【映画レビュー】芳根京子が17歳から135歳まで演じ切る! 不老不死の世界を描く『Arc アーク』の不思議な世界観とは

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【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは芳根京子主演の最新作『Arc アーク』(2021年6月25日公開)です。

『愚行録』『蜜蜂と遠雷』などの石川慶監督作で、不老不死の世界を描いた、これまで観たことのない挑戦的な作品です。では物語から。

【物語】

17歳で子供を出産するものの、すぐに人に預けて、ひとりで生きてきたリナ(芳根京子)。

19歳のときにエマ(寺島しのぶ)という女性に出会います。彼女は、遺体を生きているように保持するプラスティネーションという技術を駆使したボディワークスを作るプロ。

リナはエマがプラスティネーションで遺体をボディワークスにしていく姿を見て、心惹かれ、エマの下で働くようになります。しかし、エマが会社を去ることになり、リナの人生に変化が訪れるのです。

【見たことのない世界が展開される!】

とにかく前半は見たことのない世界の連続でした。リナがエマから伝術される「プラスティネーション」という技術がすごい。

職人のように、コツコツと遺体を美しく仕上げていくのではなく、遺体のポーズを決めて、ロープを使って固定していくという作業は、遺体と一緒にダンスをしているよう。前衛的なパフォーマンスを鑑賞している気持ちになるんです。

またエマを演じる寺島さんのキレッキレの動きがかっこよく、リナが彼女のプラスティネーションを見て、憧れるのがよくわかる! ここからリナの人生は大きく変わっていくのです。

【愛する人と不老不死の世界へ】

リナとエマは実にうまくいっていたのですが、途中からエマの弟の天音(岡田将生)が登場してから、物語は急展開していきます。天音はプラスティネーション技術を応用して老化抑制の研究をしていたのです。

つまり不老不死の世界を作ろうとし、なんとそれを実行! 天音と恋に落ちたリナは、彼の研究に賛同し、不老不死の手術を受けて、若い体のまま、年を重ねていくことになります。

天音とリナは、恋人同士になるものの、ラブラブというより、運命共同体のような感じ。二人が作り出す不老不死の世界は、死や老化を恐れることなく生きられるけれど、計算されつくした永遠は、とても無機質でまるでAIの世界のようです。

【老夫婦の美しい生き様】

しかし、二人が作った「不老処置を受けていない人の施設」で、リナは利仁(小林薫)と妻の芙美(風吹ジュン)と出会います。芙美は人生最期のときが迫っており、短い時間を夫と一緒に慈しむように過ごしています。

この夫婦が登場してから「夫婦っていいな、こんな風に最後まで仲良く過ごせるなんて素敵!」と、愛情深い二人にほっこりし、感情を抑制した世界に愛情が流れ込んでくるように感じました。

また、かけがえのない時間というのは、死があるからこその幸福なのではないか、死は怖いけど、死があるから、人との関係も大切に育むことができるのではないかと……。そんな風に生死について考えさせられたりするのです。

【衝撃の新事実!芳根京子の好演!】

老夫婦のエピソードとともに、不老処置の行く末やリナの過去が現在に繋がって新事実が明らかになるなど、驚きの展開も見せていく本作。

17歳から135歳まで演じきった芳根京子さんは、登場シーンこそ自堕落な感じでしたが、エマや天音と出会い、どんどん浄化されていく姿は美しかったです。

石川監督の『愚行録』『蜜蜂と遠雷』と比べると、かなり変化球な映画なのですが、もう1回観たくなるんですよねえ。そんな魅力ある『Arc アーク』。映画をじっくり楽しみたい人向き、大人の作品です。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

『Arc アーク』
(2021年6月25日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督・脚本:石川慶
原作:ケン・リュウ『円弧(アーク)』(ハヤカワ文庫刊 『もののあはれ ケン・リュウ短篇傑作集2』より)
出演:芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、井之脇海、中川翼、中村ゆり/倍賞千恵子/風吹ジュン、小林薫
(c)2021映画『Arc』製作委員会

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