息子2人を東大合格させた働くママ「料理を一緒にすることで、賢い子に育つ」

「賢く強い子どもに育てたい」。たいていの親が思うことですが、そのために何をしていますか? 学習塾? スポーツ?

「一緒にごはんを作ること」を強く勧めるのは、東京都議会議員で2人の息子がいる入江のぶこさん(1962年生まれ)です。

 入江さんは32歳のとき、夫を突然事故で亡くします。夫はフジテレビのカイロ支局長で、取材中に小型飛行機が墜落したのです。専業主婦だった入江さんは、6歳の長男と11か月の次男を抱えて帰国。働きながら2人を育て、再婚と離婚、息子の激しい反抗期など、波乱もあったそうです。

 そして息子2人は東大に現役合格し、長男は研究者、次男はテレビマンとして活躍しています。

 そんな入江さんが実践してきた、食育=料理で生きる力をつけるメソッドとは?

※以下は、近著『「賢い子」は料理で育てる』(あさ出版、山下春幸シェフとの共著)からの再構成です。

◆子どもに料理をさせることで、生き抜く力が育つ

 みなさんは、お子さんと一緒に料理をしていますか?

 実は、料理というのは子どもの能力をぐんぐん伸ばし、自分の力で生き抜く人間に育てるために、大変有効な手段なのです。

 私が目指していたのは、勉強ができる・できないにかかわらず、「生き抜く力をもった“自立した人間”に育てること」でした。私のように、突然社会に放り出されることだって人生には起こり得ます。ましてや、幼くして父親を亡くした子どもたちですから、是が非でも自分の力で生き抜く人間に育ってもらわなければならなかったのです。

 フルタイムで働くワーキングマザーとして日々忙しく過ごしていた私ですが、限られた時間のなかで「この子が興味を抱いているものは何だろう? 一番上手にできることは何だろう?」とじっと観察し、子どもが得意なものに触れる機会を増やそうと心がけました。

 子どもが「やりたい」と思ったことであれば、伸びないはずはありません。そして、子どもが何かに挑戦したときは、どんな小さいことでも思いきり褒めてあげてください。できた・できなかったは問いません。「親に褒められた」という事実は、子どもにとって成功体験となります。そういった達成感・成功体験の積み重ねによって、子どもは強くなっていきます。

◆月1回でも、「親子で料理する日」を決めよう

 そういった考えのもと子育てしてきた私にとって、料理は“経験する機会”を与えるうえでとても有効な手段でした。なにより、料理は“食べる”ことができます。それこそが、勉強やスポーツなどからは得られない、大きな達成感を子どもにもたらすのです。

 週に1回、月に1回でもいいので、「今日は親子で料理する日!」と設定し、ぜひ一緒に料理に取り組んでいただきたいのです。

 料理することで得られるメリットとしては、次の3つが考えられます。

1.親子のコミュニケーションを深める

2.五感をフルに使うことで成長への刺激となる

3.自分で自分の食をマネジメントできる“自立した人間”に育つ

◆最初の一歩、我が家はホットケーキから

 では、具体的に我が家ではどんなことをしていたのか──あくまで一例としてですが、ご紹介していきます。

 私が子どもたちとよく作っていたのは、ホットケーキです。「自分が大好きなこのホットケーキは、自分の手で作ることができるんだ」と最初に理解させ、それを一緒にやってみる。「食べるものって、作ることができるんだ。食べるものを作るって、楽しいことなんだ」と体験させるのは、料理をすることへの動機づけになると思います。

「子どもたちに卵を割らせてみたい! どんな反応をするんだろう?」という好奇心もありました。卵の殻が割れるときのドキドキや、中身が出てくるワクワクを子どもたちにも味わってほしい。

 フライパンの上で、ホットケーキがムクムクと膨らんでくる様子を見守る時間もまた、子どもたちにとっては楽しいものです。

「どうやったら、もっとふわふわなホットケーキになるだろう?」と何度も試行錯誤しながら作った思い出は、大人に成長したいまでも、子どもたちのなかに強く残っているようです。

「凝った料理を作らないといけない」なんてことはないのです。食材に触れたり、手先を使ったり、美味しくなるアイデアを一緒に考えたり。そうやって作ったものを、最後に一緒に食べる。“子どもが成長する料理”の本質はそれらのなかにあります。

◆もっとも大事なのは、子どもの自由にさせること

 子育て全般において、私は子どもの自主性を最優先していました。「~しなさい」、「~してはダメ」と言ったこともありません。

 料理についても同様に、禁止するようなことはありませんでした。もちろん、包丁や火を使う料理は必ず隣に立ち、つきっきりでフォローし、無理はさせません。「危ないな」と思ったことをやりたがったら、「じゃあ、これはお母さんが切るから、そっちの混ぜるのをお願いね」といったように、作業を分担し、安全な部分を任せるように促しました。

それ以外は、子どもがやりたいようにやらせます。ハート型のホットケーキになってもかまわないし、ドーナツ型にする子どもだっているかもしれません。「『こんがり焼く』の“こんがり”がどの程度か」なんて、私だってわかりません。多少は焦げてしまっても良いじゃないですか。その子がそのとき思った“こんがり”を尊重してください。ホットケーキにチョコのペンで自由にお絵かきをしたり、自分が好きなフルーツをトッピングしたりするのも楽しい経験となるでしょう。

 そうしてできあがったものを「できたね~! すごいね~!」と一緒に喜び、「じゃあ食べてみよう!」と一緒に食べましょう。

 子どもが料理に興味を持つようだったら、日常のなかでも「このレタス洗える?」、「これをどんなふうにでも良いから、みんなのお皿に盛りつけられるかな?」といった具合にやらせてみるのも良いでしょう。

◆料理中に子どもに問いかけて、五感を意識させる

 長男も次男も、幼い頃からどちらかと言うとインドア派。身体を動かして遊ぶよりも、家で本を読んだり、映画を観たり、テレビゲームをすることのほうが断然多い子どもたちでした。彼らに、五感をフルに使えるような機会を与えたい──そういった意味でも料理は有効でした。

 泥のついたジャガイモを触ると手は汚れるし、生の魚はヌルヌルしていて匂いも強く、肉を触ると手が脂でベトベトする──自然に近い食材を手で触ることで得られる情報はたくさんあります。勉強では習わない“手で触り、肌で感じること”は、とても大切だと思います。

料理中に子どもに問いかけることで、五感を意識させることも大切です。

「このお肉、赤いところと白いところがあるね。ほら、触ってみて。ちょっと違う感じがしない?」

「こっちはお酢。こっちはお酒。どっちも透明だけど、匂いを嗅いでみて」

「パチパチとジュウジュウ。同じお肉を焼くにも、音が違うね。どうしてだろう?」

 問いかけられたことで、子どもは感覚を研ぎ澄ましていくでしょう。五感のすべてを使う料理は、子どもにとって、机で勉強しているだけでは得られない学びの宝庫なのです。

 そうしてあらゆる感覚のレベルが上がった子どもは、柔軟性や発想力も伸びていき、 “生き抜く力”や“自分で判断できる力”を持った、“人間力”の高い大人へと成長するのです。

◆料理でデジタル脳とアナログ脳の切り替えを

 我が家では、料理は子どもたちを“デジタル脳”から“アナログ脳”に切り替えてくれる、大事な役目も担っていました。

 時間があればゲームばかりやっている彼らに、「今日はあなたたちが大好きなカレーにする予定なんだけど、ちょっとこのニンジンの皮を剥いておいてくれない? 時間ある?」と、わざと声をかけるのです。

 ずっと使い続けている“デジタル脳”をクールダウンするためにも、五感をフルに使う料理は有効ではないだろうか──その持論が正しかったと思いますし、 子どもたちにとってはリフレッシュになったようです。

<文/入江のぶこ>

東京都生まれ。フジテレビ報道記者だった夫が、1994年、カイロで事故死。息子2人を連れて帰国後、フジテレビに就職。バラエティ制作、フジテレビキッズなどを担当、部長職も務める。2017年7月に退職後、東京都議会議員選挙に出馬、港区でトップ当選を果たす。著書に『自ら学ぶ子どもに育てる 息子2人が東大に現役合格した、ワーキングマザーの子育て術』、『「賢い子」は料理で育てる』がある

2021/6/22 8:46

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