日本エレキテル連合「やっぱり舞台はすごくヘタ」「ほかの仕事はできない」コントの精髄(日本エレキテル連合インタビュー#4)

「いいじゃないのぉ~」「ダメよ~ダメダメ」

 おそらく、日本中の誰もが耳にしたことがあるやり取りだろう。

 橋本小雪と中野聡子の2人のお笑いコンビ『日本エレキテル連合』は、このコント「朱美ちゃんと細貝さん」で2014年に大ブレイク。その年の『新語・流行語大賞」の年間大賞、Yahoo!検索大賞 2014・お笑い芸人部門を受賞し、日本列島にその名を轟かせた。

 そして、それから。

 2人は何をしてきたのか。何をしているのか。何がしたいのか。

 その根本にあるのは、コントに対する深すぎる愛と覚悟だった――。(第4回/全4回)

―お2人が「朱美ちゃんと細貝さん」のコントで大爆発した2014年の『ぐるナイおもしろ荘』には、和牛さん、バイク川崎バイクさんも出演されていました。同じ時期には、流れ星さん、パンサーさん、ウーマンラッシュアワーさん、どぶろっくさんも台頭してきた。その方たちとの交流はあったんでしょうか?

中野「いまお名前が出たなかだと、どぶろっくさんは本当に、もう、だいぶ先輩なんですけど、“一緒に戦った同志”みたいに思ってくれていて」

橋本「こっちも、思っています。先輩ですけど、思っています」

中野「苦手なこととか好きなこと、得意なことが似たりしていて。なんでしょうね。どぶろっくさんがいるから、私たちも頑張ろう、みたいなのが、どこかにありますね」

橋本「お互いバタバタしてたから、当時そこまで深く話せてないんだよね」

中野「そう。だいたいロケなんで……。一緒の番組には出るんですけど、行ったロケ先が、やっぱり同じような掃除とか、大変なことをさせられる(笑)。それでどっと疲れてるみたいな感じの、同じしんどさを味わってる」

橋本「いまちょっと落ち着いて、お互いLINEとか声かけあったりして。繋がってますね。前より話しています」

―戦友みたいな?

橋本「思いますね、ホントに。最近だと、写真が来て。たぶん、どこか営業に行かれていたときだと思うんですけど、営業先のホテルのベッドの上に細貝さんの人形を置いて写真を撮ってきてくれたんですけど、“いや細貝さんのほうを連れ込むんかい!”と思って(笑)」

中野「あと、永野さん。永野さんは、それくらいのときによくご一緒させていただいて。ライブに呼んでくださったりとか。『永野さんが選ぶ芸人さん』みたいな主催ライブにいつも入れてくださったりして」

橋本「あと、チャンス大城さん」

中野「そういう怪奇な人たちと仲いいかもしれないですね(笑)。やっぱりこう、上手な人たちとは、私たちはちょっと引け目を感じてしまって、一緒の輪に仲良く入っていけない。ものすごく憧れはあるんですけど。怪奇に1人でやってる人たちとは、仲良くなりやすい……」

■中野「編集やエフェクトが多い奴ほど、元がつまらないんです(笑)」

―お二人で完結している、と先ほどからおっしゃっていましたが、これからどう活動していくのでしょうか。

中野「ライブは大好きなので、ライブで生のお客様に、何のエフェクトもかかっていないものを見ていただくのと同時進行で、今度は編集してやったものを見ていただくのを、もうちょっとやりたい。ちゃんと期間空けずに。やっぱり、コントしかできないので、コントをちゃんと見てもらいたいので」

―YouTubeの動画では、編集や演出が凝っていると感じました。これは、撮っているときから考えている感じですか?

中野「編集のときに足していくことのほうが多いかもしれないですね。“なんとかなる”って思って撮るので。なんとかなるだろうって(笑)。だから、酷いのもありますね、編集する前。編集が多ければ多いほど、かけてるエフェクトとかが多ければ多いほど、元がつまんなかったんだなって(笑)」

橋本「そういうの多いよね」

中野「どんな素材でも何とかしよう、編集の力で。みたいな」

―ほかの芸人さん、コウメ太夫さんが『現代社会の闇を斬る!!「財運フレンドシップパートナーズ」を追え!』に出たり、『MIYOSHI オードパルファム』のナレーションを元フジテレビの山中秀樹さんがしたりしています。他のタレントさんに出てもらうとき、どう依頼しているんですか?

中野「山中秀樹さんは同じタイタン所属で、ものすごく、やっぱりフジテレビのアナウンサーさんで声が素晴らしいので。一流なので。“これは出ていただかない手はない”と思って、お願いしました。

コウメさんは、もともと営業で毎週のようにあっていた時期があって。素材がコウメさんは素晴らしいので。いるだけで面白いので。出ていただきたいなと思って、お声かけさせていただきました」

―役柄や演出について、コウメさんに何か言われることはなかったですか?「お金が欲しい人」というキャラでしたが。

中野「コウメさんは、たぶん何をやっているのかもわかってないと思います。それは、コウメさんが悪いんじゃなくて、こちらの説明不足なんですけど。私たちのコント“こういう話で、これがこうなって“って言っても、たぶんわからないので。あの、”立っていてくださったらいいんで“みたいな感じだったと記憶しています」

橋本「それで完璧にやってくださったから」

■2人による最新のオススメ動画紹介

―2014年7月21日に『感電パラレル初心者が、まず見るべき5本【日本エレキテル連合】』)という投稿をしていましたが、2021年現在、見てほしいものはありますか?

中野「いまやっぱりこういう時代なので。コロナの、リモートを生かしたコントがあって。

『グッナイチャンネル』(※)っていう平成初期くらいのお色気番組をパロディしたのがあって。それは、いろいろな仕掛けがあって。まず、リモートでやってるんですけど、リモート感を出してないのと、あとルームツアーってYouTuberさんが結構やられてていると思うんですけど、ルームツアーの要素も入っていて。コントに落とし込んだのは、見ていただきたいですね。あと、何かある?」

(※『グッナイチャンネル』…2020年5月7日投稿『伝説のお色気深夜番組「グッナイチャンネル♀♂」』)

橋本「私はもう、『俺の特技を見てくれ』(今年2月20日投稿)っていう……」

中野「全然見てくれないんだよね、再生数回数が……」

橋本「(笑いながら)自分たちが好きなヤツが“なぜだろう”って再生回数なんですけど、『俺の特技を見てくれ』っていうトランペットを吹きながらも、置き引きを防ぐっていうやつなんですけど、それはぜひ自宅でゆっくり、何もかも忘れて見ていただきたい。深く考えずに(笑)」

中野「あとなんだろう……『うさまるちょぴー』?」

橋本「うさまるちょぴーだね」

(※『うさまるちょぴー』…ニコニコ生放送の動画配信主を模したコントシリーズ。外ロケでチンピラや警官に絡まれるのがお約束)

中野「ちょっと……そんなこと考えてないですけど、人の手のひらの返し方とかがいまっぽいなって。弾幕が流れるのがひと昔前なんですけど。ニコニコ動画みたいな感じで字が流れて……あっ、ごめんなさい。うさまるちょぴーじゃなくて、『ぱにぽよ』でした。

『ぱにぽよ』っていうのがいて。配信する……それも弾幕が流れるんですけど、それが、言葉が一気にみんなが手のひら返しする。すごく勝手なんですけど。そういうのを、見てもらいたいなと思います」

(※『ぱにぽよ』…『うさまる~』と同じくニコ生をモチーフにしたコントシリーズ。リスナーを相手にトークをするが、徐々にアンチとの口論がエスカレートしていくのがお約束。)

■中野「映像より舞台の方が大変です」

―『ぱにぽよ』と、『トランペットを吹きながら置き引きを防ぐ』と、『グッナイチャンネル』。何か他にも、「これもっと伸びたらいいのに」みたいなのがあれば。

中野「2000年代初頭のギャルのコントがあって。もうルーズソックスで。タイトルは付いてないですけど」

橋本「だいたい1か月くらい前(4月20日投稿)に上げたやつなんですけど」

中野「嘘つきとスゴイ鬼ギャルの友情を描いた、屋上で撮ったコントなんですけど、ぜひ見ていただきたいです。はい」

―さっきの「編集で何とかなる」というのは、ディレクターさん的なマインドなのかなと思いました。ただ一方で、ライブは「生で一発勝負」というところで、2つの考え方がある感じですか?

中野「まったく別物として考えていて、生でやる刺激は映像では味わえない。失敗したらそれをどうカバーするかとか、思わぬところで笑いが起きたりとか、笑い待ちとかすぐ返ってくるので、それはそれを楽しむ。映像は、自分たちの自己満足みたいなのも入れつつ、あとで帰ってくるのを楽しむ感じなので……」

―器用に分けてできるものなんですね。

中野「でも、やっぱり舞台はすごくヘタクソですね。声は通らないし。動きがやっぱり映像で再現しちゃうので、1回ビデオに撮って見てみたりとかしないと。だから……舞台のほうが大変かな」

橋本「うん」

―緊張もする?

中野「緊張もしますし。“オエーッ”って言いながら……」

―爆笑問題さんも、毎月ライブやるじゃないですか。あそこまでの方になったのにやられているのは、やはり刺激になりますか?

中野「もちろんです。タイタンに入りたいって思った理由が、爆笑問題さんを尊敬してるっていう理由なんですけど、いまだに新ネタを下ろしている。それがもう、“絶対この事務所に入りたい”っていう理由ですね」

―すごいですよね。以前、爆笑問題さんにインタビューしたときに「そういう体質になっちゃった」とおっしゃっていました。

中野「カッコいいですよね」

―エレキテル連合さんは、向こう何十年活動していきたい、みたいな意気込みはありますか?

中野「もうほかの職業が、いろいろバイトもやったんですけど、続いたのがこれだけだったので。なんか、おかしなことしない限りはたぶんやっていくんじゃないかなと思います。その、不倫とかね」

橋本「そういうことがない限りはやりますね(笑)。ほかはできない」

中野「バイトできないもんね」

■中野「とっても深いところまで好きにさせる仕掛け用意してます」橋本「1人で5人に“エレキテル連合の感電パラレルを観なさい”って言ってください」

―バイトができないんですか?

橋本「そう。ほかがもうできない」

中野「なんかずっと同じ作業とはかできるんですけど。シール貼るとか。飲食店とかは無理ですね」

 

―できないですか。

中野「はい。さばけないです。お客さんを」

―最後に、ファンやこれからYouTubeを観る方にひと言お願いします。

中野「ファンのみなさまには、たぶん“私たちのことが好き”って言いにくいと思うんですね。私だったらイヤ(笑)。

 秘め事みたいに楽しんでくださってると思うんですけど、そういう楽しみ方ばっかりさせて申しわけないな、というところは感じているので、ちゃんと堂々と言えるように活動していきつつ、秘め事であるところもちょっと残しながら、いい感じで頑張っていくので、今後ともよろしくお願いします、ということですね。

 これから好きになっていただく方は、きっと先入観を持って見ていらっしゃる方が多いと思うんですけど、その感じで来てください。こっちの思うツボなので。その先入観を持ってきてみたら、とっても深いところまで好きにさせる仕掛け用意しているので。色眼鏡かけて見てくださいって感じです。ぜひよろしくお願いします。すみません、なんかまとまってなくて」

―橋本さんはいかがでしょうか?

橋本「『朱美ちゃんと細貝さん』を子どものときに見てた人が、“あれなんだったんだろう”と思って私たちを探すときに『感電パラレル』を、YouTubeを見てもらって、いまだにコント、キャラクターを作ってるよというのは知ってもらいたいので。これを読んだ人は、1人で5人に“エレキテル連合の感電パラレルを観なさい”って言ってください」

―拡散希望ですか(笑)

橋本「お願いします。拡散で、お願いします」

―(インタビュー終了後)よく考えたら、朱美ちゃんはダッチワイフですもんね。私も最近になって意味が分かったというか。高校生くらいの時に見て “でも人形ってなんだろう”って思っていて。面白いから笑っていたんですけど、あとになって“あっ、『細貝さんと朱美ちゃん』とか『仮出所妻さゆりちゃん』って、そういうことか!”って。

中野「そうなんですよ。アダルトコントなんですよ。だから、それは答え合わせしていただいて、こっちはよっしゃ、って感じですね。2回笑かせたっていう(笑)」

―まさしく、志村さんイズムですね。本日は、ありがとうございました!

 日本エレキテル連合プロフィール

橋本小雪 (左) 1984年11月13日兵庫県出身 特技/相方の世話、イラスト

趣味/カフェ巡り

中野聡子 (右) 1983年11月12日愛媛県出身 特技/日本画 趣味/小道具製作

 2008年結成。徹底的にディテールにこだわったコントで見るものにトラウマを与え続ける人気コンビ。演じるオリジナルキャラクターは約1000、衣装・小道具約10000点を所有している。「細貝さんと朱美ちゃん」のコントで生まれた「ダメよ~ダメダメ」は「2014年新語・流行語大賞」年間大賞受賞。ライフワークの単独公演は2014年より開催。YouTubeのコントチャンネル『感電パラレル』で新作を発表しつづけている。

 彼女たちがライフワークとしている単独公演の今年の開催も決定した。今回のタイトルは「何ダコレハ!」。10月14~17日、東京渋谷・ユーロライブで5公演が予定されている。

2021/7/4 17:30

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