冷凍ギョーザは手抜きじゃない!味の素冷凍食品に聞くギョーザ愛とモチモチ新商品
“手抜き論争”から、10か月。
2020年にTwitter上で大きな話題となった冷凍餃子の「#手間抜き論争」、みなさんは覚えていますか?
◆冷凍餃子を焼いた妻に、夫が「手抜き」発言
子育て中の女性が冷凍餃子を焼いて食卓に出したところ、喜ぶ子どもに対して夫が「手抜きだよ。これは“れいとう”っていうの」と皮肉をこめてコメントしたという内容でした。
これに対して、味の素冷凍食品の公式Twitter(@ff_ajinomoto)が反応。
「冷凍餃子を使うことは「手抜き」ではなく『手“間”抜き』ですよ! 工場という“大きな台所”で、野菜を切って、お肉をこねて、皮に餡を包んで……という大変な『手間』をお母さんに代わってに丁寧に準備させていただいています(続)」
とツイートし、大きな反響が起きました(同社のツイート3件に対して合計44万いいね、13万リツイート以上を獲得)。
そこで今回は、味の素冷凍食品株式会社の冷凍餃子のギョーザ開発担当者と公式Twitterの“中の人”(運用担当者)を訪ね、当時の真相や、冷凍餃子への熱い想い、こだわりについて話を聞いてみました。
◆あの“手間抜きツイート”は、社内には事後報告だった!
――8月6日の投稿はどのような経緯で生まれたのでしょうか?
Twitter担当:女性の投稿がTwitterで拡散していたことを知り、すぐにその方の最近の投稿を確認させていただきました。推測もありますが、直近のご体調が芳しくない状況でいらっしゃることがわかり、少しでもお気持ちに寄り添いたいと思いました。
目線としては、半分企業で、もう半分は主婦の感覚。正直、私自身も冷凍食品を食卓に出すことに後ろめたさを感じることもありますから、投稿者の方の心情を想像したときに、共感とともに複雑な気持ちもありました。でも、とにかく味方になりたかったんです。
――最近では炎上することを恐れ、TwitterなどのSNS活用には慎重な企業も多いですが、よく社内許可が出ましたね。
Twitter担当:社内報告は事後報告だったんです。
Twitter担当者の上司:公式Twitterの世界観、トンマナ(スタイルなどに一貫性をもたせるルール)は予めPRチームでイメージを確認していました。日々のツイートはタイミングが重要だと考えており、中の人とも共有しています。私は部下のビジネス感覚やコミュニケーションレベル、そして人間性を信頼していましたから、自信をもって背中を押しました。そのくらい大事な事態ですし、弊社としても真摯に発信すべきだと考えていました。
――最近の冷凍餃子はとてもおいしくなっていますし、こんなにもメジャーになっているのだから、“手抜き”と感じる人っているんでしょうか?
ギョーザ開発担当・谷隆治さん(以下、谷):そもそも弊社のギョーザの年間購入率は、お子さんなど買えない(買わない)方を除いた全体を100%としたとき、約20%ほどなんです(※)。ですから、まだまだという状況でして、弊社としてはもっともっと多くの方々に“おいしいギョーザ”をお届けしたいという気持ちで、心をこめてつくっています。
※インテージSCI 2020年4月~2021年3月、「ギョーザ」購入率、味の素冷凍食品(株)調べ
◆種類も大充実。水餃子、レンチン餃子…
――でも、やっぱり手作りのほうが美味しいのでしょうか?
谷:それぞれ良さがあって、どちらも美味しいと思っています。違うのは作るのが工場か台所かという「スケール」の差だけであって、ご家庭で手作りされる餃子と同じように、我々も一つ一つ丁寧に丹精込めて作っています。
私たちは“永久改良”を合言葉に「ギョーザ」の品質改良は1972年の発売以降、これまでに50回以上行っていますし、「水餃子」の開発では皮の“もちもち食感”にこだわりました。ニンニク不使用の「しょうがギョーザ」やレンジで簡単に調理できる「レンジで焼ギョーザ」など、シーンやお好みに合わせた提案にも取り組んでいます。もちろん「餃子は手作り」という方も多いと思いますし、私たちとしては各ご家庭の餃子の味を大切にしていただきながら、そのときの状況や気分などによって、うまく使い分けをして、私たちのギョーザも楽しんでいただければと思っています。
◆食べ方はやっぱり“円盤”スタイルがおすすめ
――冷凍餃子と言ってもこんなにも種類が増えているんですね。最近、プレミアムな「黒豚肉餃子」を期間限定で発売していますが、反響はどうですか?
谷:いつもの定番ギョーザとは違った、プレミアムな餃子として好評をいただいています。外食が制限されるコロナ禍においても、ご自宅で外食品質なギョーザを食べて贅沢気分を味わっていただきたくて開発した商品です。重量は通常の「ギョーザ」の1.3倍で、厚皮のもちもち感や肉汁があふれる感動を存分に味わっていいただけるかと思います。
――ギョーザを楽しんでもらうための今後の取り組みについて教えてください。
谷:いろいろな楽しみ方ができるように、公式サイトでは、ギョーザを使ったさまざまなアレンジレシピをご紹介していますのでご参考にしていただきたいです。ギョーザを丸く並べた、羽根つき円盤餃子のスタイルで焼いていただいたり、「ギョーザ」と「しょうがギョーザ」を同時に焼いて2種類を同時に楽しんでいただくなどもオススメです。
コロナ禍の状況が落ち着いたら工場見学を再開して、こだわり詰まった「ギョーザ」がどのように作られているかについてもご紹介したいと考えています。
◆コロナ禍の主婦(主夫)にメッセージ
――Twitterの“中の人”に改めて聞きたいのですが、まだまだ続くコロナ禍ですが、家庭の主婦(主夫)に元気を与える、寄り添うためにつぶやくとしたらどんなことでしょうか。
Twitter担当者:つぶやきそのものは、Twitterを楽しみにいただけるとありがたいのですが(笑)、思いとしては……。コロナで代わり映えしない日々の生活に“心をときめかせるもの”を見つけることが今の生活においては大切だと感じています。
というのも私事ですが、今、家でコスモスを育てていまして、たまたま腰を下ろして水やりをしている日があって、そしたらカマキリの赤ちゃんを見つけたんです。まさか自宅でそんな出逢いがあると思っておらず、都会ではなかなか見ることができない経験に、子どもと初夏の想い出ができました。そこから、ありきたりの平凡な日々の中にも、一つ視線を変えれば、おもしろいことがまだまだ見つけられるのだと感じました。
今後Twitterでも、このような小さな幸せをともにシェアできるような投稿ができたらいいなと考えています。
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お話を聞いた私は、ただただ心が温まりました。大企業が工場で作る商品にもちゃんと愛があることを再実感。そしてやっぱり大切なのは、冷凍餃子を食卓に出す人の気持ちを決して軽視することなく、むやみに否定することなく、食べる人みんながどんなときも明るい気持ちで「おいしい」を分かち合えることではないでしょうか。
これは、冷凍餃子に限ったことではないのかもしれません。
<取材・文・撮影/スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12