荻窪の大人気中華『呉さんの台湾料理』の絶品「塩レモン焼きそば」が美味しすぎる!

 皆さんはお店選ぶ時、何を基準にしていますか? おそらく、メディアの紹介記事や、口コミ、知人の紹介といったところが多いんじゃないでしょうか。

 今回ご紹介する東京・荻窪の『呉(ウー)さんの台湾料理』の場合、筆者はなんの情報も持っていなかったのですが、通りすがりに、店名を見て思わず惹かれました。「誰が何を作っているか」が一目瞭然。料理をする人の自信を感じると共に、店先の黒板メニューを見ると明確な料金。しかもほとんどの料理が300~700円前後。非常に安心感を持ったのです。

 そして、その直感に間違いはありませんでした。ふらりと入って注文した「塩レモン焼きそば」。このメニュー名も味のイメージがしやすかったのですが、想像をはるかに超える美味しさだったのです。その後、何度かこのお店に訪れるようになると、呉さんの料理は何を食べても絶品だとわかりました。そこで今回、このお店の魅力をご紹介したいと思います。

「塩レモンやきそば」が絶品である理由

 最初に食べた「塩レモンやきそば」は、いわゆる細麺タイプで、野菜と豚肉が入っており、シンプルですが、名前のとおり、レモン果汁をたっぷり搾りかけた夏にぴったりの一品。でも、この焼きそばの美味しさはレモン風味だけではありません。もっと奥深い味わいなのです。それは、旨みを決めるスープと塩豚です。

 呉さんに聞けば、毎日、豚の背ガラや親鳥1匹と野菜を使ってスープを炊いていて、これが焼きそばの味のベース。さらに塩豚は、塩、山椒、紹興酒などで豚肉を漬け込んでつくる呉さんの自家製。

 この2つが焼きそばの味の柱となり、最後にレモンの香りと酸味でキリリと味を締めて爽やかさをプラスしているのです。この焼きそばを食べただけで魅了され、呉さんの料理は何を食べても美味しいはず、と確信したわけです。

みんなが注文する呉さんの十八番料理は?

 呉さんにオススメ料理を聞くとすぐさま2つを挙げてくれました。これはお客さんの多くが注文するという呉さんの十八番料理。

 1つは「塩豚ときくらげの香酢和え」。自家製の塩豚とプリプリのきくらげを炒め、味付けは、ニンニク、生姜、ネギ、黒酢、醤油、紅油、山椒など。香りといい味のバランスといい、お酒はもちろん、白いご飯にも合うひと品です。

 もう1つは、「インゲンの四川風セット」。揚げたインゲンとひき肉を炒めて味付けし、セットの葱油餅に包んで食べる料理です。

 ニンニク、生姜、豆板醤といった調味料に、決め手となるのは、やっぱりスープ。この味は、家庭ではできそうで絶対にできないのです。パリッと焼き上げた葱油餅との相性が抜群。そして大事なポイントは、呉さんの料理は、油のしつこさを全く感じないこと。油で重くなりがちな中国料理ですが、非常に軽快なんです。常連さんは週に2回も3回も訪れるといいます。

 そこで、料理のこだわりについて、呉さんにお話を聞いてみることにしました。

頑張りすぎた料理人

 呉さんこと、呉瑞榮(ウー・ジェイロン)さんは1958年、台湾の新竹市で生まれの客家(ハッカ)。最近では、客家料理は日本でも広く知られるようになりましたが、両親を早くに亡くした呉さんにとって、料理は家庭の味というより、若くして働かざるを得ず、長年修業によって身につけた仕事の味だそう。17歳で軍隊の料理人になったり、その後は台湾の観光地のレストランで働いたり。その時々の相手に求められる料理を試行錯誤してきたといいます。

 そして、ひょんなことから来日後、1992年に高円寺に知人とお店を出店。1998年には独立して、新宿御苑の『呉さんの厨房』という店を出し、味の良さが評判となって、トントン拍子に人気店に。その秘訣もまた、「日本人の舌に合うように」と考え抜いた台湾料理がみんなに愛されたからなのです。

 そうして、寝る間も惜しんで12年間働き続けてきたある日のこと。朝起きたら体の右半分が麻痺してまったく動けなくなったそうです。

「最初は脳の問題かと思いましたが、病院に行っても原因がわからず、最終的についた診断は、筋・筋膜性疼痛症候群でした。いわゆる使いすぎによって筋肉の癒着が起きていたようです」(呉さん)

 やむなく2010年に店を締め、3年間にわたるリハビリ生活を送った後、ようやく体を動かすことができるようになったのは2013年。そして現在の店をオープンしました。

「この荻窪という場所は住宅街の入り口なので、以前のオフィス街の時よりはのんびりやれています。もう63歳ですし、ゆっくりのんびり料理を作っていきたい」と呉さん。

 働きすぎ、頑張りすぎ。その結果、体を壊した呉さんですが、その頑張りは、やはり料理に感じます。丁寧さと工夫があり、お客さん想いの安心できる味。ぜひ、そんな呉さんの優しい台湾料理を一度食べてみてください。

(撮影・文◎ナナノナノ)

●SHOP INFO

店名:呉さんの台湾料理

住:東京都杉並区天沼3-1-5

TEL:03-3393-1068

営:木~日ランチ11:30~14:30(14:00LO)、ディナー17:30~22:30(22:00LO)

休:月・火・水

※緊急事態宣言中は営業時間に変更がある可能性があります。店舗にお問い合わせください

2021/6/18 10:51

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます