「だんご3兄弟」茂森あゆみ(49)が息子の中学受験を振り返る「隣で見守ることを大事に」
『おかあさんといっしょ』(現・Eテレ)に「あゆみおねえさん」として1993~1999年で出演していた茂森あゆみさん(49歳)。速水けんたろうさんと歌った「だんご3兄弟」の大ヒットでも知られています。
前編では、うたのおねえさん時代の体験談や出産後の壮絶な子育ての苦労について語ってくれました。
17歳と12歳の男の子、10歳の女の子のママでもある茂森さんは、今年の春まで2人の息子さんの中学受験に取り組んでいたそう。その経験を通して感じられたことや、受験生への寄り添い方を聞きました。
◆長男の中学受験を決めた理由
――前回は1人目のお子さんのワンオペ育児が大変だったというお話を聞きましたが、その後、2人のお子さんを出産されたんですね。
茂森:長男を産んだあと2人目がなかなか授からなかったんです。長男が3歳の七夕で「弟がほしい」と短冊に書いたら、翌年の七夕に本当に次男が産まれました。
――すごいお話ですね!
茂森:長男は「僕がお願いしたから産まれたんだ」と言って、弟をとても可愛がってくれます。そんな長男は今17歳なんですが、小学校3年生のときに「パパと同じ学校に行きたい」と言い出して、夫の大学の附属の中学を受験することになりました。
――子育てには受験というハードルもあるんですね。それまでは中学受験は考えてはいなかったのですか?
茂森:全然考えていなくて、長男も次男も公立小学校に通わせていました。どうすればいいのか先輩ママたちに相談すると、東京では中学受験をする子は「新4年生」と呼ばれる小学校3年の2月から受験のための塾に通い始めるのが一般的だそうです。家の近くに大手の塾があったので、そこへ小3の2月から入れることにしました。
塾は1学年が成績順で16クラスくらいに分かれていて、そこで初めて子どもが点数のみで評価される経験をすることになりました。
◆受験生に寄り添う上で大切なこと
――厳しい世界なんですね。
茂森:塾の先生に最初に「勉強は僕たちに任せてください、その代わりお母様はお子さんを塾にお見送りするときは怒らないでください」と言われました。テンションが下がったまま授業を受けると集中できず、もったいないからということでした。だから子どもが「今日は塾に行きたくない」と言っても怒らないように気を使っていました。
――他にも気をつけていたことはありますか?
茂森:親も子も、「結局、大切なのは体力だな」と思いました。長男も次男も幼稚園から小5まで水泳に通っていたので体力づくりにはよかったのかなと思います。
――勉強面で、小さい頃からやっていてよかったことはありますか?
茂森:本の読み聞かせは大事だと思いました。長男は4歳まで一人っ子だったので私が1日に何冊も読み聞かせをしていたんです。たまたまかもしれないですが、長男は本が大好きになって国語も得意でした。次男のときは2歳下に娘もいたので私が手一杯で、寝かしつけは読み聞かせではなく子守歌を歌っていました。そのせいなのかわかりませんが、次男は本があまり好きではなくて、国語ですごく苦労しました。
◆リビング学習は「1人じゃない」と思ってもらうため
――読み聞かせは重要なんですね、小学生の子を机に向かわせるのは大変でしたか?
茂森:すごく大変でした。先輩ママに「中学受験は母親と子どもの関係性が大事だよ」「子どもは塾で怒られてるから親は怒っちゃダメ。逃げ場が無くなるよ」と言われていました。
それを見習って小5くらいまでは「勉強しなさい」とあまり言わないようにしていたんですけど、6年生になるとこちらも気持ちに余裕がなくなってきて、禁句をいっぱい言ってしまってました(笑)。「もう落ちるよ!」とか……。
――心配になるとつい言ってしまいますよね。勉強の環境づくりはどうしていたんですか?
茂森:うちはリビング学習でした。私がキッチンでお料理をしながら見てあげられるし、人の目があったほうがサボらないでやれるのかもしれません。子どもが「1人じゃない」と思える環境を作りたかったので、息子が苦手な算数の問題を私も一緒に考えたりしていました。でも、すごく難しくて全然解けないんです(笑)。
社会などの暗記科目は本人が覚えるしかないのですが、問題を出す手伝いをしたりしていました。次男のときは漢字が苦手だったので、覚えていない漢字だけを集めた問題プリントを主人と一緒にパソコンで作ってやらせたり。
中学受験する子どもは本当に大変なので、何か特別な言葉がけをしなくても、ただ隣で一緒に見てあげることでサポートしてあげたいと思っていました。
◆時事問題の対策は「NHKのニュース番組」
――親のサポートが重要なんですね。受験対策で大変だったことはありましたか?
茂森:社会の時事問題です。次男のときはコロナ禍、アメリカの大統領選、日本の首相の交代、レジ袋の有料化など社会の変化が多くて、何が出るか分からない状態でした。対策として、夜7時の『NHKニュース7』が1番コンパクトに内容がまとまっているので録画して、食事のときに見せたりしていました。
――テレビを見せる時間は決めていましたか?
茂森:うちの子はお笑い番組が好きなので、息抜きとして食事の時間に好きなバラエティ番組を見せていました。次男はクイズ番組もよく見てましたね。『東大王』(TBS)は受験にも役に立つかもと思います。
◆心が折れそうになったときに言われた、次男の言葉
――子どもは友達と遊んだり、ゲームをしたがる思うのですが、どう対応していたのですか?
茂森:うちの場合は小6のときも週に1回は近所のお友達と公園で2時間思い切り遊んでから塾へ行く日を作っていました。その辺りのメリハリは、次男のときのほうがうまく対応できるようになった気がします。
ゲームは、長男がやりたがらなかったんです。その影響で次男もやっていなかったんですけど、昨年『あつまれ どうぶつの森』をやりたいと言い出したのでNintendo Switchを買いました。受験まで1か月を切っていたのですが、息抜きとして1日に1時間だけと決めてやらせていました。
――中学受験を通して、心が折れそうになったことはありませんでしたか?
茂森:昨年の11月に次男の模試の結果があまりよくなくて「もう受験はやめようか」と言ったことがありました。次男は長男が大好きなので同じ学校を目指していたのですが、長男のときと比べ物にならないくらい倍率が上がっていたんです。「お兄ちゃんのときより100倍、200倍勉強しないと無理だよ」と言ったのですが、次男は「ここまで頑張ったんだからやりたい」と言いました。
「じゃあママはどうしたらいいかな?」と聞くと、次男に「ママは何もしなくていいからそばにいてほしい」と言われて。だから、勉強しているときはどんなに眠くても横に座っていました。6年生は塾が終わるのが夜9時なので、食事とお風呂を済ませるともう10時。そこからまた勉強するので、寝るのが夜中の12時になってしまうんです。
朝型の子だったのですが、朝は8時に家を出れば学校に間に合うので、ぎりぎりまで寝かせていました。かわいそうなくらい勉強させていたなと思います。
◆“胸が弾むこと”を自分なりに見つけてみては
――見守る側の親も辛いですね。その努力の甲斐があって2人とも志望校に合格されたんですね。
茂森:娘は幼稚園のときから高校まで一貫の学校に通っているので、これで一旦我が家の受験が終わりました。7年間ずっと受験生を主役とした家族の過ごし方をしていたので、「普通の生活に戻れた!」という感じです。受験生は夏期講習やゴールデンウィーク特訓があるので好きに出かけられなかったし、夜は遅くなるので、塾には車で送迎していてお酒も飲めませんでした。子どもたちに「ママもうお酒飲めるね」と言われました(笑)。
――世の中のママ達も育児や仕事など大変なことが多いと思います。茂森さんのように明るい笑顔でいるためには何が大切だと思いますか?
茂森:大したことは言えないんですけど、自分の中でママや主婦という役割以外の楽しみを作ることかなと思います。
私は最近Instagramを始めたんです。YouTubeの動画『大集合「ぼよよん行進曲」 お兄さんお姉さん中西圭三さんといっしょ』に参加したときに、医療従事者の方から「あゆみおねえさんを久しぶりに見て、元気そうで自分も元気が出ました。明日からも頑張ります」とコメントをいただいたんです。
それを読んで、こんな私でも忘れられていなかったし、何かできることがあるかも、と思って始めてみました。3人の子どものお弁当を作っているので、それをアップしてみると温かいコメントをいただけて、日々の楽しみになりました。
茂森:息子には「もっとおしゃれな撮り方あるじゃん?いろんな芸能人を見て勉強して」と言われるんですけど(笑)。愚痴っぽくならないように「楽しいことを投稿する」と決めてやっています。何か胸が弾むことを自分なりに見つけられると「明日も頑張ろう」と思えるかもしれませんね。
<取材・文/都田ミツコ 撮影/山川修一>