トイレが外から丸見え。雑居房ではストレス満載の「刑務所」生活

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 罪を犯した受刑者が収監される「刑務所」。真面目に暮らしている人ならば、一度も入ったことなどないはずだ。いわゆる“塀の中”、一般社会から隔離された世界である。インターネットやSNSが発達した今でも未知の部分が多い。

 受刑者が日々を過ごすことになるのは、一般的に「雑居房」あるいは「独居房」だ。そこは一体、どんな場所なのか。

 ここでは、桐蔭横浜大学副学長・教授で、元法務省刑事施設視察委員会委員長、刑務所や少年院、女子少年院などの矯正施設を誰よりも視察してきた河合幹雄氏による新刊『現代 刑務所の作法』(ジー・ビー)から一部を抜粋。イラストの解説付きで紹介する。

◆トイレは外から丸見え! ストレス満載の雑居房生活

 刑務所に収監された受刑者が日常生活を送る部屋は2種類ある。雑居房と独居房だ。

 雑居房は病院の大部屋、独居房は個室と考えるとイメージしやすいかもしれない。雑居房は12畳程度の広さがあり、定員は6人となっている。それでも一時期、定員6名に対して8〜9人の受刑者が身を寄せ合っていることがあった

 いわゆる刑務所の過剰収容問題だが、現在は緩和されている。雑居房で暮らす懲役囚は、平日の昼間は刑務作業に出るのが原則となっている。

 そこで休憩などを含めて1日9時間を過ごすわけだが、それ以外の時間は雑居房から一歩も出ることができない。トイレや洗面台が設置されてはいるものの、トイレは外から中が見えるようになっていて慣れないうちは落ち着かない。雑居房はとことんプライバシーのない場所なのだ。

◆口論程度は日常茶飯事

 罪を犯して収監されているのだから不満のいえた筋合いではないが、このような状況なのでストレスが溜まる。口論程度は日常茶飯事で、それがケンカに発展することもある。とはいえ、だからといって部屋を出て行くわけにはいかない。同房の者と折り合いが悪くとも、耐え忍ばなければならないのだ。それも懲役が終わるまでの長期間である。

 そこで、なめられないように虚勢を張る受刑者もいる。シャバでの権力や裕福さを過剰にアピールする作戦だ。いわばハッタリだが、当然バレたときは逆効果となってしまうため、さじ加減が重要である。

 誰も彼もがストレスにさらされた日々を送る雑居房。火に油を注ぐことがないように、イビキの習慣がある者は、みんなが寝静まったのを見はからってから眠りにつくという。不要なもめ事を回避するため、ときには涙ぐましいまでの努力が必要なのだ。

◆トラブルメーカーは独居房へ収容される

 独居房は文字通りのひとり部屋。3畳ほどしかないが、書き物机に私物を置く棚、洗面台やトイレもある。ほかの受刑者に気を使わずに済むが、話し相手がいないのは精神的にきつく、ともすれば孤独と退屈に押しつぶされてしまう。対人関係のトラブルとは無縁なのにもかかわらず、独居房を避ける受刑者が多い理由だ。

 独居者の多くは、集団生活ではほかの受刑者に悪影響を与えるおそれがある者。たとえば同性愛者や暴力団の幹部などだ。規律違反者を取り調べたり、反省を求めたりするため懲罰(ちょうばつ)目的で収容することもある。懲罰のための収容は閉居罰(へいきょばつ)といい、その場合はラジオ放送も聴けず、読書も禁じられる。必ずしも希望通りにはならないが、勉学目的のため願い出て独居房に入る者もいる。

 また、独居房のひとつに保護房というものもある。逃亡のおそれのある者、暴行・傷害・自殺・自傷のおそれがある者などが入れられる。

◆独居房での生活パターン

 独居房での生活には3パターンある。まず、夜間独居者。昼は工場で刑務作業を行い、夜は独居房に戻る。一定のプライバシーは欲しいし、対人トラブルはご免。でもずっとひとりきりは寂しいという人には最適かもしれない。

 次に昼夜間独居者。工場での刑務作業は認められず、独居房で封筒貼りなどの軽作業を黙々と行う。集団生活に不適格な者、懲罰中の者はこのパターンとなる。運動や入浴、面会などのほかは独居房内で過ごし、室外に出る場合でも単独行動が原則だ。

 最後に、他者といっさい接触厳禁なのが厳密独居者。ほかの囚人を扇動するおそれがあるボス的存在、ケンカの常習者など、保安上隔離が必要な者が該当する。夜間独居者や昼夜独居者は、入浴時などにほかの受刑者と会う機会が得られるが、厳密独居者はそれもない。

<監修/河合幹雄、イラスト/熊アート>

【河合幹雄】
法社会学者。京都大学大学院にて法社会学専攻後、フランスの名門法学研究科であるパリ第2大学へ留学。その後、京都大学法学部助手を経て、現在、桐蔭横浜大学法学部教授・副学長。公益財団法人矯正協会評議員、全国篤志面接委員連盟評議員も務める。ほか、日本犯罪社会学会理事、日本法社会学会理事、日本被害者学会理事を務め、警察大学校教員、嘱託法務省刑事施設視察委員会委員長などを歴任した。著書に『日本の殺人』(ちくま新書)、『もしも刑務所に入ったら』(ワニブックス)など。

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