「犬猿の仲」の携帯大手3社が、なんと宮崎県山間部に初の「共同店舗」 ガラケーも見捨てません!

「犬猿の仲」とも呼ばれる携帯電話大手3社、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクが、なんと仲良く全国初の共同店舗を開くことになった。

それも、宮崎県の山あいにある小さな街、えびの市である。共同店舗になる場所は、国の有形文化財になっている無人駅だというから、なんとものどかな話だ。

J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部は、携帯大手3社を呼び寄せる画期的な試みに成功した市の担当者に話を聞いた。

110年前の木造駅舎に3社合同の代理店を

宮崎県えびの市は県の南西部にあり、西に熊本県、南に鹿児島県と接しており、3県の境界に位置している。2021年6月1日現在で、人口は約1万7500人。山間部にあり、えびの高原の四季折々の花々や、野生のシカなどが観光名物だ。市内には携帯電話ショップがなく、市民は修理や操作の相談に近隣の市のショップまで、クルマで往復1時間以上をかけて行かなくてはならなかった。

そこで、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話大手3社は2021年7月6日、えびの市と協力し、市内の同じ場所で順番を決めて別々の日に営業する携帯電話臨時ショップを開設すると発表した。

えびの市の発表資料によると、市内の高齢者らが気軽に機種や契約内容の変更、操作の相談などができる機会を提供する。3社の協力は全国的に初めての試みで、3社は過疎地で携帯電話サービスのサポート体制を確保するモデルケースを目指す。

場所は、市中心部にあるJR吉都線「えびの駅」(無人駅)の駅舎を利用する。この駅は、大正元年(1912年)に建築された木造建築物で、国の登録有形文化財に指定されている。JR九州からえびの市が建物部分を有償譲渡された。

3社は8月10日以降に代理ショップを開設する。駅舎は市から無償で借りる3社がそれぞれ毎月平日の2日間、持ち回り制で単独営業する。具体的には「ソフトバンクの日」「auの日」「ドコモの日」を決め、それぞれが2日間連続で営業し、同じ日にかち合わないようにする。

たとえば、8月17日・18日(ソフトバンクの日)、8月19日・20日(auの日)、8月23日・24日(ドコモの日)といった案配だ。臨時店舗は来年3月までの予定だが、えびの市側はニーズが確認されれば継続したい意向だ。

J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部は、どうやって大手3社の「合同代理店」を呼び寄せることに成功したのか、えびの市企画課情報係の担当者に取材した。

「先駆的モデルを作るという高揚感があった」

――きっかけは何ですか。

担当者「かつてはえびの市にもNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社のショップがあったのですが、少子高齢化で人口が減って、2017年にドコモが撤退したのを最後に、市内にはショップがなくなってしまいました。特にスマートフォンの操作や修理に困るお年寄りは、気軽に相談できる人が近くにいない環境ですから、クルマで往復1時間以上かけてショップがある隣の小林市や熊本県人吉市まで行かなくてはならなくなったのです。
市民から使い方だけでも市役所で相談に乗ってくれないかという要望があり、昨年、市役所企画課情報係に予約していただき、事前に使用している機種を教えていただければ対応することにしました。しかし、契約変更や機種変更などのニーズには対応できないことが課題でした。昨年の国勢調査でのインターネット回答でも本市は低調でした。このままでは国が進める『DX』 (デジタルトランスフォーメーション=編集部注:情報革命の進化)に、高齢者を中心に取り残されてしまうという危機感から今回の取り組みを始めたのです」

――携帯大手3社には、村岡隆明市長が直接交渉したのですか。

担当者「本市には特命アドバイザーがおります。ソフトバンク社の伊藤孝秀さんです。伊藤さんは、ソフトバンクで地域の社会貢献を担うセクションであるコーポレート統括CSR本部に所属されています。えびの市はICTを活用した地域活性化と市民サービスの向上にむけて連携する協定をソフトバンクと昨年9月に結び、九州担当である伊藤さんを特命アドバイザーに任命しました。
まず伊藤さんに相談すると、必ず3キャリアとも賛同してくれる余地があるはずとのことでした。市長名で依頼文書を作成し、各キャリアには伊藤さんから説明をしていただきました。今年4月に各キャリアの担当者との合同会議を開きました」

――ライバル意識が非常に強い3社が、よく協力したと感心しますが...。

担当者「3キャリアが同じ土俵に乗っていただけるかどうか不安でしたが、合同の会議を行ったときに、通信事業者の責任として過疎地域での臨時出張店はキャリアごとに独自で既に実施しているが、場所の確保、住民への告知などで大変苦労されていたとお聞きしました。過疎地域に関しては決してコストを理由に見捨てているわけではないことがわかりました。かえって、今回の取り組みにお声がけいただき、大変ありがたいと感謝されたところです。
発表に至るまでウェブ会議を市と3キャリア合同で何度も行いましたが、それぞれのキャリアがキャリア独自のことを主張されるのではなく、お互いに建設的な意見を出していただき、前向きでかつ和やかな雰囲気で進めることができました。何かしら新しい先駆的なモデルを作るという高揚感があったのかもしれません。3キャリアとも、今回の取り組みが過疎地域のDX推進のモデルケースにしたいという意気込みを強く感じたところです」

――なるほど、いい話ですね。ところで、楽天モバイルには声をかけなかったのですか。

担当者「かつて市内にショップを開いていたのは、今回協力していただく3キャリアだけです。市民の大多数は3キャリアのユーザーであると推定しました。そのため楽天モバイル様には提案を控えました。楽天モバイル様には今後の動向の推移を見守りたいと思います」

「ガラケーでも誰一人取り残さない」

――国が推進する「DX」では、いわゆるガラケーからスマートフォンへの乗り換えを奨励しています。市内の高齢者の中には、いまだにガラケーを使っている人が少なくないと思いますが、ガラケーの相談も受け付けるのですか。

担当者「今回の臨時ショップ開設は、SDGs(持続可能な開発目標)の『誰一人取り残さない』というモットーの基に行っています。各キャリアが通常のショップで、いわゆるガラケーを取り扱っている限り、取り扱うサービスをスマートフォンに限定する考えはありません。ただし、ガラケーが使っている3G サービスは数年後には終了します。それを見据えて、ガラケーで4G対応でないものに関して、各キャリアが4G 対応の携帯端末への変更を事業者の責任として推奨することはあると思います」

――今回の臨時代理店の開設を、市内のお年寄りは喜んでいるでしょうね。

担当者「はい。好意的な反応をいただいています。口コミでは聞いたが、本当にそんなサービスができるのかと、(地元の)新聞記事を見て確かめたという方もいました。まずは安心してスマートフォンに乗り換えていただくような最低限の環境整備が整ったと考えており、今後スマホ教室などに展開をしていきたいと考えています」

(福田和郎)

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