田代まさしにクスリを売った男の“劇的人生”に驚き! 元ポン中が読む「薬物売人」の告白
覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
クスリの入手先は絶対に答えない
こう見えて瑠美はビジネス書とかが好きなんですが、田代まさしさんにクスリ(違法薬物)を売っていた元・売人氏の告白は、気になったので読んでみました。
田代まさしにクスリを売った男――映画になりそうですが、著者の倉垣弘志さんは自らムショでネタにしていたとか。「みんなビックリしていた」そうです。アタリマエですやん。倉垣さんは大阪のご出身やそうで、本は悲しい話もありつつ「ちょっとおもろい」感じでした。獄中(なか)で出会う人たちのことも、女子刑務所とはまた違う「ムショあるある」満載です。
「私が所持していた大麻、コカイン、覚醒剤はクラという男から譲り受けたものです」
倉垣さんは、こう書かれた「田代さんの直筆らしきもの」を取り調べで見せられたそうです。
いや……これはアカンでしょう。普通はパクられ(逮捕され)ても入手先は言いません。もっとも「売人さんに迷惑をかけられないから」やなくて、「シャバに出たらまた買いたいから」ですけどね。でも、この紙を見せられた倉垣さんは、かえってあきらめがついたそうです。もう潮時やなと思えたんですね。
そこで倉垣さんは自分のしたことは認めて、それ以外はしゃべりませんでした。刑事さんから「ぜんぶお前が背負っていくんだな!」と言われ、「全部自分がやったことです」と答えたそうです。これはもう自分で気がつくしかないのですが、瑠美にも「あきらめきれる瞬間」はありました。最後の逮捕の時、「もうこれで(クスリは)やめよ」とキッパリと思えたんです。
倉垣さんは、ご両親や弟さんとはずっと仲がいいそうですが、ずっと不良やったそうです。中学時代から何度も深夜徘徊やシンナーで補導されて、高校ではバイクで暴走したのは親への反発ではなく、友達と遊びたかっただけ。その気持ち、とてもよくわかります。やらかすたびにお父さんやお母さんが謝りに行って、逮捕された時も寄り添ってくれたから、仮出所もできたんですね。
前にも書かせていただいてますが、親との関係がいい人は、更生も早い気がします。瑠美もそうでした。まあ、田代まさしさんも妹さんとかとの関係はいいようですが……。何にでも例外はあるちゅうことですか。
しかも、倉垣さんは、ちゃんと高校を卒業されているのも珍しいかもです。10代でダンスやラップに目覚めて、梅田のカラオケバーで働いたりしてから東京に出て、バーを経営しながらクスリを売っています。バーで酒を売るまではよかったのに……。
何事もご縁
ちなみに本には書かれていないのですが、田代さんに会うために、幕張の握手会に行かれたのが「始まり」やそうです。握手するフリをしてマリファナと連絡先メモを手渡したら、その後に田代さんの当時のカノジョから連絡が来たそうです。
こうゆうアプローチもあるんですねえ。でも覚醒剤「3グラム20万円」は、ちょっと高いかなと思いました。覚醒剤の「末端価格」とはあってないようなもので、相手を見て値段を吊り上げることも珍しくないです。
ちなみに警察庁のデータでは2020年に1グラム約6万円で、年々値下がり傾向にあるそうです。全国平均と東京、大阪は違うのかもしれませんね。大阪はシャブ屋が多いし、オトク感を出さないと売れないです。
でも、現在はしっかり更生されて、シャブどころか本屋さんもない南の島に、新しいご家族と住んでいらっしゃるのに驚きました。更生には物理的にシャブがないところに行くのがいちばんええのはわかりますが、なかなか南の島には住めないですよねえ。
「俺は南の島の楽園で、家族と暮らしている。あの日、マリファナを握って田代さんと握手をしていなければ、今の俺はなかっただろう。ひょっとすると、まだどこかで売人をしていたかもしれないし、どこかで野垂れ死んでいたかもしれない」と書かれていて、何事もご縁やなーと思いました。