「日乃屋カレー」79店中、一軒だけ販売する幻のラーメン。その中身とは

 チェーン店といえば、どの店も似通ったサービスと価格が、消費者の安心を担保する一方、それを退屈に感じる方もいるようだ。しかし、チェーン店にも関わらず店舗ごとに個性的なメニューがあると、そうした不満さえも解消させられる。今回は人気カレーチェーン店のある1店舗だけで食べられる奇抜なメニューをご紹介する。

◆人気カレーチェーン「日乃屋カレー」

 カレーチェーンといえば、お馴染みの「CoCo壱番屋」が圧倒的な店舗展開を見せている。それに追随するのが金沢発のゴーゴーカレーと、今回ご紹介する日乃屋カレーである。

 東京以外の方には馴染みが薄いかもしれないが、2013年の神田カレーグランプリで優勝し、その後殿堂入りを果たした人気店だ。現在では東京はもとより、関西や東北地方にまで79店舗を展開し、CoCo壱番屋の対抗馬として最右翼の躍進を見せている。

 その特徴は、関西発祥特有の甘みのつよいカレールーと、そのルーがライス全体にかかったフォルム。トッピングもこだわりの揚げ物が並び、固定ファンが多い。

◆湯島店のみに存在するメニュー

 そんな日乃屋カレーは、各店で安定的に美味しいカレーがいただけるが、湯島本店には他店では食べられないメニューが存在する。その名も「元祖カミナリそば」。名前からはどんなメニューなのかは想像できないが、カレーではなく麺類であることは間違いないようだ。

 早速、食券を購入し「元祖カミナリそば」の完成を待つ。店は、カウンターから厨房が見えるような作りになっているのだが、日乃屋カレーの他の店舗にはみられない茹で麺機が、厨房の一角に鎮座している上に、カレーの入った寸胴以外にラーメン用のスープの入った寸胴も用意してあり、ここ湯島店では麺類が中心的なメニューであることがわかる。

◆カミナリラーメンの全貌

 注文から数分で届けられたのは、味噌ラーメンのような一品。香りも確かに味噌ラーメンのそれだが、鋭いスパイスの香りのインパクトが強い。そして、茹でたキャベツとメンマ、さらに大ぶりのチャーシューが乗ったボリュームタップリのラーメンだ。

 スープを一口すすると、味噌の甘みもさることながらレッドペッパーの辛さと、山椒か花椒のような痺れ系の刺激が口の中に刺さる味付けは、ラーメンとしても個性的だ。カレーのルーは甘い印象の強い日乃屋カレーだが、こちらはかなり辛さの強い仕上がり。麺は中太のちぢれ麺で、食べ応えもある。ちぢれていることで、スープがよく絡み麺を啜るだけでも、いわゆる「カラシビ系」の刺激が休まることはない。

 一方で、トッピングされているチャーシューやキャベツは素材の甘みが特徴的で、スープの辛味をうまく中和して美味しい。量も多くしっかり辛い「元祖カミナリそば」、個人的にはかなり好みのラーメンだった。

◆なぜ、ラーメンがあるのか

 しかしなぜ、カレー専門チェーンの日乃屋カレーにラーメンがあるのだろうか。それは、創業者である日浦大社長の実家の稼業に由来する。

 日浦社長の実家は、大阪でいわゆる「昭和の町中華」を営んでいた。その店では、日浦社長の父がラーメンをつくり祖母がカレーをつくって、いずれも大きな評判を呼んでいたという。

 現在では、そのカレーが日乃屋カレーとして広く展開しているが、元々は中華料理屋出身ということもあってそのルーツたるラーメンを出している店舗、それが湯島本店なのである。

◆ラーメンだけでなくつけ麺も

 筆者が食したカミナリそばだけでなく中華そばやつけ麺も湯島本店では提供されている。つまり、カレーだけを食べて日乃屋カレーを知った気になっていても、それは同店の半面だけであるということであり、麺類を食べて初めて、日乃屋カレーの何たるかが見えてくると言えるのではないだろうか。

 アバンギャルドなメニュー展開は、後発店にありがちだが、日乃屋カレーでは本店だけの個性的メニューが食べられる。店の歴史にも触れる一品を食してみてはいかがだろうか。

取材・文/Mr.tsubaking

【Mr.tsubaking】

Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

2021/7/4 8:53

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