元カレが”行為中の動画”をTwitterにアップ…リベンジポルノ削除業者に実態を聞いた

 近年、元交際相手などの画像や動画を同意なく流出させる「リベンジポルノ」が大きな問題となっています。警察への相談件数は過去5年で増加し続け、2020年は過去最多の1570件だったそう。

 そんな状況を受け、インターネット上にアップロードされてしまった画像や動画の削除対応をする会社が登場しています。「AVソリューション」(以下、AS)の運営担当にリベンジポルノの実例と被害に遭わないための対策を聞きました。

◆2017年頃からリベンジポルノの削除依頼が増加中

―― ASの業務内容はかなり独特だと思いますが、なぜそのような事業を始めたのでしょうか?

「私たちはそもそも、SNS上のなりすましや掲示板へのデマの書き込み、企業へのウソの口コミといったネット被害全般への対応をしていました。2014年頃に初めて、出演強要されたAVの削除相談があり、徐々にその件数が増えたので、事業の名前も今のものに変えました。リベンジポルノの相談は、2017年頃から年々増えています。これは、マッチングアプリが普及したことと関係があると思います。2020年では100件ほどがリベンジポルノ関連の相談でした」

―― 2017年頃って、ちょうどティンダーなどのマッチングアプリが日本でも広まった時期ですよね。

「そうですね。それ以前にリベンジポルノの相談は全然ありませんでした。特に被害が多いのは、やはりマッチングアプリ経由での出会いですね。被害者はだいたい18歳~20代後半。マッチングアプリ以外では『元カレや肉体関係のあった人から被害を受けた』という内容ももちろんありますし、パパ活での被害もあります」

◆元カレにTwitterで動画を拡散された事例も

―― 高校を卒業したばかりの若い子も被害に遭っているんですね。それでは、具体的な事例を聞かせて下さい。

「まず、元カレからの被害では、Twitterの捨てアカに行為中の動画をアップロードして知人を全員フォローする、という悪質な手口の相談がありました。22歳の女性でした」

―― 最悪ですね。被害女性の周りの人間関係ごと壊そうとしてくるのですね。女性はどのようにアップロードされていると気付いたのでしょう?

「加害者は、わざわざダイレクトメッセージで動画を送ってくるようです。単にTwitterに投稿しただけでは、被害者は気付かないですから。捨てアカのサムネイルにも被害女性の画像を使ったりして、知り合いならすぐに分かるように作るんです。そういった相談は、Twitterのヘルプセンターに削除依頼し、加害者の名前が判明している場合は警察にも行くようにと伝えています。

 Twitterの投稿は1回だけでも、バズってしまうとリツイートで拡散されてしまうこともありますし、データを保存して他の人がまたツイートすることもあります。だから、相談時にすでにTwitter上に大量にデータがあるケースもあります」

◆マッチングアプリで出会った男に撮影を強要されて

「マッチングアプリを使って体を売ったりパパ活の被害相談も多いです。そもそも、そうやって稼ぐことはリスクがとても高いのですが……。最近では、旦那さんのいない時間帯に体を売っている23歳の主婦から相談がありました。1回で50万円支払うと言われ、ホテルに行ったら無許可で撮影された上に、『後で振り込むから』と言われて口座も教えてしまったと。怖くて断れなかったそうです」

―― 主婦でもそういうことで家計の足しにしている人が実は少なくない、と聞いたことがあります。でも、口座も教えてしまっては本名もバレてしまうから、きっととても不安ですよね。

「彼女は、なかなか振り込まれないから催促のメッセージを送ったら『振り込む気なんだから催促するな。こっちは動画持ってんだからどうなってもいいのか』と脅されて強く言えず、結局お金は振り込まれなかったそうです」

―― 女性の弱みに付け込んだひどい手口です。

「その動画は結局、動画サイトにアップロードされていたのが分かったんです。パパ活などで行為中の動画を動画サイトにアップロードされたという相談は多く、中には動画を販売している業者もいます。一度インターネット上にアップロードされると、大量に複製・拡散される可能性があります」

◆なぜ警察は対応してくれない? 被害者の低年齢化も問題

―― そういった案件に警察は対応してくれないのでしょうか?

「被害者の多くは『警察に行っても相手にしてもらえなかった』と言って、うちに相談にきます。『お金をもらう前提でマッチングアプリで知り合った人とホテルに行った』とわかると、警察は『肉体関係を持つこと前提で会ったんだから自己責任でしょ。次からは気をつけなさいね』くらいしか言ってくれないみたいです」

―― 実害があっても捜査もしてくれないんですか。

「それから、10代には『警察に相談して親にバレるのが怖い』という子も多いです。最近では、中高生から相談を受けることもありますよ」

――未成年はどのようにして加害者と知り合うのでしょう。

「Twitterなど、ネットで知り合うようです。親しくなり、DMで裸の画像や動画をしつこく要求されて送ってしまい、拡散されたりバラすと脅されたりして、うちに相談に来ます。また、被害者が#援助交際 #援 #P活 #パパ活 といったハッシュタグで投稿をしていて、つながるケースもあります。

 中高生の被害は大抵小規模なのと、お金のない子が多いので、費用はもらっていません。ただ先述のように、大量に拡散されて3ケタ代に動画・画像の数が膨れ上がっているような場合は、工数が多くなるので費用もいただきます」

◆削除の費用は?リベンジポルノ被害を防ぐには?

―― 通常、費用はどのくらいかかるのでしょうか?

「中高生は例外ですが、基本的には1件5000円でお受けしています。大量に拡散されている場合は、状況をお調べして、調査工数の見積もりを提示します」

―― 最後に、リベンジポルノ被害に遭わないようにするために気をつけることはなんでしょうか?

「画像や動画を撮らせない・送らない、が一番大切です。実際に会ったことのない人はもちろん、彼氏など信頼している相手でも、破局後に嫌がらせをしてくることもありますから」

―― 良い思い出のある相手でも、リベンジポルノを受けてしまったら、すべてイヤな記憶として塗り替えられてしまいますし、日常生活に支障をきたす場合もあります。彼氏でも信用しないという意味ではなく、気持ちよく生きていくために問題は未然に防ぐべきだということですよね。

「そして、売春やパパ活も大変リスクが高いです。手っ取り早くお金を稼げる手段と思えるでしょうが、リベンジポルノの他にも、個室で暴力を受けたり、性病をうつされてしまう可能性もあります」

―― 手っ取り早く稼ぎたいという人、お金を借りられない人、相談相手のいない人が、そういう行為に手を出してしまうのは、本人の問題だけでなく、生活・家庭環境や社会の問題が複雑に関わってきます。現在では貧困女性やシングルマザーへの支援団体もありますから、お金を稼ぐには身体を売るしかない、と決めつけずにまずは相談してみるのも手でしょう。

 このスマホ社会において、リベンジポルノのリスクはさらに高まるはず。被害に合わないためには、問題を正しく知り未然に防ぐことが大切なようです。

<取材・文/阿形美子>

【阿形美子】

1994年生。大学卒業後、フリーの編集・ライターとして活動中。底抜けの飲んべえゆえ酒ネタが多いが、インタビューやモノ記事、カルチャーネタなどもカバーする。Twitter:@agata_yoshiko

2021/7/11 8:46

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