【Review】あなたの‘‘あの夏’’を思い出させてくれる『あの夏のルカ』(2021)

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ディズニープラスにて2021年6月18日より配信が始まったディズニー&ピクサー最新作『あの夏のルカ』は、作品全体に何とも言えない‘‘懐かしさ’’が漂う作品である。あなたの楽しかった‘‘あの夏’’へ時間を巻き戻してくれることだろう。

子供の頃、夏が来るのを楽しみにしていたという人も多いことだろう。
海ではしゃいだ‘‘あの時間’’、友達と虫あみ片手に森を散策した‘‘あの時’’、毎朝早起きした夏休みのラジオ体操などなど、たくさんの楽しい時間が待っていた。
しかし、大人になると、そんな楽しかった夏もただただジメジメとした暑苦しい日々へと変わってしまう。
直射日光を浴びながらの通勤や電気代が嵩む日々、そんな季節にウンザリしてしまうものだ。
しかし、ディズニー&ピクサー最新作『あの夏のルカ』という作品は、‘‘楽しかった夏’’を忘れてしまった大人たちの失われた時を、ほんの少しだけ巻き戻してくれるような作品である。

イタリアの美しい海辺の街を舞台に繰り広げられる、ひと夏の物語

『あの夏のルカ』(2021)

ディズニープラスで独占配信中 (C)2021 Disney/Pixar.All Rights Reserved.

本作の主人公は、<海の世界>で暮らすシー・モンスターの少年ルカ。
ルカは、未知の領域である<人間の世界>へ強い関心を抱いていた。
そんな中、ルカの前にアルベルトという同じくシー・モンスターの少年が現れる。
アルベルトは、こともあろうに<海の世界>と<人間の世界>を行き来しており、ルカを地上へと誘う。
シー・モンスターは地上へ上がると、普通の人間と変わらぬ姿へと変貌を遂げ、人間の生活に溶け込むことができるのだった。
かくしてルカとアルベルトは、シー・モンスターたちを恐れる人間たちが大勢暮らす海辺の街へと足を踏み入れ、そこで大冒険を繰り広げることになるのだった・・・。

すべてが楽しかった‘‘あの夏’’に引き戻してくれる作品

『あの夏のルカ』(2021)

ディズニープラスで独占配信中 (C)2021 Disney/Pixar.All Rights Reserved.

『あの夏のルカ』は、人間の世界への強い憧れを抱くシー・モンスターの少年ルカが、ひょんなことから地上へと上がることになり、大冒険を繰り広げる様が描かれる。
ルカとアルベルト、2人の少年の「ひと夏の逃避行」のようなものが色濃く映し出されているわけだが、その描写がなんとも小気味いい。
まるで観ているこちらまでもが、イタリアの美しい海辺の街で、ひと夏を過ごしているかのような錯覚に陥るのだ。
それも少年・少女に戻ったような感覚を持ち合わせて・・・。
すべてが楽しかった‘‘あの頃の夏’’に時間が巻き戻ったかのような懐かしい気持ちで鑑賞することができる作品なのである。

『あの夏のルカ』(2021)

ディズニープラスで独占配信中 (C)2021 Disney/Pixar.All Rights Reserved.

いま、世界は閉塞感を抱きながらの生活を強いられている。
なかなか自由に世界へ飛び出すことが困難な日々が続いているが、本作はそんな世相も大いに反映されている作品だ。
主人公のルカは海の中の生活しか知らず、地上の人間の世界への強い憧れを抱き、ついには水の中から飛び出す。
しかし、地上へ上がることは禁止された行為であることから、両親によって、ルカは海底の奥深く、真っ暗な世界へと送られることになってしまう。
そんなことから、ルカは自由を求めるようになり、家出をするのだ。
世界中の閉塞感を感じる人々の代弁者としてルカは存在しており、多くの人々が感情移入しやすいキャラクターとなっているのだ。
こういうところには、改めてディズニー&ピクサーのキャラクター描写の巧さを感じさせられた次第である。

人間以外の視点から展開されるディズニー&ピクサーらしさ

ディズニー&ピクサー作品というのは、元来、人間以外の視点から物語を展開させることに非常に長けている印象だ。
古くは『トイ・ストーリー』シリーズにしたって、「おもちゃ」という視点から人間を見つめ、『モンスターズ・インク』(2001)や『ファインディング・ニモ』(2003)にしたって、それぞれモンスターや魚といった角度から見た「人間の姿」を描いている。

『あの夏のルカ』(2021)

ディズニープラスで独占配信中 (C)2021 Disney/Pixar.All Rights Reserved.

今回の『あの夏のルカ』もまた、その流れを汲む作品として秀逸な出来栄えを誇っている。
海の世界で暮らすシー・モンスターが、漁師町と言っても過言ではないポルトロッソという街で、人間と偽り生活をする。
この街の人々はシー・モンスターを恐れているため、一歩間違えれば大変な事態へと発展してしまうわけだが、そんな中でもルカはなんとか人間であろうと努力していく。
同じものしか受け入れられない‘‘人間の残酷さ’’のようなものを色濃く描写しているようにも感じると同時に、われわれ人間が‘‘当たり前’’だと思っていることが、実はどれだけ恵まれたものであるかということにもしっかりとフォーカスされている。
そういった点で『あの夏のルカ』は、ディズニー&ピクサーの王道を行く作品と言っても良いのかもしれない。
とても強いメッセージが込められた一本なのである。

『あの夏のルカ』(2021)

ディズニープラスで独占配信中 (C)2021 Disney/Pixar.All Rights Reserved.

最後にルカたちが憧れるベスパについて。
ベスパは、1953年公開の『ローマの休日』でも印象深い乗り物である。
同作ではオードリー・ヘプバーン演じるアン王女がローマ市内を散策するシーンに登場しており、数多くの作品で‘‘自由の象徴’’として描写されている。

『あの夏のルカ』は、まさにこれからの季節にピッタリの家族揃って楽しめる最高の作品と言えるだろう。
日本版エンドソングの「少年時代」がこれでもかとばかりに心に染み渡り、余韻に浸らせてくれるため、ぜひともエンドロールの最後までご鑑賞いただきたい。
‘‘思い出の夏’’を回想しながら、思わず聴き入ってしまうこと請け合いである。

『あの夏のルカ』は、ディズニープラスで独占配信中!

(文・構成:zash)

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