1年で25万円が1600万円に増えたFXの神業。丑三つ時に仕込む「仲値フラッシュ」とは

◆カリスマトレーダーが秘伝の技を伝授

 700万円の大台に到達した後、1か月ほどで一時300万円台前半へ。そんなジェットコースター相場で’21年前半戦はビットコインに注目が集まったが、実はFX界も今年は波乱の幕開けだった。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が’23年までの金融緩和継続を表明してきたことを受けて、年始にはほとんどのアナリストが「ドル/円は100円割れを試す円高相場に」と予想していたからだ。

 ご存じのように、ふたを開けてみれば円高局面は見られず、直近も110円前後の円安相場だ。予想外の相場にFXトレーダーたちは翻弄されてきたのだ。

 だが、そんな波乱の相場でも着実に稼ぎ続けているトレーダーがいる。ゴトー日・金曜日の仲値決め(午前9時55分)を狙い撃ちする技巧派でFXトレード世界大会2位、Kaibe氏のテクを丸裸に!

◆丑三つ時に仕込んだ買いポジが10時に炸裂する「仲値フラッシュ」

「散歩をしているとき、ひらめいたんです。アノマリーと優秀な自動売買システム(EA)を組み合わせたら最強じゃない?と。システムトレーダーにはデータから売買手法を導き出す人もいますが、私は『ひらめき型』なんです」

 そう言って笑うのは世界的なトレード大会「ロビンスカップ」で準優勝した実績を持つ専業投資家のKaibe氏。仮想通貨のマイニングや「イールドファーミング」と呼ばれる超高利回りの仮想通貨運用も実践する、日本を代表する理系トレーダーのひとりだ。

「ロビンスカップでは自作のEA『Flashes』でドル/円とユーロ/ドルの2通貨ペアの売買をさせたら、いい結果が残せました。でも、たまたまではないんです。Flashesはその年、130%のパフォーマンスを上げ、資金を2倍以上に増やすことに成功したんですから。すでに開発から4年近くたちましたが、今でも主力のEAとして活躍しています」

◆花開くまでに10年

 こうして常勝トレーダーにのし上がったKaibe氏だが、その力が花開くまでには10年近くもの歳月を要した。

「FXを始めた当初はEAを使わず、裁量取引を行っていましたが、うまくいかずに300万円近くのお金を溶かしてしまいました。そこから情報収集と検証作業を念入りに行うようになり、テクニカル指標が発する売買サインに従って取引するスタイルへと変えていったのです。当時は会社員でしたから仕事の合間にケータイで売買サインをチェックしながらひたすらトレード。すると1年も経たずに25万円が1600万円へ増えた。テクニカルに従って取引するだけのやり方だったので売買を自動化できるのではと、独学でプログラミングの勉強を始めたんです」

 仕事は化学系のエンジニア。プログラミングとは無縁の職場だったから、ゼロからの勉強だった。

「最初はフリーで配布されているEAの中身を覗きながら、数字や通貨ペアをいじったりして学んでいきました。そうやってカスタマイズしたEAの一つに急騰・急落局面で逆張りするものがあり、それが2か月で350%というとてつもないパフォーマンスを叩き出したのです! FX業者に嫌われたのか、口座を凍結されてしまいましたが……(笑)」

 業者に嫌われるような売買ロジックとは、どんな手法だったのか。

「大きく動いたら逆張りするだけなのですが、ポイントはダラダラした動きでは入らない、ということ。ジリジリ下がっているところは我慢し、いよいよ最後にズドン!と下がったら戻ってくるので、そこを狙って買う。エントリーには逆指値を使っていました。2、3pips下がるごとに逆指値の発注レートを自動的に切り下げる。すると下がっている場面では買わず、底をつけてから反転する場面で買ってくれます」

◆高値更新時の順張りを自動化した“フラッシュ”

 相場の急変時には数秒おきに注文レートを変更することになるから、とても手動では不可能。自動売買ならではの手法だった。

「ロビンスカップで使用したFlashesを作ったのはそのあとです。原型となったのはダウ理論をもとにした手法。上昇トレンドなら30分足レベルの前回高値付近で押し目買い。下落トレンドなら戻り高値を売っていく手法でした。もともと裁量で取引していた手法をEAに落とし込みました。ただ裁量であれば『前回高値付近』と曖昧な言葉でも自分の感覚や経験から判断できますが、EAでは明確な定義が必要。どうすれば自動化できるか、さまざまなテクニカル分析を模索しました」

 その詳細は企業秘密のようだが、トレンド方向が一目でわかる移動平均線(SMA)と、ローソク足の上下にバンドを表示してその後の値動きの“幅”を示唆してくれるボリンジャーバンドを活用することでも同様のトレードが再現できるという。複数のSMAが上向きで揃っていたら上昇トレンドと判断し、マイナス2σのバンドにタッチしたら押し目買いを入れるようプログラム。実際にはさらに細かく条件が設定されているが、このようなアルゴリズムで押し目買い・戻り売りを自動執行するEAを自作したとか。

◆Flashesと「仲値トレード」を組み合わせ

 実は、冒頭でKaibe氏が「ひらめいた」と語るのは、このFlashesと「仲値トレード」を組み合わせたEAだ。仲値は銀行が決定するその日の為替取引の基準レート。日本の場合は毎日午前9時55分のレートが基準になる。この仲値決めに向けてドル/円が値上がりしやすい特徴を利用してトレードすることを、俗に仲値トレードと言うのだ。

「私が仲値に着目するきっかけとなったのは、茨城大学の教授が行った仲値の研究でした。実需の関係からか、仲値決めに向かってドルが買われやすいとされていますが、その研究ではより具体的に『ゴトー日かつ金曜日の仲値決めに向かって上がりやすい』という傾向を統計的に示していました」

 ゴトー日は文字どおり「5」や「0」がつく日。貿易決済が集中しやすいと言われる。週末を控えた金曜日も同じように貿易決済が増えやすい。そのためゴトー日や金曜日だとドル/円は仲値に向かって上がりやすくなる。こうした傾向を利用したトレードはポピュラーな手法の一つだが、問題は「いつ買いを仕込むか」だ。

「先ほどの研究ではより具体的に仲値の何時間前に買うと最もパフォーマンスがよくなるか、統計を取っていました。それを参考にすると、ゴトー日ないし金曜日の午前2~5時、もしくはゴトー日かつ金曜日の同時間帯にドル/円の買いを仕込むと最も利幅が取れるようなのです。とはいえ、『深夜2時に買って翌朝9時55分に決済』といったように時間を決めて取引すると、優位性はあるもののパフォーマンスがそこまで高くない。より実践的なEAに落とし込めないかと考えていたときに思いついたのが、Flashesとフュージョンさせることだったんです。つまり『2時に買う』といった時間指定ではなく、『2時から5時の間の押し目で買う』といったように、エントリーにFlashesのロジックを導入したんです。検証したところ、バックテストの結果は劇的に向上しました」

◆仲値フラッシュの誕生

 仲値トレード×Flashes=仲値フラッシュの誕生だ。

「ルールはとてもシンプル。売買するのはゴトー日か金曜日のみ。もちろん、ゴトー日の金曜日でもいい。仲値前の深夜2~5時の間の押し目で買って、9時55分に決済するだけです。押し目の見つけ方は基本的にFlashesと同じ考え方。3時間の間にいい押し目がなければ見送ります。こうすると仲値トレードの優位性を利用し、かつ安いレートで買えるため、高いパフォーマンスをあげることができるんです」

 エントリー時間が深夜になるのが難点ではあるが、夜型の人はスマホでチャートを見ながらエントリーチャンスを探してみよう。

◆仲値フラッシュ直後の売り回転も有効?

「損切りは不測の事態に備えて遠目に発注するだけです。利益と損失の比率は5:6くらい。損失のほうが広めですが勝率が60~70%になるため、トータルでは年20%弱は取れるイメージです」

 実は、仲値フラッシュは9時55分を過ぎても光を放つ。

「仲値に向かって20~30銭と急騰した場合は、その後の反落も狙います。仲値特有の値動きで、上昇した場合はもとの水準に戻る確率が高いからです。昼前には決済するので数pips程度で終わることもありますが、勝率は高い」

 仲値フラッシュで利幅を稼いで、仲値決め後の逆回転フラッシュで二重取り! チャンスは決して多くないが、勝率の高いトレードなのでモノマネトレードにうってつけと言えるだろう。同じく、高パフォーマンスを誇る別のロジックも紹介してもらった。

「大きなトレンドは下向きなのに、急騰して急落する場面ってありますよね? 戻り高値をつくったと思ったら、一気に下げて直近安値を下抜けていく。上昇トレンドに転換したと思って買いが増えたのに、ハシゴを外されて手じまい売りが続発するような場面。これを狙うんです。30分足のチャートで急騰⇒急落からの直近安値下抜けで売りエントリー。私はこのロジックをEA化して運用しています」

 このEAが相当なハイパフォーマンスとか。

◆5か月で70%のリターン

「利益確定は2~3pips程度の幅でトレーリングストップを入れます。裁量用の口座で逆指値+トレーリングストップを同時に発注できるのは日本だと3社くらいしかありませんが、効果的。今年は5か月で70%のリターンが出ています。1年で資金は2倍以上に増える勢いです」

 裁量で実践するにはチャートに張り付く必要がありそうだが、勝率アップは確実か。まずは、仲値フラッシュ&逆回転フラッシュから始めることをオススメしたい。

◆自動売買や仮想通貨で分散投資

Kaibe氏は資産を4分の1ずつに分けて分散運用。なかでも近年、力を入れているのが仮想通貨で。保有するビルの1室を利用してイーサリアムなどのマイニングを続けている。また、DeFi(分散型金融)と呼ばれる仮想通貨ならではの金融サービスを利用した超高利回りの運用(イールドファーミング)も実践して、着実に資産を増やし続けている

●Kaibe氏 FX歴15年

会社員時代にFXを開始。デイトレなど試行錯誤を繰り返し自動売買へ。自作の自動売買で参加した世界最高権威のトレード大会で準優勝を収め、退職。自動売買のほか太陽光発電や仮想通貨マイニングなども手がける

★必殺技

・仲値フラッシュ

・逆回転フラッシュ

★トレード通貨

ドル/円、ユーロ/ドルほかイーサリアムなどのアルトコインも少々

★資産・成績

億超え/年70%

★使用テクニカル

ボリンジャーバンド、RSIなど

★SNS

@K_FLASHES

◆Kaibe流 FX3か条

★ゴトー日・金曜の仲値に優位性あり!

★仲値前の深夜、押し目を拾うべし!

★9時55分には何があっても決済!

取材・文/¥SPA!編集部 図版/ミューズグラフィック チャート提供/TradingView

―[億超えFX神5人衆]―

2021/7/9 8:53

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます