同性の夫と挙式した男の思い。「一生隠して生きなさい」と母は言ったけれど

◆「一生隠して生きていきなさい」と言った母を変えたもの

 目前に迫る東京五輪は、基本コンセプトに「多様性と調和」を掲げ、通常国会でLGBTへの理解を進める法案の成立が模索されていた。

 しかし、「差別は許されない」とする文言に自民党内から反発が起こり、見送りに。LGBTの当事者でパートナーズ婚支援を行う七崎良輔さんは語る。

「僕は母にカミングアウトしたとき、『一生隠して生きていきなさい』と言われました。昔の人間である母にとって、ゲイは“オカマ”で、後ろ暗い存在だったからです。普通じゃないし、生きてちゃいけない。そう思いながら10代を過ごしました」

 その母を変えたのは「制度」だった。

「パートナーシップ制度の導入や同性同士の結婚を認めないことへの違憲判決など、社会的に認められたことで、母は次第に受け入れてくれるようになりました。『この人たちは普通じゃないけれど、理解してあげましょう』では、結局、差別はなくならない」

◆「生きていてはいけない」なんてもう思いたくない

 当たり前の暮らしができれば、それで十分だと七崎さんは言う。

「生まれつきのマイノリティでも左利きやAB型の人は差別されない。それと同じで、僕はただ、普通に生きたいだけなんです」

 政治家がなんと言おうと、「生きてちゃいけない」なんてことは絶対にない。

【七崎良輔】

’15年、夫とともに「LGBTコミュニティ江戸川」を立ち上げる。文春オンラインで連載された漫画『僕が夫に出会うまで』は累計4700万PV以上。世界各国から出版のオファーが寄せられており、原作エッセイは台湾でも好評発売中

撮影/芝山健太 ヘアメイク/高部友見 取材・文/宮下浩純 ロケーション協力/七崎さんが挙式した築地本願寺にて

2021/6/24 8:52

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