【黄昏西部劇映画】「アメリカ映画の象徴」の黄金時代の終焉を常連スターたちが演じた男泣き名作3選

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黄金時代のハリウッド映画を代表するジャンルの一つだった西部劇。しかし、時代の流れなどさまざまな理由から、1960年代に入ると徐々に衰退。そんな時期に、まさに西部劇の“挽歌”とも言える作品が増え、数多くの傑作が生まれた。今回は、そうした作品の中から、私の独断と偏見で選んだ「黄昏西部劇」の傑作3本をご紹介!

◎昼下りの決斗(1962年 メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)

『昼下りの決斗』DVD(販売元‏:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

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かつて名保安官として勇名をはせたジャッド(ジョエル・マクリー)だったが、今では年老いて世間からも忘れ去られていた。カリフォルニアのある町で山の金鉱から金を持ち帰る仕事にありついた彼は、帰り道に強盗から金を守るため、保安官時代の相棒ギル(ランドルフ・スコット)とその仲間の若者ヘック(ロン・スター)を応援に加えた。しかし、実はギルたちの真の目的は金を横取りすることだった。
山へ向かう途中、三人はとある牧場に泊めてもらうが、牧場の娘エルサ(マリエット・ハートレイ)は信心深い父ジョシュア(R・G・アームストロング)の束縛に耐えられず、金鉱で働く恋人のビリー(ジェームズ・ドルーリー)と結婚するため、三人についていく。
一行は目的の町に着き、金鉱から金を預かる。一方、エルサはビリーと結婚式を挙げるが、ビリーたちハモンド5兄弟は粗暴で、エルサは結局逃げ出して再び三人に同行することになる。帰り道で一行はエルサを取り返そうと襲ってきたハモンド兄弟を返り討ちにして、うち2人を射殺する。しかし、ギルたちの本心が露見し、ジャッドは二人を縛り上げて町の保安官に引き渡す決心をする。
一行はエルサを送り届けるため牧場に着くが、ハモンド兄弟が先回りしてジョシュアを殺し、待ち伏せていた。縄を解かれたギルとヘックもジャッドとともに銃で応戦するが、やがてジャッドとギルは「昔通りのやり方」で兄弟と正面から決闘を行ない、兄弟を討ち取る。しかしジャッドも致命傷を負い、金を横取りせず届けるというギルの約束に、安心して息絶えた。

かつて、数多くの娯楽西部劇に主演したスコットとマクリ―がW主演を果たした作品で、
まだ監督デビューして間もないサム・ペキンパーにとって初期の代表作となった。後の作品で頻繁に見られるようになるバイオレンス描写やスローモーションなどの特徴的な手法はほとんど見られないが、彼の作品の常連となるウォーレン・オーツやL・Q・ジョーンズら個性派俳優たちがハモンド兄弟役で顔を揃えていたり、数多くのペキンパー作品を手がけることになる名カメラマンのルシアン・バラードとの初顔合わせになるなど、「ペキンパー組」の基礎が作られた作品でもある。また、時代に取り残されたジャッドはその後のペキンパー作品のほとんどの主人公に通じるキャラ設定だし、クライマックスの決闘までの展開は、彼の代表作となる『ワイルドバンチ』(次項で紹介)の原型と言っていいだろう。

◎ワイルドバンチ(1969年 ワーナー・ブラザース=セヴン・アーツ)

『ディレクターズカット ワイルドバンチ 特別版』DVD(販売元‏:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

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1913年。パイク(ウィリアム・ホールデン)率いる強盗団「ワイルドバンチ」は、テキサスの国境の町サン・ラファエルで鉄道事務所の銀貨を強奪しようとするが、釈放を条件に鉄道会社に雇われた賞金稼ぎたちの待ち伏せを受け失敗、生き残った5人はメキシコへ向かって逃走する。
彼らを執念深く追い続ける賞金稼ぎたちのリーダーは、パイクのかつての仲間ソーントン(ロバート・ライアン)だった。5人は待機していた仲間のサイクス(エドモンド・オブライエン)と合流すると、国境を越えてメキシコへ侵入、メンバーの一人エンジェル(ジェイミー・サンチェス)の故郷の村にたどり着く。しかし、そこは政府軍のマパッチ将軍(エミリオ・フェルナンデス)に脅かされていて、エンジェルの恋人テレサ(ソニア・アメリオ)はマパッチの女になっていた。その様子を見たエンジェルは逆上して彼女を射殺してしまい、マパッチの暗殺を企てたと誤解され捕らえられるが、すぐに釈放される。しかもそのことがきっかけで、パイクたちは1万ドルの報酬でアメリカの軍用列車から武器を奪うようマパッチから依頼される。
強奪に成功したパイクたちだったが、マパッチが裏切ることを見越して武器を小分けにして引き渡すことですることで身の安全を図る。だが、マパッチを憎むエンジェルが武器の一部を反政府ゲリラに横流ししていたことが政府軍に知られ、エンジェルは捕えられリンチを受ける。
パイクたちはエンジェルを助けるために4人で政府軍の砦に乗り込む。エンジェルを彼らの目の前で惨殺殺害したマパッチをパイクが射殺したことから銃撃戦へと発展し、パイクたちは全員射殺されるが、200人の政府軍も全滅した。死屍累々の砦にやってきたソーントンはパイクの死に呆然とするしかなかった。他の賞金稼ぎたちと別れたソーントンは、一人別行動を取っていたサイクスに誘われ、メキシコ革命派のグループに加わる。

『昼下りの決斗』での手腕を買われ『ダンディー少佐』(1965)に抜擢されたものの、プロデューサーと衝突して映画界から干されていたペキンパーが、4年ぶりに監督を手がけた劇場用映画であり、彼の代表作となった名作。クライマックスの壮絶な銃撃戦に代表されるバイオレンス描写の連続で「古き良き時代の西部劇を終わらせた」と言われた一方で、居場所がない主人公たちの姿を情感を込めて描き、暴力的なだけではない彼の作風の神髄を披露した。出演者も、黄金期の西部劇に数多く出演したホールデンやライアンの脇を、アーネスト・ボーグナインらペキンパー好みの男臭いクセ者俳優たちが固めている。ちなみに、全編西部劇のパロディ満載だった劇場版『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』(2004)に登場する悪漢の手下の兄弟「オーツとベン」は、本作でウォーレン・オーツとベン・ジョンソンが演じたゴーチ兄弟が元ネタ。

◎ラスト・シューティスト(1976年 パラマウント)

『ラスト・シューティスト』DVD(販売元‏:マクザム)

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1901年、ネバダ州カーソンシティ。かつて西部中にその名を轟かせた凄腕のガンマン、ブックス(ジョン・ウェイン)が、旧知の医師ホステトラー(ジェームズ・ステュアート)のもとを訪れる。体の不調を訴えるブックスを診察したホステトラーは、末期ガンで余命いくばくもないと宣告する。ブックスは未亡人のボンド(ローレン・バコール)が経営する下宿屋を訪れ、ここを終の住処と決めて部屋を借りる。
彼はボンドに嘘の名前と経歴を言ったが、夫人の一人息子ギロム(ロン・ハワード)は偶然彼の正体を知ってしまう。その話を聞いて驚いたボンドの連絡を受け、トラブルを恐れた保安官のティビドー(ハリー・モーガン)が町からの退去を説得しに来るが、ブックスは事情を話して納得させる。ボンドもその話で、仕方なく彼を下宿に泊めることにする。しかし、彼が町に来たという噂は瞬く間に広がり、静かに最期を迎えたいと願っていた彼の周辺はにわかに騒がしくなる。
そんな中、ブックスはボンドを遠乗りに誘い、つかの間の語らいで二人は心を通わせる。だがその帰り道、彼を弟の仇としてつけ狙っていたスイーニー(リチャード・ブーン)と遭遇、そしてついにその夜、ブックスを殺して名を上げようとした男たちが下宿に侵入してきたが、ブックスは返り討ちにするものの、この騒ぎで他の下宿の間借り人はすべて出て行ってしまう。
これ以上ボンドたちに迷惑をかけられないと思ったブックスは、このまま痛みに苦しみながら死ぬよりは…と、スイーニーら三人の悪党に決闘を申し込み、葬儀屋のベッカム(ジョン・キャラダイン)に死後の段取りを頼む。ブックスに敬愛の念を抱いていたギロムに銃の撃ち方を教え、愛馬を譲る。
そして決闘の当日。彼の覚悟を知りながらも要望通り静かに見送るボンドに別れを告げたブックスは、決闘の場に指定した酒場にやって来る。傷つきながらも三人を討ち果たしたブックスだったが、背後からバーテンダーが放ったショットガンの弾を受けてしまう。駆けつけたギロムはバーテンダーを射殺するが、殺し合いの空しさを知った彼は銃を投げ捨てる。これで五人が決闘で死んだことになる。それを見たブックスは、若いギロムを巻き込まずに済むことに安堵し、静かに息絶える。

実際にガンで亡くなったウェインの遺作であり、タイトルバックには彼の代表作である『赤い河』(1948)や『リオ・ブラボー』(1959)の名場面が「ブックスの過去」として登場、さらには彼と馴染みの深い俳優たちが多数出演するなど、まるで遺作になることを想定して製作されたような作品だ。ただし、ちゃんと原作はあるし、当初は他の有名俳優たちにオファーされたり、ウェイン自身もこの映画の撮影の時は一旦ガンが感知していたり…と、実際は「偶然の一致」だったようだ。それでも、これが彼の遺作だと分かっていながら見ると、そのタイトルバックから涙が出て来る。
監督は『ダーティハリー』(1971)などアクション映画の名手ドン・シーゲルだが、本作では抑えた演出で「7日後に死ぬガンマン」の最後の日々を描いている。
ブックスが残された日々に行なうのはまさに「終活」。ストーリーの骨の部分を見ると、実は黒澤明の名作『生きる』(1952)とかなり似ていることに気づく。無気力に毎日を過ごしていた市役所の課長(志村喬)がガンで余命宣告を受けたことで自分の人生を見つめ直し、周辺住民から要望されていた小さな公園を完成させる。雪の夜に主人公が公園のブランコに乗りながら「ゴンドラの唄」を歌いながら最期を迎えるシーンが有名だが、まさに本作は無気力な役人を老ガンマンに替えた「西部劇版『生きる』」であり、主人公は「ゴンドラの唄」を歌う代わりに決闘で悪党たちを倒すのだ。
ギロム役のハワードは、もちろん現在、『ダ・ヴィンチ・コード』(2006)や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー 』(2018)などの監督として活躍している、あのハワードだ。両親が俳優だったため自身も子役としてデビュー、青年期には『アメリカン・グラフィティ』(1973)などに出演。本作の後に監督としてデビューし、すぐにほぼ監督専業にシフトした。ハワード自身は、本作でウェインと共演したことを“財産”だと思っているという。

ここでご紹介した三作に共通しているのは、舞台が「銃が物を言っていた西部開拓時代が終わろうとしていた頃」であり、主人公が「時代の変化に乗り損ねた古いタイプの男たち」であり、「彼らが自分たちの望む方法で人生の幕引きを図る」という展開だ。これはまさに、「製作当時の西部劇映画とその出演者たち」を反映しているようにも見える。
そういう状況になっていった背景や、同じような「黄昏西部劇」の他の傑作について語るとキリがないので今回はやめておくが、それらを象徴・代表するのがこの三本であると言っていい。しかし、そのような背景を抜きにしても、主人公たちの不器用だが熱い生きざまに胸を打たれる作品ばかりだ。

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