「帰宅する度に、彼女が…」結婚の意思はあったのに、2年の同棲で男が別れを決めた理由
男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?
できなかった答えあわせを、今ここで。
今週のテーマは「同棲前に親に挨拶まで来たのに、破局した理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:「親に挨拶までして 、同棲を2年もしたのに…」男がどうしても結婚に踏み切れなかった理由
あれは、雨が1日中降り続いている土曜のことだった。
近くのスーパーまで買い物へ行った、その帰り道。同棲中の彼女に耐えきれなかった僕は、思いのたけを伝えたのだ。
「奈津美。ごめん、結婚できない…」
雨音が、大きくなる。
「ごめん礼央。なんか言った?聞こえなかった」
傘をさしていた奈津美に、僕の声が届かなかったようだ。クリッとした瞳で、まっすぐ僕を見つめる奈津美。でも、答えはもう出ていた。
「奈津美のことは好きだし、こうして一緒にいるのはいいんだけど、結婚はできない」
スーパーの袋が、ガサッと落ちた。目の前で、彼女が泣いている。
でもどうしても、僕は彼女と結婚はできないと思ったのだ。
2年も同棲したのに…。男が別れを決めた理由
A1:男のケジメとして、同棲前に挨拶へ行くのは当然だと思っていた。
奈津美と出会ったのは、まだ僕が転勤先の福岡に住んでいた4年前のこと。
東京へ出張で戻った際に、先輩から誘われた飲み会の場で出会ったのがキッカケだった。
年は2つ上で、愛嬌があり、笑顔が可愛らしい人だな、と思った。
そしてその場で連絡先を交換し、奈津美が積極的に連絡をくれたおかげで交際に発展したのだ。
最初は、遠距離だった。だがちょうど交際2年目で僕が東京へ戻ることになり、「それならば一緒に暮らそう」ということで、同棲をすることになった。
それまで、実家暮らしだった奈津美。
大事な娘さんだし、同棲する以上ちゃんと挨拶を済ましておかなければならない。だから僕は、一緒に暮らす家を決める前に挨拶をしようと、彼女の実家に伺った。
「奈津美さんとお付き合いをさせていただいている、中尾と申します」
緊張しなかったといえば嘘になる。結婚の申し込みをするわけではないが、やはり交際相手の実家へ挨拶に行くのは多少の覚悟が必要だから。
そしてもちろん、奈津美のご両親からは想定していた質問も飛び出してきた。
「将来のことは、考えているんですか?娘もいい年齢ですし…」
親御さんが心配するのも、当たり前だろう。この時奈津美は32歳で、僕も真剣に将来を考えての同棲だった。
「結婚を前提に、お付き合いさせていただいております。同棲も、中途半端な気持ちではありません」
そう伝えると、奈津美もご両親も、心底ほっとした顔をしていた気がする。
「お父さん、お母さん。私も結婚する気でいるから、礼央と一緒に暮らすことを許して欲しいの」
「まぁそこまで真剣に娘のことを考えてくれているのであれば…」
こうして、晴れて同棲がスタートした。
だがもちろん、一緒に暮らし始めると“現実”が襲いかかってくる。
引っ越し当日。荷ほどきをしながら、早速奈津美の結婚攻撃が始まった。
「ねぇねぇ、ちなみに結婚はいつくらいを考えているの?」
「まぁ1~2年後くらい?」
「本当に!?期待して待っているね!」
— これから、毎日言われそうだなぁ。
そんな懸念を抱きつつ段ボールを片付けていると、ふと彼女の荷物の多さに気がついた。
「奈津美荷物多くない?」
「そうかなぁ」
「アルバムまで持ってきたの?」
「そうそう!見る?中学の時のアルバムかな。私ね、すごくモテたんだよ〜。この男の子も、この男の子も私のこと好きだったの」
何も聞いていないのに、一人で機関銃のように話し始めた奈津美。永遠に続く自慢話を、話半分で聞いていた。
「ちなみに成績も良くて。さらに吹奏楽部の部長だったんだよ。すごいでしょ?」
「へぇ〜。すごいね」
適度な距離感が保たれていた遠距離恋愛から、いきなり同棲を始めたのが悪かったのだろうか。
「ちょっと礼央、聞いてる?次、高校のアルバムも見る?そこでも私モテてさ」
「奈津美、可愛いもんね」
「ありがとう♡」
それとも、この日に僕は気がついておくべきだったのだろうか。
でもどのみち、2年の同棲で徐々に思い始めるのだ。「彼女とは結婚したくない」、と…。
最初はうまくいっていたのに…男が結婚したくない女とは!?
A2:“自分、自分”でうるさい。家族になってもマウンティングがありそうで嫌
最初はうまくいっていたと思う。もちろん喧嘩もあったけれど、話し合って解決してきた。
だが話し合っても解決しないことがあった。それが、奈津美の性格だった。
「このワイン、美味しいでしょ?知り合いの社長さんからもらったんだ。その人、有名な飲食店の経営者で。仲良しだから、特別にくれたの」
外へ行けなくなった分、夜ご飯の時に家で晩酌するのが僕のストレス発散にもなっていた。
「何系の店なの?」
「イタリアンで、都内にいくつも店舗があるんだよ。そうだ、今度そのお店一緒に行こうよ。事前に社長に連絡しておく!私が行けば、ワイン1本くらいサービスしてもらえるんじゃないかな」
同棲を始めてしばらくするとすぐにパンデミックになってしまったため、家で一緒に過ごす時間が一気に増えた。
ただこの平和な晩酌タイムで、いつも気になっていたことがある。
「今度、京都に行かない?知り合いに、京都好きの人がいて。予約の取れない名店の席を持っているから」
「それ、俺が行ってもいいの?」
「うん、いいでしょ。…でも礼央って京都詳しい?」
本人は、いたって無自覚なのだと思う。けれども奈津美は会話の中で、”自分のほうが上”とも捉えられるようなマウントを取ってくることが多かった。
別にくだらないことなので最初は気にも留めていなかったが、さすがに毎日このトーンで会話が続くと辛くなってくる。
そして何よりも、話が長い。
「あまり詳しくはないかな」
「もったいない!でも京都は詳しい人と行くに限るんだよね。行けるお店も全然違うから、行くなら私と一緒に行こうね。京都在住の友達もいるし、京都へわざわざ食事をするためだけに通っているおじさんたちもたくさんいるから。そのコネで、どこかいいお店にも行けるはず」
いちいち上から目線で、言い方は悪いけれど、段々と鬱陶しくなってきた。
— 奈津美と話していると、疲れるんだよなぁ。
最初は我慢していたけれど、オチもなくただ自慢ばかりの奈津美のなが〜い話を聞くのが面倒になってきたのだ。
そして、奈津美が34歳の誕生日を迎えた時のこと。
「礼央、将来のこと考えているの?」
「考えているよ。でもちょっと待って」
正直、奈津美と結婚して永遠にこのお喋りと自慢トークに付き合わなければならないのかと思うと、うんざりする。
一緒にいて楽しいならば話は別だが、最近は奈津美とずっといるのが苦痛でもあった。
「わかった。でも私だって、いつまでも待てないからね?他の男のところに、行っちゃうよ?こう見えて、結構モテるし」
「知ってるよ、奈津美がモテることは」
その“私ってモテるのよ”アピールはなんなのだろうか。彼氏に対して、その自慢は必要なのだろうか。
僕がもっと、心の広い人間だったならばよかったのかもしれない。でも残念ながら、そこまで心は広くない。
彼女の自慢話にずっと付き合っていけるほど、僕は大人ではない。
男だって話を聞いて欲しい時もあるし、基本的に褒められたい生き物だ。
特に結婚となると今後一生のことであり、奈津美の話に付き合いきれない自分がいた。
「奈津美。ごめん、結婚できない…」
彼女はきっと、話を黙ってニコニコと聞いてくれ、“可愛いね”と褒めてくれるような懐の深い男性といたほうが良い。別れるなら、1日でも早いほうがよい。
同棲前に、挨拶には行った。だが実際に一緒に住んでみて、状況が変わることはいくらでもあり得る。
なので「同棲前の挨拶=結婚確定」では一切ないということを、僕は伝えておくべきだったと今、反省している。
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