男の更年期障害、自粛生活で深刻化。男性ホルモンの減少が“万病のもと”
「更年期障害=女性特有」の症状と安易に考えるのは、非常に危険!男性も発症するうえ、症状に気づきにくいぶん重症化しやすい側面さえある。長引く自粛生活で誰しもストレスを抱えているなか、着実に忍び寄る男性更年期障害の実態とは?
◆自粛生活の影響で男性の更年期障害は深刻に!?
まだ日が上りきらないうちに目が覚めた。眠気はあるのに、熟睡できない日がもう何日も続いている。何となく不調で性欲もない。疲れが抜けきらない鉛のような体を無理やり動かし、気が乗らない身支度を始める。今日も満員電車に揺られると思うと憂鬱だ……。
年を重ねるにつれて、心身の不調を感じている読者貴兄は多いだろう。しかし、不調の原因を単なる「老化」と考えるのは早計だ。
「さまざまな不調の原因は、男性更年期障害のせいかもしれません」と警鐘を鳴らすのは、医師でメンズヘルス専門家の平澤精一氏。
「男性更年期障害の主な要因である男性ホルモンの低下は、LOH症候群と呼ばれ、人と会わない、運動をしない、偏った食生活、ストレスなどによって引き起こされます。長引く自粛生活のストレスや運動不足によって男性ホルモンが減少しやすく、LOH症候群になりやすいので、コロナ下の生活は男性更年期障害の症状が出やすい環境であると言えます」
◆男性の場合、自分で気づかないケースがほとんど
更年期障害は女性特有の症状だと思うかもしれないが、男性も加齢とともに男性ホルモンの分泌は徐々に減少。これがストレスなどをきっかけに急激に減少すると、女性と同じように更年期障害の症状が出現するのだ。
国内の潜在的な男性更年期障害の患者数は約600万人。中高年の6人に1人とも言われている。
「しかし男性の場合、自分で気づかないケースがほとんど。たとえ心身に不調があっても、更年期障害を疑う人はほとんどいません」とは、男性更年期外来で多くの患者の治療にあたってきた泌尿器科医の市岡健太郎氏だ。
じつは市岡氏も、30代にして男性更年期障害に悩まされた過去がある。
「とにかくやる気が出なくて、仕事を先延ばしにしたり、連絡ミスが増えたりしていました。当時は開業したばかりで仕事が多く、疲れが出たのかなと楽観視していたのですが、症状は改善するどころか、悪化の一途をたどるばかり。これはおかしいとホルモン検査をしてみたところ、案の定、異常な数値を示していました。恥ずかしながら、医師である私もすぐに気づくことができませんでした」
◆男性ホルモンの補給で一発逆転の可能性も!?
思い当たる節がある方は、チェックシートで自己診断を。点数によって症状の状態が判断できるが、市岡氏は「一つでも生活に支障をきたすレベルで悪化しているなら、それだけで注意信号です」と断言する。
まさか自分が……と感じるかもしれないが、男性更年期障害かどうかは検査ですぐにわかるという。
「数千円の簡単な血液検査で判断できます。男性ホルモンの数値が基準値よりも低ければ、すぐに治療に取りかかれますし、違うならうつ病の可能性を疑うこともできる。気後れせずに調べてみてほしいですね」(市岡氏)
◆「もう枯れた」と諦めている人こそチャンス
また、精神科医の和田秀樹氏は男性ホルモンを意識して補うメリットを教えてくれた。
「若いときは男性ホルモンが旺盛な人でも、年齢とともに下がってきます。これは老化現象でもありますが、運動や食生活で改善することや、ホルモン注射で男性ホルモンを意識して補ってあげることはできる。
40代までは勝てなかった相手にも、40代以降は男性ホルモンの力で一発逆転できる可能性も十分にあると思いますよ」
年だから仕方がない、もう枯れたんだと諦めている人こそチャンスかもしれない。
【メンズヘルス専門家・平澤精一氏】
東新宿のマイシティクリニック院長。早期から男性更年期障害の治療に取り組んできた。保険診療による治療から予防医学まで、常に患者本位の医療を心がけている
【泌尿器科医・市岡健太郎氏】
’11年、京都市内にいちおか泌尿器科クリニックを開院。男性更年期障害が発症した経験を生かして、クリニックならではの親近感をモットーに、日々の診療にあたっている
【精神科医・和田秀樹氏】
現在は、アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した和田秀樹こころと体のクリニックの院長を務める。専門は老年精神医学、精神分析学、集団精神療法学
<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/林 紘輝 モデル/小林亮介(古賀プロダクション)>
※週刊SPA!6月22日発売号の特集「それ、更年期かも?」より
―[それ、更年期かも?]―