香港最大の民主派新聞が廃刊。最終号100万部は即完売

◆〈港人雨中痛別(香港人、雨の中のつらい別れ)〉

 6月24日、こう見出しを打って1つの新聞が26年の歴史に幕を閉じた。香港最大の民主派新聞『蘋果日報(アップルデイリー)』だ。1週間前に香港警察が「外国勢力との結託」を理由に国安法違反容疑で編集局長らを逮捕。同時に2.6億円相当の資産が凍結され、廃刊に追い込まれたのだ。

「24日には各地で最終号を求めて香港人が列をなし、蘋果日報の本社前では多く人が『いつかまた会おう』と声をあげました」(30代・香港市民)

 香港の人口は750万人だが、通常の10倍に当たる100万部が刷られた最終号は即完売。「それでも購入できなかった人の声がSNS上に溢れていた」(同)という。ただし、“別れ”は予想されたものではあった。

「昨年6月施行の国安法はもともと蘋果日報をターゲットにしていたのです。その証拠に現在、収監中の同紙創業者の黎智英(ジミー・ライ)は中国から『香港を混乱させた4悪人』の筆頭格として名指しで批判され、昨年8月には国安法違反などで逮捕・起訴されました。’19年の訪米時にはペンス副大統領らと会談するなど、香港内外で大きな影響力を持つ彼とその新聞を潰すのは中国としては既定路線だったのです」(富坂聰拓殖大学教授)

 香港史を専門とする倉田明子東京外国語大学准教授は「7月の中国共産党建党100年を前に、北京政府に批判的な同紙を廃刊に追い込んだ」と推察する。だが、これで民主化運動が潰えたわけではない。「100万部が即完したように、香港人が内に秘める灯は消えていない」のだ。

 実は同じ日、日本の新聞も香港で大きな話題を集めた。「朋友、蘋果 等你回來(友よ、復活を待つ)」と1面でメッセージを送った産経新聞だ。「リンゴの種は香港だけでなく、日本でも芽吹いていると感じた」(前出・香港市民)という。その芽から、再び大きな実がなることを祈りたい。

◆次に粛清対象となる香港の民主派メディアは……?

 蘋果日報の廃刊に伴い、新聞はほぼ親中一色に。

 テレビでは「RTHK」という公共放送が政府に批判的な特集も組んできたが、民主派寄りのディレクターが逮捕されるなどしたため、親中番組が増えているという。

 ネットでは完全な民主派の「立場新聞」が気を吐いているが、香港市民の間では「次の粛清対象では?」と噂されている……

取材・文/週刊SPA!編集部 写真/AP/アフロ

※週刊SPA!6月29日発売号より

2021/6/30 8:49

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