『青葉家のテーブル』松本壮史監督は語る「ラップの作詞で培った脚本の基礎が映画作りに活きています」

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映画『青葉家のテーブル』は、月間200万人が訪れる人気のECサイト「北欧、暮らしの道具店」のオリジナルWEBドラマが映画化。ドラマの演出も手掛けた松本壮史監督に映画化の裏側について、お話しを伺いました。

『青葉家のテーブル』概要

松本壮史監督作、映画『青葉家のテーブル』は、人気ECサイト「北欧、暮らしの道具店」のオリジナルWEBドラマ『青葉家のテーブル』から生まれた作品。ドラマは青葉春子と息子のリク、春子の飲み友達のめいこと彼氏のソラオの4人からなる物語でしたが、映画は、4人暮らしの青葉家に、春子の友人・知世の娘、優子が居候することから始まる新たなストーリーが展開されます。
ドラマから継続しているキャストは、春子役・西田尚美、リク役・寄川歌太、めいこ役・久保陽香、ソラオ役・忍成修吾。そして映画版は新たに、知世役に市川美和子、優子役に栗林藍希が参加。将来に不安を抱える優子や、春子と知世の気まずい過去のエピソードが青葉家をベースに展開していきます。
監督は、WEBドラマと同じく松本壮史が担当。エグセクティブプロデューサーは「北欧、暮らしの道具店」の店長・佐藤友子。

『青葉家のテーブル』

(C)2021 Kurashicom inc.

『青葉家のテーブル』あらすじ

シングルマザーの春子(西田尚美)と息子リク(寄川歌太)は、春子の飲み友達のめいこ(久保陽香)と小説家のソラオ(忍成修吾)と4人暮らし。ある夏の日、春子の友人・知世(市川実和子)の娘・優子(栗林藍希)が、美術予備校の夏期講習に通うために居候することになります。

将来に不安を感じ、やりたいことを探そうとさまざまなことにチャレンジする優子。美術だけでなく、彼女はリクのバンドにも参加し、彼の友人たちとも交流し、予備校では、国立の美大を受験するという与田(上原実矩)と出会い、友情を深めていきます。

しかし、優子と母・知世の関係は少々ギクシャクしていました。実は春子にも、20年前に知世との間に苦い過去があったのです……。

『青葉家のテーブル』

(C)2021 Kurashicom inc.

松本壮史監督インタビュー

―映画『青葉家のテーブル』は、「北欧、暮らしの道具店」のWEBドラマから始まった作品ですが、ドラマも含めて映画化がスタートするまでの経緯を教えてください。

松本壮史監督(以下、松本監督)
「僕が制作プロダクションと一緒に手がけたCMを『北欧、暮らしの道具店』の方が気に入ってくださって、WEBドラマの依頼をいただきました。2017年当時、企業がクライアントになりWEBドラマを制作するというのはまだ珍しく、これは面白いものになりそうだと思ったのです」

―企業がクライアントだと、先方のリクエストも多そうな気がします。監督が描きたい世界とのすり合わせはいかがでしたか?難しい作業でしたでしょうか。

松本監督
「それが“こうしてほしい”などのリクエストはまったくありませんでした。おそらく「北欧、暮らしの道具店」の方たちの描いてほしい世界と僕がこの作品で描きたい世界が一致していたのだと思います。物語は自由に作らせていただきました。相性が良かったというか、幸運な出会いでしたね」

『青葉家のテーブル』撮影風景(一番左側が松本監督)

(C)2021 Kurashicom inc.

「北欧、暮らしの道具店」のスタッフが美術部として大活躍

―美術小道具はすべて「北欧、暮らしの道具店」の商品を使用したのでしょうか。

松本監督
「全部ではありませんが、そこはこの映画のプロデューサーでもある佐藤友子さんのこだわりがあり、青葉家もセットではなく、佐藤さんのご自宅でロケしました。これはすごく珍しいことで、「北欧、暮らしの道具店」のスタッフのみなさんが、この映画の美術部みたいな感じでした。僕がモニターを見ながら、マグカップの位置はもう少し上がいいですねというと、佐藤さんが飛んできて、マグカップの位置を数センチずらしてくださったり(笑)。みんなで映画を手作りしている感じがあり、楽しかったです」

―WEBドラマから映画化するにあたって、物語作りなど苦労することはありませんでしたか?

松本監督
「そこは難しかったです。WEBドラマで4人の関係性を描いていたので、もう同じことはできないから、映画では何を描いたらいいのかとスタッフと共に何度も話し合いました。テーマを煮詰めていったとき、進路に迷う若者と、かつて進路に悩んでいた大人たちの人生の分岐点というテーマに行きつき、この二つを組み合わせて、“これからどうやって生きていくか”という物語が見えてきたので、脚本作りへと進んでいきました」

映画で重要なアイテムのひとつとなる料理「はあちゃんライス」

(C)2021 Kurashicom inc.

美味しそうなごはんとマッチしたレトロかわいいインテリア

(C)2021 Kurashicom inc.

バッチリはまった市川実和子さんのキャスティング!

―春子役の西田尚美さんなどドラマから引き続き出演している俳優さんたちに加え、新たに優子や知世が重要なキャラクターとして登場しますが、キャスティングはどのように決まったのですか?

松本監督
「優子は、進路に悩みつつ、いろんなことに手を出しているような子、ちょっと軽さがある感じがいいなと思いました。優子役は栗林藍希さんに決まるまで、何度かオーディションを行った結果、優子のフットワークの軽さやシリアスになりすぎない明るさのある栗林さんに決めました」

―栗林藍希さんも良かったのですが、個人的には、美術予備校で出会う友人の与田あかね役の上原実矩さんがとても良かったです。

松本監督
「与田ちゃん、良かったですよね。与田役はすぐ上原さんに決まりました。彼女は映画『来る』にセリフひとつくらいの役で出演していたんですが、印象に残っていたのでオーディションに来てもらったんです。会場に入ってきたときから佇まいから良かったし、みんなが優子役を演じたがる中、彼女だけが与田役を演じたい!と言ってきてくれて。とてもユニークで、与田役にピッタリだと思いました」

ヒロイン優子役の栗林藍希さん(右)親友・与田役の上原実矩さん(中央)

(C)2021 Kurashicom inc.

―市川実和子さんのキャスティングもハマっていました。

松本監督
「脚本を書きながら、春子と知世はケンカをするなと思ったんです。ならば、西田尚美さんと対峙したときに負けない存在感のある方は誰だろうと探していたとき、スタッフのひとりが市川実和子さんの名前をあげたんです。ピッタリだけど、出演していただけるか自信がなく、ダメ元でオファーをしたら引き受けてくださって。うれしかったですね。

知世は、春子よりとがった感性の持ち主で、春子のナチュラルなファッションとは違う派手でセンスのいい服を着る人という印象。衣装合わせで知世の服を着た市川さんを見たとき、バッチリだと。イメージ通りのキャスティングができました」

ヒロインの春子はドラマから続投の西田尚美さん。学生時代の親友の知世役は市川実和子さん

(C)2021 Kurashicom inc.

乃木坂46のショートフィルムが運命を決めた!

―松本監督は、大学を卒業されてから映像関連のお仕事をずっとされていますが、映画監督志望だったのですか?

松本監督
「最初は、VP企業映像や医療、教育の関連の教材を扱う会社にいたのですが、いまはCMディレクターの会社に在籍しています。最初は弟子入りみたいな感じで、3年くらいアシスタントの仕事をしていました。でもあまり仕事がなく、撮影現場でみんなとお弁当を食べるだけの日もあり(笑)最初の数年は苦しい日々でした。2015年頃から、フリーで先輩の作品のメイキングを撮影するようになり、ミュージックビデオ、ショートフィルムなどの仕事を経て、長編映画を撮影するようになりました」

―演出のお仕事への手応えというか、この世界でやっていこうと思われたきっかけは?

松本監督
「乃木坂46のメンバーが出演するショートフィルムを担当したとき、初めて演出と脚本を任されたんです。そのとき自分の書いたセリフを俳優さんが演じることに喜びと手応えを感じて、撮影をしながら”これを一生の仕事にしたい“と思いました」

―一生かけて貫きたい仕事に出会えるなんて、素敵ですね! 脚本は独学ですか?

「乃木坂46のショートフィルムに関しては、独学で書きあげました。僕は趣味で友人とラップをやっているのですが、ラップの歌詞は文字数が多いので、僕は起承転結のある歌詞を書いていたんです。そのラップの歌詞作りで、ストーリーを構成する基礎ができたのかもしれません。“こういう言い回しにしたら、おもしろいかも”という感覚は、ラップで培ったものですね。でもそのあと、プロット作りは一から勉強しました」

『青葉家のテーブル』

(C)2021 Kurashicom inc.

「自分はダメだな~」と思う人にこそ観てほしい

―では最後に、この映画を楽しみにしている映画ファンにメッセージをお願いします。

松本監督
「どの世代の方でも楽しめる映画になったと思います。自分はダメだな~と思う人にこそ観てほしい。そういう方が、この映画を観て、勇気づけられたらうれしいです。何事も、良い結論や結果を出す必要はないと思うんです。曖昧でもいい。そういう曖昧さも肯定できるような気持ちになっていただけたらと思います」

松本壮史(まつもと・そうし)プロフィール

1988年 埼玉県出身。2015年よりTHE DIRECTORS FARMに所属。
「北欧、暮らしの道具店」のWEBドラマ「青葉家のテーブル」はじめ、数々のWEBドラマ、CM、青春高校3年C組 アイドル部、サニーデイ・サービス、柄本佑介、欅坂46、乃木坂46などのミュージックビデオの演出を担当。長編映画デビュー作『サマーフィルムにのって』が2021年8月6日公開。

松本壮史監督

(C)2021 Kurashicom inc.

映画『青葉家のテーブル』
(2021年6月18日より、全国ロードショー)
監督:松本壮史
脚本:松本壮史、遠藤泰己
出演:西田尚美、市川実和子、栗林藍希、寄川歌太、忍成修吾、久保陽香、上原実矩、細田佳央太、鎌田らい樹、大友一生、芦川誠、中野周平(蛙亭)、片桐仁

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  • 6/18 12:00
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