自粛期間で7kgも“ふくよか”になった妻。夫とご無沙汰になり、あるリベンジ法を思いつくが…
ステイホームの時間が増えたいま、 東京にいる男女の生活は大きく変わった。
その中でも華やかな生活を送っていたインスタグラマーたちが、こぞって夢中になったのが「#おうち美容」。
外からも内からも自分と向き合い「美ごもり」生活を送った人々には、いったいどんな変化があったのだろうか?
1つのアイテムが、人生を変えることもある。
東京で「#美ごもり」生活を送る人々の姿を、覗いてみよう。
今回は強くなれた女 ・有香(35)の話。
▶前回:「同じ場にいたはずなのに、男が選ぶのはいつもあの子…」選ばれる女と、選ばれない女の差
出産と自粛生活で、女として見てもらえなくなった有香(35)
「トモくん、もう寝た?」
2歳になる娘の燈(あかり)を寝かしつけてベッドに潜り込む。夫の友也がこちらに背を向けて寝ているが、返事はもちろんない。
「ねぇ、聞いてる?」
無言の夫に対して話しかける自分が虚しくなってきた。
本当に寝ているのか、狸寝入りなのかはわからない。燈を妊娠・出産してから夫は私にまったく触れなくなった。もう2年以上レスだ。
「はぁ…」
イライラする。眠いはずなのになかなか寝つけず、キッチンへ行って冷凍庫の中からアイスクリームを取り出した。冷たいアイスが、すっと体内に入っていく。
美味しさに浸りながらダイニングテーブルへ移動しようとした、そのときだった。
窓ガラスに映る自分の姿に、ぎょっとしてしまったのだ。
「あれ?私、こんなに太ってた…?」
目の前にはポヨンとした、締まりのない体型の女が映っている。
夫が抱いてくれない理由は、コレかもしれない。見たくない現実を急に突きつけられたような気がした。
女としてもう一度見て欲しい!そこで挑戦したダイエット方法とは
20代の頃はまだくびれもあったし、女性らしくて抱き心地のいい体つきだったと思う。
だが妊娠・出産して、体型は大きく変わった。
胸だけでなくお尻も垂れてきたし、くびれは消失。お腹周りには永遠に落ちないのではないかと思われるような、固くて重い、にっくき脂肪がついている。
ブラの上にも、しっかりとお肉が乗るようになった。
「今は産後だから、しかたない」
そう言い訳をしてきた。
出産して授乳をしていれば自然に体重が落ちるかと思っていたが、そんなのは大きな誤算だったと気づくのに時間はかからなかった。
自分でも、理由はわかっている。出産だけではない。
コロナ禍で家にいることが増え、運動不足にもかかわらず好き勝手に飲み食いしていたら、あっという間に体重が増えてしまったのだ。
「有香、一緒に走らない?その洗い物、僕が後でやるからさ」
見かねた夫が、燈を保育園に預けているタイミングを狙って、何度か声をかけてきたことがある。
リモートワークの合間を縫ってせっせと走りに行っていた友也。そのおかげか、同じような食事をしていたはずなのに、夫は一切体重が増えていない。
「無理むり。一人で行って来なよ」
「でも運動って、気分転換にもなるよ?」
友也からランニングに誘われても、走れるわけがなかった。そんな体力はどこにもない。
「燈を抱っこしているだけでも立派な筋トレだから。そもそも、私にそんな時間があるわけないでしょ?家から出るのも面倒だし」
どうしてわからないのだろうか。私は毎日の育児と家事で疲れている。何も考えていない無神経な友也に、いらだちばかりが募る。
結局、何度か声をかけてくれていた夫だったが、いつの間にかランニングに誘われることはなくなった。
そうして気がつけば、20代の頃より体重が7kgも増えていたのだ。
「どうしよう…」
窓ガラスに映った自分を見てショックを受けた翌朝。痩せようと決意はしたものの、何から始めればいいのかわからない。
7kgも落とすのは、相当大変だ。
まだ子どもも小さいし、ジムに行く時間はない。家でできることから始めるしかないが、そもそも運動なんて久しくしていない。
しかもヨガスタジオやジムに行きたくても、今の体型でピタピタのトレーニングウェアを着たくなかった。
(どうして運動をするのに、あんなぴったりとした、体のライン丸わかりなものを着ないといけないのだろう)
「ママ、ママ」
「は~い!YouTube見ようね」
だが朝食を準備している間、燈にYouTubeを見せようと携帯を持ったときだった。
「そうだ!これだ!!」
YouTubeには、無料でたくさんの動画がアップされている。家でできるフィットネス系の動画も多い。
お金もかからず、家でもできる。特別な器具は何もいらない。娘が寝ている間にできるうえ、ジムに行ったりして私の醜態を晒さずに済む。
「燈。ママ、変わるよ。強くなるよ!」
不思議そうな顔をしている燈を横目に、私は決意した。
娘のために、夫のために。…何より自分のために、痩せることを。
半年でマイナス5kg!痩せる決意をした女のダイエットプランとは?
もう一度、妻として。母として…。
宣言通り、まずは自宅でできるフィットネス系動画の中から、私にもできそうな簡単なものを始めてみることにした。
時間は、1日約20分。無理はしない。それだけを決め、とにかく1ヶ月続けてみた。
最初はひたすらツラいだけだった。体力もないし、ひとりでやっているのでサボろうと思えばいつでもサボれる。でも、ここで負けたら一生負ける気がした。
結婚して、母になり、私は強くなったはずだった。でも実際は夫にイライラし、子育てに悩む日々。自信がなかった。だからつい当たってしまう。
そんな自分をどうしても変えたい一心で、とにかく1ヶ月は頑張ろうと決めたのだ。
すると、不思議な変化が起こり始めた。
1ヶ月経つと、むしろ運動しないと気持ち悪いと思うようになってきた。体重も急激には落ちないが、2kg減。何より体重よりも体脂肪が減り、見た目がだいぶ変わってきた。
そして3ヶ月経つ頃には、ウエストにくびれが戻ってきたのだ。
ウエスト部分がゴムになっている楽チンな洋服ばかりだったのが、ジップアップのスカートや、デニムまで穿けるようになった。
「私、やればできるじゃん…!」
半年後。体重は5kg減り、肌ツヤも良くなっていた。
「有香、変わったね」
燈を寝かしつけてからダイニングへ戻ると、目の前に座る友也がまじまじと私を見つめてくる。
「でしょ?5kgも痩せたんだよ。頑張って良かったなぁ〜」
鼻歌交じりでくるくると回って見せると、夫は目を細めている。
「見た目もだけど、中身も。燈を産んでからの有香、ずっとイライラしてたから。…正直に言うとね、怖かったんだよ。塞ぎ込んでいるのがずっと気になっていて」
たしかに私はずっといらだっていた。初めての子育てで、心に余裕がなかった。
でも毎日適度に汗をかいているうちに、心までスッキリ、デトックスできたのだ。
寝つきも良くなったし、余裕ができた。
以前は少し動いただけで息が切れるし、体力がなくてすぐにしんどくなっていた。でも今は燈と一緒に公園を走り回っても平気で、娘の笑顔も増えた気がする。
「そうだったんだ。ごめんね、私もキツい態度ばかりとっていて」
せっかく好意でランニングに誘ってくれていたのに、私はただのお節介くらいにしか思っていなかった。でも友也なりに一生懸命考えた末の行動だったと、今ならわかる。
「あのさ、有香。二人目…作るか?」
しんみりとしている中で突然飛び出した夫の発言に、思わず友也を二度見してしまった。
男は、単純だ。女らしい体型になった途端に、こんなにも変わるものなのだろうか。
おかしくて吹き出しそうになるのをこらえながら、私は笑顔で大きく頷いた。
◆
今は便利な時代である。お金をかけなくても、逃げ出さず地道にちゃんと自分と向き合っていれば、必ず結果はついてくる。
そして見た目が変わると、周囲の人の態度が変わるだけでなく、自分の心もスッキリと変化する。
もう逃げることはやめた。笑顔で毎日過ごせるよう、私は今日もスキマ時間でコツコツ運動を続けている。
娘のために、夫のために。何よりも、自分のために…。
▶前回:「同じ場にいたはずなのに、男が選ぶのはいつもあの子…」選ばれる女と、選ばれない女の差
▶NEXT:7月5日 月曜更新予定
男だって、綺麗になれば人生が変わる!