年になると浦東新区に約11000平方メートルの動物シェルターを借り、保護した動物たちを集めて世話を始めた。

『Oddity Central』によると、7人のボランティアと一緒に始めたシェルターには現在約8000頭の犬が過ごしているという。また『South China Morning Post』は、1頭に年間1500元(約25000円)の費用がかかると報じており、8000頭となると年間で約2億円もの経費が必要になる。

智さんは「毎月に必要な食事は60トン以上。ボランティアも14人に増えた。でも本当は17人は欲しいね」と述べ、「運営は寄付によって賄っているところが大きいけど、個人でも借金をしているよ。経営は決して楽ではないね」と明かす。

これまでに保護した犬のうち800頭が米国や欧州などに送られているとのことで、智さんは「地元で『引き取りたい』という申し出があれば喜んで引き渡すよ。ただ評判の悪い人はお断りだけどね」と語る。

それでも寺にやってくる人々の中には、動物たちの世話に明け暮れる智さんを批判する人もいるという。そしてそんな人々に対し、智さんはこんな持論を展開する。

「彼らは『僧侶は一日中寺に座ってお経を読んでいればいい』と思っているんだよ。でも仏陀は全ての生き物は平等であること、そして生き物の命を助けるようにと説いている。放っておけば死んでしまう動物たちを何もせずに見ているわけにはいかないんだよ。」

「また野良猫に餌をあげる人がいるけど、避妊をしないままそんなことを続ければ、結局は世話ができず安楽死される猫が増えるだけ。私のシェルターはそんな悪循環を断つ役割も果たしているんだ。」

智さんは獣医の資格こそ持っていないものの、注射や投薬など自分でできることは全て行う。そしてそんな智さんのことをボランティアの一人は「どんなにコストがかかろうと、必ず最後まで責任をもって助ける人。ただもういい年だからね。かなり無理をしているよ」と表現しており、智さん自身も「65歳までに後継者を探して引退したい」と述べている。

なお中国では動物への虐待を取り締まる法律が欠落しており、早急な法の整備を望む声が高まっているという。

画像は『Oddity Central 2021年6月29日付「Buddhist Monk Has Saved Tens of Thousands of Stray Dogs in the Last 27 Years」』のスクリーンショット

(TechinsightJapan編集部 A.C.)

2021/7/14 5:00

この記事のみんなのコメント

1
  • トリトン

    7/14 10:44

    偉い僧侶さんだけど金とか寄付をもらえるとはまだまだ中国も捨てたものではないね。

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