療養中のオートレーサー・森且行がFAXで神対応。突然送られた「男気FAX」の中身

 昨年11月3日にSG第52回日本選手権を制し、話題となったオートレーサーの森且行選手。勢いそのままに2021年は飛躍の年になると誰もが思った矢先の今年1月、レース中の接触事故で落車してしまい骨盤と腰椎を骨折する重症を負ってしまった。

 復帰まで約1年はかかるとも言われ、現在も療養中である。そんな森且行選手が意外な形で登場し、オートレースファンを驚かせたのである。

◆準優勝戦勝者のインタビューで起きた異例の謝罪劇

 森且行選手登場の伏線は6月12日、飯塚オートのG1開設記念の準決勝戦終了後の勝利選手インタビューで起きた。準決勝戦では、2着までの選手が決勝戦に勝ち上がる。このレースの1着は荒尾聡選手、そして2着には新井惠匠選手が入ったのであった。新井選手はそう、森且行選手の落車事故で接触した選手である。

 インタビューはよくある勝利選手インタビューのように、レースの振り返りと優勝戦への意気込みを語るという形で進んだ。

 そしてそろそろ終わるかと思われた矢先、新井選手が「あ、もうこれで終わりですか? もう一つだけいいですか?」とインタビュアーをさえぎって森且行選手に対して謝罪の言葉を述べ始めたのである。少々長いがそのやり取りを書き起こしたい。

新井選手 あ、もうこれで終わりですか? ちょっともう一つだけいいですか?

インタビュアー あ、どうぞどうぞ

新井 あの……えっと、ここで1月に森さんを怪我させてから、こういう場に立つのは初めてで、ちゃんと謝っておきたいなと思って、今、大丈夫ですか少し……

インタビュアー はい、大丈夫です

新井 えっと、森さん、そして、そして森さんのご家族、関係者の皆様方、そしてあの……森さんの沢山のファンの皆様。自分のせいで、森さんを怪我させてしまって本当にすみませんでした。これからは(涙が溢れ、タオルで拭いながら)なるべく安全なレースを心がけて強くなっていきたいと思います。いままで、たくさんのご迷惑をおかけしてすみませんでした。そして自分のことを支えてくださった皆様、ありがとうございました

 インタビューも終わり、スタジオからは「レースですから(仕方ないことですよ)……」というフォローも入ったように、勝負の世界では止むを得ない事故もある。

◆新井選手には悪意はなかったが……

 オートレースに限らず、レースに事故はつきものである。接触し怪我をさせてしまった選手に対して一部から心ない誹謗が飛んでしまっていたのは事実だ。もちろん、接触した新井恵匠選手に悪意などあったわけがない。

 だが、新井選手には自責の念もあったのだろう。過去にG2を2回、G1を1回優勝している実力者だった新井選手の成績は事故後から落ち気味となり、優勝戦に乗れたのは一般戦で2回のみ。

 精神的に引きずったものがあったかなかったかはわからないが、苦戦していたのは明らかだった。途中、目頭をタオルで押さえるようにして言葉を口にした姿からは、その苦悩が痛いほど伝わってきた。

 だが、この謝罪が翌日の優勝戦前に新たな展開を迎えるとは、新井選手自身も想像しなかったことだろう。

◆応援メッセージ募集FAXに「森且行さん」からメッセージ

 翌13日の12Rに行われた優勝戦。レース前に行われる試走も終わり、放送では予想の話から始まり、オートレースでは定番となっている選手へのFAXで送られてきた応援メッセージを読み上げるコーナーが始まった。そこで衝撃のメッセージが読みあげられたのである。

「新井恵匠選手に森且行選手から届いています」

 中継を見ていたファンは目が点になったことだろう。そう、昨日の新井選手の謝罪を受け、森且行選手本人が“応援メッセージ”を送ってきたのである。全文を書き起こしておこう。

「昨日の放送を通じてメッセージありがとう。レーサーである限り、事故はお互い様なので恵匠は悪くないよ。オートレースファンのみなさんも同じ気持ちだと思います。これからもまた、いいレースでオートレースを盛り上げていきましょう」

 本当に森且行選手のメッセージなのだろうか?と、ファンの間でも騒然となったこのメッセージ。だが、元飯塚オートレースのキャンペーンガールで、現在もオートレース番組に出演するAKIさんがツイッターでこう呟いたのである。

 森選手のメッセージは本物です!笑

 安心して下さい

 ファンもこれを知り、森且行選手の神対応に称賛の声が上がったのである。

◆やはりトップスターであり、トップアイドル

 とは言え、メールやSNSでハッシュタグを付けてメッセージを送るなどの方法が当たり前の現代。森且行選手もFAXでメッセージを送ったのかというは、やや気になるところである。

 ちなみにこの応援メッセージコーナーは、FAXのみで募集しているため応援メッセージを送るファンの熱意はかなりのもの。温かいメッセージに溢れるこのオートレース放送の定番システムは他の公営競技中継とは一線を画しており、是非ともこのまま続けてほしいものである。

 新井選手の謝罪も泣けたが、森且行選手の返しもまた泣けるものがある。やはりトップスターであり、トップアイドルなんだと実感した出来事だったのであった。

文/佐藤永記

―[公営競技生主・シグナルRightのひたすら解説]―

【佐藤永記】

公営競技ライター・Youtuber。シグナルRightの名前で2010年、ニコ生で全ての公営競技を解説できる生主として話題に。現在はYoutube「公営競技大学」を運営。子育てやSE業界の話題なども扱う。Twitter:@signalright

2021/6/26 8:53

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