マッチングアプリで出会って800万円騙された! 仮想通貨「国際ロマンス詐欺」に注意

 仮想通貨の価格上昇に比例するように、仮想通貨を悪用した詐欺被害が増えている。今年4月には金融庁・消費者庁・警察庁の連名でマッチングアプリを用いた仮想通貨の投資詐欺への注意を促す文書が発表された。一体、どのような被害なのか。

◆注意!仮想通貨「国際ロマンス詐欺」が横行中

 詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明氏が話す。

「ビットコイン相場が盛り上がり始めた’20年後半から、私の元にも多いときで一日2件の被害相談が来るようになりました。被害者はいずれも投資経験がない人ばかりで、男女問わず被害に遭っています。一方、詐欺師は全員が外国人。中国人や台湾人、シンガポール人を名乗ることが多いようです」

 被害者の多くは国内のマッチングアプリで詐欺師と出会っている。

「イケメンや美女のプロフィール写真に設定した詐欺師が一般のユーザーにアプローチをして、親密な関係を構築していき、次第に詐欺サイトなどに誘導するのです。こういった恋愛感情を悪用した『国際ロマンス詐欺』は昔からありましたが、仮想通貨やマッチングアプリを悪用している点が、まさに今の時代を象徴しています」

◆被害者の生活に入り込む

 マッチングアプリ経由でアプローチしてきた詐欺師は「結婚を目的とした真面目な関係」や「海外の友達」といった関係性を装い、投資とは無関係のやりとりを続けて被害者の生活に入り込むのだ。

「ある程度親密になったところで、詐欺師は『自分は投資に詳しい』などとアピールし、架空の仮想通貨投資サイトやオンラインカジノに誘います。もちろん架空サイトであり、実際にトレードは行われていませんが、巧妙に作られているサイトなので、投資初心者が見れば信じてしまうのです。

 しかし、言われるままにトレードを繰り返しているうちに投資資金がかさみ、いつしか出金申請をしても応じてもらえなくなる。最後は詐欺師との連絡も途絶えます。私が把握しているなかで最も大きな被害額は、なんと6000万円です」

◆詐欺被害に遭った30代女性

 都内でOLとして働く30代女性・A子さんも仮想通貨を悪用した詐欺被害に遭った一人だ。

「昨年末、マッチングアプリで都内に住んでいるジャックというシンガポール人男性に出会いました。すぐにLINEに誘導されて親密なやりとりをするようになって。彼は私のことを『BABY』とか呼んでいましたね。もちろん、すぐに信じたわけじゃなくて、最初は彼がアップした画像をグーグル画像検索にかけて、『拾い画』じゃないかとリサーチしていました」

◆一度は出金させて被害者を信用させる

 画像検索では何も引用結果が出ず、その後もやりとりは続いた。

「彼はその後も東京の風景写真を送ってきたりして、私を信用させようとしていました。でも『会おう』と伝えてもはぐらかされるばかり。出会ってから1か月ほどたった頃、彼は『僕は投資のプロだから、僕がやっている投資をしてみてほしい』と言いだして、海外の投資サイトを紹介されました。

 最初は少額を入れて彼の指示通り取引をしたら利益が出て、実際に口座への出金もできたんです。同じことを2回繰り返してすっかり信じてしまい、気づいたら貯金を取り崩したり、負けが込んで資金が足りなくなったら借金もして……最終的な送金額は800万円にも。お金は返ってきませんでした」

 その後、ジャックはLINEもブロックし、いつしかサイトも閉鎖されていたという。こういった被害は相当数いるとみられる。

◆仮想通貨投資の偽サイトに誘導されて400万円の被害

 自身も詐欺被害者であるBさんはSNSを使って被害者グループをつくった。すると、すぐさま100人弱が集まったという。

「僕自身、同様の手口で約400万円をだまし取られました。グループ内の仮想通貨に詳しい人がビットコインの送信先アドレスを追跡しましたが、海外取引所に入金されてから先を追うことはできませんでした。

 今は僕らのグループだけでも数億円の被害総額です。警察もこういった詐欺案件はなかなか被害届を受理してくれないし、『恥ずかしい』と被害を言いだせない人が大勢いると考えれば、まだまだ氷山の一角だと思います」

◆詐欺に遭わないためには?

 では、詐欺に遭わないためにはどのような心がけが必要なのか。

「まずは金融庁の『暗号資産交換業者登録一覧』に掲載されていない業者のサイトでは取引をしないことが、何よりの自衛です。あとは詐欺被害に遭ったことを安易にSNSで発信するのもキケン。『お金を取り戻す方法を知りたくないですか?』などと、被害者をだまして二次被害をもくろむ新たな詐欺師のターゲットにされることもあるので注意が必要です」(多田氏)

 悪者は常にネットの中でターゲットを探しているのだ。

◆●被害CASE 1 A子さんが騙された手口の詳細

 大手マッチングアプリで日本在住のシンガポール人ジャックに出会ったA子さん。ジャックは「二人の家を買うためだ」「僕のことを信じてほしい」などと投資を勧め、ご丁寧にも画面キャプチャや矢印を駆使して詐欺サイトでの投資方法をレクチャーしてきたという。直接会いたいと言っても「交通事故に遭った」「コロナに感染した」などと言い訳をするばかり。A子さんは詐欺だと気づき警察に届け出たが、積極的な捜査は行われておらず、返金のメドは立っていない。

◆●被害CASE 2 Bさんが騙された手口の詳細

 被害者グループを結成したBさんは、チャットアプリで「仮想通貨アナリスト」を自称する台湾人女性と知り合った。仮想通貨に興味があったのが災いし、女性に指示された偽サイト「QMCoin」にビットコインを送金する。最初は1万円、次は10万円、気づけば100万円にもなっていた。さらに「レバレッジの倍率を上げるために追加入金が必要だ」と言われ、結局400万円弱を奪われてしまう。最寄りの警察署に連絡をしたが被害届の受理すらされなかった。

【多田文明氏】

詐欺・悪質商法ジャーナリストとして執筆や番組出演、取材協力等その活動は多岐にわたる。著作『ついていったら、こうなった』はベストセラーとなりテレビ番組化

<取材・文/週刊SPA!編集部>

―[[総力大特集]仮想通貨]―

2021/6/27 15:53

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