夏ドラマはラブコメと医療系の一騎打ち。テレビマンが本当に見たい作品とは

 一年越しに東京オリンピックが開幕することもあり、各局で前倒しの放送となっている夏ドラマ。

 春クールでは菅田将暉、神木隆之介、有村架純、芳根京子らが共演した『コントが始まる』(日本テレビ系)や石原さとみと綾野剛の『恋はDeepに』(日本テレビ系)、北川景子と永山瑛太の『リコカツ』(TBS系)、阿部寛や長澤まさみらが出演した日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS系)など、トップクラスの人気俳優による作品が多かったのに対して、夏ドラマの俳優陣は地味な印象が強め。

 現状ではSNSをはじめとするメディアでも話題に上がることが少ないが、業界関係者たちが注目しているドラマはあるのか。彼らの生の声を集めた。

◆オリンピックとワクチンの影響で小粒になった夏ドラマ

 まずはキー局でテレビドラマを手掛けてきた50代の元プロデューサーで現在はコンテンツ事業部に勤めるA氏に、夏ドラマについて聞いた。

「オリンピックが開催されること、コロナワクチン接種者が増えることで夏休みの外出が増加することを見込んで、どの局も夏ドラマに話題作を持ってこなかったことは事実だと思います。

 しかし、最終回の視聴率が20.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、世帯平均視聴率)をマークした『ドラゴン桜』をはじめ、『コントが始まる』『リコカツ』、『着飾る恋には理由があって』(TBS系)など、視聴率以上に見逃し配信での視聴が伸びたり視聴満足度の高い作品も多く、ドラマ熱は再び高まっている。夏ドラマも引き続き、数字は維持できるのでは?」

◆『TOKYO MER~走る緊急救命室~』と『ナイト・ドクター』の一騎打ちに?

 そんなA氏が期待しているドラマを2作挙げてもらった。

「『TOKYO MER ~走る緊急救命室~』(TBS系、日曜午後9時~)と『ナイト・ドクター』(フジテレビ系、月曜午後9時~)の2つの救急医療ドラマですね。両作とも設定こそ違えども“救命救急”がテーマの作品。コロナ禍で命の大切さや重さに人々の関心が高まっており、どちらも高視聴率を期待できるドラマだと思います。

鈴木亮平さんや賀来賢人さんなどが出演する『TOKYO MER~走る緊急救命室~』のほうは、『危険なビーナス』『グランメゾン東京』など重厚なドラマを手掛けてきた黒岩勉さんが脚本を務める作品で、チームの結束と各々の葛藤を巧みに描いたストーリーになっている。

 一方の『ナイト・ドクター』は波瑠さんを主人公に置いてラブストーリーや働き方改革などにも触れており、女性や若者の視聴者を取り入れようとしている。どちらがうまくヒットするかで今後の医療ドラマの方向性も変わってくるのかなと思っています」

◆演技派・二階堂ふみがラブコメで初主演!

 また、A氏は演技派女優として頭角を現す二階堂ふみが初主演するドラマにも注目している。

「もう一作は、人気女優の二階堂ふみさん主演の『プロミス・シンデレラ』(TBS系、火曜午後10時~)。同作は二階堂さん演じるアラサーバツイチの早梅が、金持ちイケメン男子高校生と出会い、借金返済のためにゲームに参加することになるラブコメディ。

 これまで映画女優のイメージが強かった二階堂さんですが、連続テレビ小説『エール』(2020年)での熱演と評価をきっかけにドラマにも意欲的になっているそうです。

 若手きっての多彩な演技力を“胸キュン”ドラマの多い同枠でいかに発揮するのかが、今後テレビドラマでの躍進のカギになるかなと思います。脇を固める眞栄田郷敦さんと岩田剛典さんが演じる真逆の性格をしたイケメン兄弟にも注目ですね」

 目の肥えた女性視聴者にどれだけ新しいキュンキュン要素を見せられるのかも重要になってくると、A氏は二階堂やその脇を固める俳優陣の演技力に注目しているという。

◆コメディエンヌ・小芝風花と中島健人の『彼女はキレイだった』

 続いて、ドラマ制作会社の30代女性プロデューサー・B氏にもおススメ作を聞いた。

「今作はラブコメディがズラリと並んでいてどれも期待しているのですが、小芝風花さんと中島健人(Sexy Zone)さんによる『彼女はキレイだった』(フジテレビ系、火曜午後9時~)が最注目。

 同作は、優等生から無職になった小芝風花演じる愛と見た目の冴えない少年からイケメンエリートになった中島健人さん演じる宗介の幼なじみ2人のすれ違いを描くラブコメディ。ベースとなった韓国ドラマも面白かったですし、脚本は『わたし、定時で帰ります』(TBS系)や朝ドラ『エール』といった女性主役のストーリーに定評のある清水友佳子さんが担当。

 王道のストーリーに日本らしいエッセンスを加えた満足度の高いドラマになると思います。ここ数年、雑誌編集部のドラマが続いていたので、舞台となる職場がファッション雑誌の編集部という点が唯一気がかりかな」

 唯一の気がかりとなっているのが、設定となるファッション雑誌編集部とは……。なんとも一般視聴者が思いも寄らぬところにプロは注目してるものである。

◆モテない男たちが奮闘する『イタイケに恋して』

 B氏が注目するもう一本のラブコメは『おっさんずラブ』の脚本を担当した徳尾浩司氏が手がけた『イタイケに恋して』だ。

「ラブコメでもう一作期待しているのは『イタイケに恋して』(日本テレビ系、木曜午後11時59分~)。『おっさんずラブ』『私の家政夫ナギサさん』などの脚本で知られる徳尾浩司さんのオリジナル作品で渡辺大知さん、菊池風磨さん、アイクぬわらさんが演じる不器用でモテない3人の男が、恋愛インフルエンサーの助手となり恋のキューピッドとして奮闘していくという話。残念だけど愛くるしい3人の“男子トーク”は深夜にまったり見るにはうってつけ。演出やセットにもこだわっており、数字以上の話題性を呼ぶのでは?」

◆元乃木坂46・堀未央奈と伊藤万理華の演技力に期待!

 また、B氏は期待している元アイドル女優も挙げてくれた。

「乃木坂46出身の2人に注目しています。一人は『お耳に合いましたら。』(テレビ東京系、木曜深夜0時30分~)で主演を務める伊藤万理華さん。グループ在籍時から演技面では光るモノがあり、近年は映画やドラマに引っ張りだこ。素朴な見た目とセリフや表現力のギャップは見ものです。

 また、『サレタガワのブルー』(TBS系、火曜深夜1時28分~)で主演を務める堀未央奈さんの演技にも期待しています。演じるのは欲望のままに不倫をする妻という難しい役ですが、堀さんは独特のミステリアスなオーラを持っているのでハマり役になる可能性もありそう」

 アイドルから女優へ……一皮むけた2人の演技には要注目だ。

◆異色の新しい家族像を描く『#家族募集します』

 最後に、脚本家にもおススメ作品を聞いた。映画やネットドラマ、マンガ原作なども手掛ける女性脚本家C氏の注目作とは……。

「『#家族募集します』(TBS系、金曜午後10時~)です。SNSに投稿された「#家族募集します」という呼び掛けを見て集まった男女による群像劇なのですが、脚本を担当するのはコント集団「ジョビジョバ」のリーダー・マギーさん。近年は多数のドラマ脚本を手掛けていますが、ドラマチックなストーリーラインにコメディや哀愁を織り交ぜたシナリオは秀逸。今作も笑って泣ける壮大な作品になると思います」

 マギー氏の脚本は舞台時代からも定評がある。異色の家族像を描いた同作では、どんな脚本を書き上げたのかも要チェックだ。

◆人気作『来世ではちゃんとします』第2弾はさらにスケールアップ

 脚本家C氏が注目するもう一作はテレ東系の深夜ドラマだ。

「もう一作は、『来世ではちゃんとします2』(テレビ東京系、水曜深夜0時40分~)。内田理央さん演じる複数の“セフレ”がいる性依存女子・桃江などの生態を描くラブコメディで、シチュエーションや展開がとにかく赤裸々でリアル。今作はさらに複雑な男女の関係性を描いているそうで、より際どくてコミカルな内容になっているはず。今から楽しみです」

 今年の夏は、自宅でオリンピック観戦とともに粒ぞろいの注目夏ドラマを見ながらアツくなってみてはいかがだろうか。

文/木田トウセイ

【木田トウセイ】

テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

2021/7/5 8:54

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