横浜DeNAベイスターズ「左打ち外野手だらけ」問題。高田GM時代の負の遺産か

◆交流戦3位と奮闘したベイスターズだが

 開幕の不振はどこへやら。横浜DeNAが交流戦18戦を9勝6敗3分けで3位、交流戦期間のチーム打率は.297で1位と復調気配である。

 もともと開幕不振の原因は外国人選手の来日手配ミスだった点を考えれば合流後、試合感が戻れば打線は問題なかったということだろう。しかし、交流戦防御率は4.90と11位。課題は投手力で、ファンからもどちらかといえば投手力改善に期待が集まっている。

 だが、編成数から見るプロ野球視点で見るともっとヤバい課題が横浜DeNAにはあると言わざるを得ない。それは高田繁GM時代に起きていた「左打ち外野手だらけ」問題だ。

◆右打ちが2人だけ! あまりに極端すぎたヤクルト監督時代の外野編成

 高田繁氏が横浜DeNAのGMとなったのは2011年5月、ここから2018年までGMとして横浜DeNAの編成における最高責任者として仕事をしていたことになる。

 そして、高田GMには外野手を左打者だらけにし、チーム不振の原因となった前例を持っていた。そう、東京ヤクルトで全権監督をしていた時である。

 ヤクルトの全権監督をしていたのは2008年から2010年の途中辞任までの間。この期間でヤクルトの支配下契約の外野手編成は以下のようになっていたのである。

2008年 右打ち4人 左打ち7人 両打ち1人

2009年 右打ち3人 左打ち6人 両打ち1人

2010年 右打ち2人 左打ち8人 両打ち1人

 ちなみに高田監督最終年だった2010年の右打ち2人は控えの志田宗大とレギュラーの立場だった飯原誉士で、両打ちでレギュラーだった福地寿樹が右打席に入らなければ、多くの試合で外野手の右打ちは実質的に飯原誉士ただ1人に頼っていた状態となってしまっていたのである。

 この年、飯原選手は打率.270で130試合出場と及第点の成績を残していたが、対戦相手からすれば左に強い投手をぶつけ、飯原だけ警戒すれば外野手の打順は心理的に楽な状態で戦えたことになる。

 飽和した左打ちの外野手は代打にまわり、大抵左投手をぶつけられて凡退を繰り返す。シーズン途中で最下位を走り、ファンから「高田やめちまえ」と野次られたのは、数字上から見ても当然だと思うわけで……

 結局小川淳司ヘッドコーチが監督代行となってからチームは巻き返し、借金19から代行したにもかかわらず最終的には貯金を4つ作って4位でシーズンを終えるのだが、翌2011年にはあまりにも手薄となっていた外野手の右打ちを補強するために、2009年に一場靖弘とトレードで放出していた右打ちの宮出隆自外野手が楽天を戦力外になっていたところを出戻りで獲得せねばならぬ状況であった。

 さらに濱中治、バレンティンに新人の又野知弥、川崎成晃まで5人補強した全員が右打ちなのである。

 崩れてしまった外野手のバランスを戻すため、この2011年のヤクルトは支配下外野手が総勢15人と膨れ上がり、チームの編成バランスを整え直すまで長い歳月を要することになってしまったのだ。

◆明らかに編成には問題アリなのに横浜DeNAのGM就任

 そんな明らかに編成に向いてないとしか数字上では見て取れない高田繁氏が1年しか経たぬうちに横浜DeNAのGMに就任したのは、筆者にとって驚き以外何者でもなかった。

 今では強くなった横浜DeNAの功労者の1人として挙げられることも多い高田GMだが、筆者から言わせれば、それまでの横浜が酷すぎたため相対的によく見えただけであり、編成のハンデを背負いながら中畑監督や経営陣、選手の努力で成長したようにしか見えない。

 それは結局、横浜DeNAのGMとしてもやはり外野手を「左打ちだらけ」にしたがっていたからである。支配下契約していた外野手の人数を左右打ち別に分けるとこのようになっている(人数はシーズン終了時)。

2012年 右打ち6人 左打ち5人 両打ち1人

2013年 右打ち7人 左打ち6人 両打ち1人

2014年 右打ち4人 左打ち6人 両打ち1人

2015年 右打ち4人 左打ち7人

2016年 右打ち4人 左打ち7人

2017年 右打ち4人 左打ち7人

2018年 右打ち4人 左打ち7人

 一目瞭然で右打ち選手が減少していることがわかるだろう。ヤクルト時代ほどではないにせよ、極端だったことに変わりはない。

 ちなみに高田GM最終年である2018年に在籍していた外野手の右打者は当時7年目の桑原将志、6年目の白根尚貴、3年目の青柳昴樹、2年目の細川成也だ。今でも在籍しているのは桑原と細川だけである。

 つまり、高田GMが退任してから、結局時間を要して外野手のバランスを整えていかねばならぬ状況なのである。

◆2021年は右打ち4人と左打ち6人

 今年に関しては主力として右打者のオースティンがいるが、右打者で安定した1軍戦力と評価できるのはほかに桑原。そして細川は成長が期待されている大砲候補のため、残っている右打者の実力は高いが、数が不足しており誰かが不調や怪我になるたびに右打者で埋めるのは難しい状況だ。

 年齢でみると空白期間の色がはっきり浮き上がる。右打ちの4人のうち、オースティン(30歳)と桑原将志(28歳)が年長順で1位、2位。細川成也(23歳)と蝦名達夫(24歳)が年少順で1位、2位となっており、中間には左打者がずらっと並んでいる。この左打者がずらっと並んでしまったバランスの悪さこそ、高田GMの影響なのである。

 しかし、今年の横浜DeNAは打線が頑張っている。このバランスの悪さを首脳陣や選手が一生懸命打開して奮起しているのが横浜DeNAの現在なのである。

 ただ、長期的に考えれば、未来の横浜外野陣にとって細川成也と蝦名達夫の2人が大きなカギを握っており、彼らの成長が5年、10年先が明るいのかどうかを決めるといってもいいだろう。

文/佐藤永記

【佐藤永記】

公営競技ライター・Youtuber。シグナルRightの名前で2010年、ニコ生で全ての公営競技を解説できる生主として話題に。現在はYoutube「公営競技大学」を運営。子育てやSE業界の話題なども扱う。Twitter:@signalright

2021/6/30 15:50

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