中年男にしんどい人間関係は不要。「よっ」と声をかける顔見知りがいればいい
コロナ禍で揺れる日本。今、そのど真ん中で生きる中年男性たちは何を考えているのだろうか? そこでSPA!は、40~55歳の男性会社員3300人(既婚2500人、独身800人)の大調査を敢行。今回は人生篇。その実情や悩みをひも解いた。
◆今、切実に欲しいものは何ですか?
厚生労働省によれば、男性の平均寿命は81.4歳。40代を過ぎ、人生の折り返し地点を迎えた彼らが「今、切実に求めるもの」はなにか? この問いに「肉体、精神ともに健康な体」との回答が36.7%でトップに躍り出た。
「40歳を過ぎてムリが利かなくなった」(45歳・食品)、「気力と体力が衰えたのか、楽しいことがない」(47歳・通信)という悩みも散見されたが、社会学者の田中俊之氏はこう頷く。
「私もそうですが、若い頃と同じ負荷には肉体的のみならず、精神的にも耐えられず、ストレスをいつまでも消化できずに抱え込んでしまう。それが中年です。そんな自分と向き合いながら長生きを望むならば、いかにしんどい仕事や人間関係を減らすかという取捨選択が大切。中年こそ、人生の断活が必要です」
◆願望と現実が乖離
また、ライフシフトジャパンの豊田義博氏はこんな矛盾を指摘。
「中年世代は総じて『安定』や『平穏』を望んでいながら、仕事や老後、お金などあらゆる面での不満が先行していました。これは願望と現実が乖離している状態。
心の不満を解消し、安定や平穏を得るためには、働き方を変える、社内で改善策を提案するなど、とにかく『自分から動く』ことが求められます」
◆Q 今の生きがいは何ですか?(複数回答可)
・家族やパートナー 40.2%
・特にない 22.0%
・仕事 20.0%
・アクティブな趣味 16.1%
・インドアの趣味 10.2%
(アンケート結果より一部抜粋)
◆5人に1人「生きがいがない」事態は深刻
安定とは、自ら動き現状を打破することで、初めて得られるものなのだ。さらに、「Q 今の生きがいは何ですか?」の結果について、「コロナ禍で家庭重視の傾向が進んでいますが、生きがいに多様化が見られるのは良い傾向」と豊田氏が述べた一方、「生きがいがない」と答えた中年が5人に1人はいる事態は深刻。コピーライターの田中泰延氏は語る。
「中年期以降は、出世など仕事での自己実現を生きがいとするのが難しくなる。社会へのポジティブな思考が極端に低く、自分にしか関心がなくなると人生の目標としてはあまりに脆弱。人生の後半戦は、積極的に家庭や社会に関わり、そのフィードバックとして生きがいや幸福感を得ていくことを意識するべきです」
◆「よっ友」で世界は広がる
そんな中年と社会の関わりにおいて、田中俊之氏が推奨するのが「よっ友」の存在である。
「犬の散歩仲間やジム仲間など、『よっ』と挨拶を交わす程度の顔見知りです。中年になると新たに親友はつくれないし、別につくる必要もない。しかし、この『よっ友』のようなライトな人間関係があるだけで世界は広がります。特に低年収の人ほど独居老人化しやすいので、セーフティネットとしても機能します」
自分から動き、社会との接点を保つことが人生後半戦のカギだ。
◆「ニッポンの中年」人生の3か条
・安定を望むなら、まず自分から動くべし
・自分にしか関心がないと、人生後半戦はキツくなる
・ゆるい繫がりである「よっ友」をつくるべし
【社会学者 田中俊之氏】
大正大学心理社会学部人間科学科准教授。著書に『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)、『中年男ルネッサンス』(イースト新書)など
【ライフシフトジャパン取締役 豊田義博氏】
リクルートワークス研究所主幹研究員。高知大学客員教授。著書に『実践!50歳からのライフシフト術―葛藤・挫折・不安を乗り越えた22人』(NHK出版)など
【コピーライター 田中泰延氏】
’69年生まれ。電通でコピーライターとして活動後、独立。出版社・ひろのぶとを設立。著書に『読みたいことを、書けばいい。』(ダイヤモンド社)
<取材・文/週刊SPA!編集部 モデル協力/古賀プロダクション アンケート/クロス・マーケティングQIQUMOにて調査>
―[中年のお悩み白書]―